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イヴでもありますもの。
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食事を終え、私は寝間着にガウンを羽織りました。イヴに部屋に来るようにと申しつけましたから。彼ももうじき。
ノックの音がしました。イヴですわね。私は返事をして、彼を招き入れることにしました。
「失礼しまーす……」
イヴは遠慮がちにやってきました。不自然なまでに部屋の中を見ようとしませんわ。紳士ですわね。そこまで緊張されるのも、ですが。
「あちらに座って、話しましょうか」
立ち話もなんだと、私は部屋の中の小さなテーブルと二つの椅子を指した。窓の近くの良席ですのよ。今宵は雨空ですが、晴れていましたら。カーテンを開ければ満天の夜空を拝めますわ。
「……はい」
どこまでも緊張してますのね。二人きりでも敬語のままですわ。それでも、椅子は引いてくれましたので、私は腰をかけましょうか。あら、イヴったら座りませんわね。
「あなたも。おかけになって?」
「……立ったままで結構でございます」
どうしたものかしら。イヴは極度の緊張状態ですわね。言ってみることにしましょうか。
「いつものようで良いのですよ? 慣れ親しんだ話し方で」
「……それは」
イヴは椅子の背もたれに手をついた。座る気になってくれたのかしら。私は前のめりになった。
「……あなたもでしょう。その……ユイだと話し方違うでしょうに」
「……ぐっ」
藪蛇でしょうか。ええ、私もそうですわね。セレステ相手と考えれば、この喋り方でなくてもとは考えます。ただ、私という者がです。
「……私は、器用ではありませんから。ずっと結衣の話し方をしておりますと……その。アリアンヌとして喋れなくなってしまうのでは、と」
イヴのように切り替え上手でしたら、苦労しませんのよ。私は恥を忍んで伝えましたところ。
「ぷっ……」
噴き出すように笑ったのは、イヴではありませんか。まだ小刻みに笑っていますわ。なんてこと。
「……でしょうね」
「でしょうね、ですって?」
「わー、ごめんなさーい」
私の目が据わっていようと、イヴは臆することはない。感情の込められていない謝罪を今、受け取りましたわ。なんたること。まあ、彼の緊張は緩んだようですから、そこはまあ。
「……それにです、イヴ」
私は微笑んだ。こちらはセレステではなく、イヴに向けて。
「あなたと……イヴと。過ごした年月もありますから。前世がセレステであろうと、イヴとしてのあなたも大事。だからです、アリアンヌとして接したいのです」
セレステもそうですが、イヴもちゃんと大事な人なのです。そちらは揺るぎませんわ。
「……はい」
――どうして。あなたはそんなにも泣きそうな顔をしているの。不思議そうにしている私を見て、彼は笑顔になった。
「まあ、イヴだけど……セレステだから。だから、アリアンヌ様。今まで話せなかったこと。あなたが一人で抱えてきたこと。僕に話してほしいんだ」
「ええ……そうですわね」
イヴは席に着いた。ええ、お話しましょう。長話になってしまいますかしら。
セレステに既に語ったことは、ざっとあらまし程度。
私が日本というところで、生まれ育ったことも。こことは全然違う場所。いわば異世界ということ。セレステは知っているだろうから、本当に少しだけ。
「え、それだけ? もっと知りたいのに」
イヴはもっと聞きたそうにしてましたが、改めて話すとなりますとね? 時間の問題もありますから。
「……前世は誰かの手によって、私の生は終えました。犯人は未だにわからないまま」
「そんな……」
イヴは自身の手を強く握っていました。爪の跡がついてしまいそうな、血まで出てしまいそうな程。
「……家族や大事な人達にはもう、会えなくなってしまいました。ですが、私はアリアンヌ様として生きていますから」
私はその手に手を重ねた。イヴは目を大きく明けた。驚きのあまり、彼の手が緩んだ。ならば良いでしょう。それ以上痛めなくて良かったですわ。
「転生するまで、セレステやブリジットと長く過ごしましたね。かけがえのない時間でしたわ」
「長く……いや、ブリジット?」
色々と引っかかっているようですわね。ええ、彼女の話は段階を踏んで。まずは、事前に話さないといけないこと、多々あるでしょうから。
「……そう、前世から現世にかけての話なのです」
私は迷っていました。
――こちらがゲームの中。それも親族が制作したもの。それを明かすかどうか。これは、セレステ達にも秘めてきたことです。
そうですわね……今はまだ秘めておきましょう。
ノックの音がしました。イヴですわね。私は返事をして、彼を招き入れることにしました。
「失礼しまーす……」
イヴは遠慮がちにやってきました。不自然なまでに部屋の中を見ようとしませんわ。紳士ですわね。そこまで緊張されるのも、ですが。
「あちらに座って、話しましょうか」
立ち話もなんだと、私は部屋の中の小さなテーブルと二つの椅子を指した。窓の近くの良席ですのよ。今宵は雨空ですが、晴れていましたら。カーテンを開ければ満天の夜空を拝めますわ。
「……はい」
どこまでも緊張してますのね。二人きりでも敬語のままですわ。それでも、椅子は引いてくれましたので、私は腰をかけましょうか。あら、イヴったら座りませんわね。
「あなたも。おかけになって?」
「……立ったままで結構でございます」
どうしたものかしら。イヴは極度の緊張状態ですわね。言ってみることにしましょうか。
「いつものようで良いのですよ? 慣れ親しんだ話し方で」
「……それは」
イヴは椅子の背もたれに手をついた。座る気になってくれたのかしら。私は前のめりになった。
「……あなたもでしょう。その……ユイだと話し方違うでしょうに」
「……ぐっ」
藪蛇でしょうか。ええ、私もそうですわね。セレステ相手と考えれば、この喋り方でなくてもとは考えます。ただ、私という者がです。
「……私は、器用ではありませんから。ずっと結衣の話し方をしておりますと……その。アリアンヌとして喋れなくなってしまうのでは、と」
イヴのように切り替え上手でしたら、苦労しませんのよ。私は恥を忍んで伝えましたところ。
「ぷっ……」
噴き出すように笑ったのは、イヴではありませんか。まだ小刻みに笑っていますわ。なんてこと。
「……でしょうね」
「でしょうね、ですって?」
「わー、ごめんなさーい」
私の目が据わっていようと、イヴは臆することはない。感情の込められていない謝罪を今、受け取りましたわ。なんたること。まあ、彼の緊張は緩んだようですから、そこはまあ。
「……それにです、イヴ」
私は微笑んだ。こちらはセレステではなく、イヴに向けて。
「あなたと……イヴと。過ごした年月もありますから。前世がセレステであろうと、イヴとしてのあなたも大事。だからです、アリアンヌとして接したいのです」
セレステもそうですが、イヴもちゃんと大事な人なのです。そちらは揺るぎませんわ。
「……はい」
――どうして。あなたはそんなにも泣きそうな顔をしているの。不思議そうにしている私を見て、彼は笑顔になった。
「まあ、イヴだけど……セレステだから。だから、アリアンヌ様。今まで話せなかったこと。あなたが一人で抱えてきたこと。僕に話してほしいんだ」
「ええ……そうですわね」
イヴは席に着いた。ええ、お話しましょう。長話になってしまいますかしら。
セレステに既に語ったことは、ざっとあらまし程度。
私が日本というところで、生まれ育ったことも。こことは全然違う場所。いわば異世界ということ。セレステは知っているだろうから、本当に少しだけ。
「え、それだけ? もっと知りたいのに」
イヴはもっと聞きたそうにしてましたが、改めて話すとなりますとね? 時間の問題もありますから。
「……前世は誰かの手によって、私の生は終えました。犯人は未だにわからないまま」
「そんな……」
イヴは自身の手を強く握っていました。爪の跡がついてしまいそうな、血まで出てしまいそうな程。
「……家族や大事な人達にはもう、会えなくなってしまいました。ですが、私はアリアンヌ様として生きていますから」
私はその手に手を重ねた。イヴは目を大きく明けた。驚きのあまり、彼の手が緩んだ。ならば良いでしょう。それ以上痛めなくて良かったですわ。
「転生するまで、セレステやブリジットと長く過ごしましたね。かけがえのない時間でしたわ」
「長く……いや、ブリジット?」
色々と引っかかっているようですわね。ええ、彼女の話は段階を踏んで。まずは、事前に話さないといけないこと、多々あるでしょうから。
「……そう、前世から現世にかけての話なのです」
私は迷っていました。
――こちらがゲームの中。それも親族が制作したもの。それを明かすかどうか。これは、セレステ達にも秘めてきたことです。
そうですわね……今はまだ秘めておきましょう。
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