脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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ヒューゴ殿とのお出かけ。

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 そうして迎えましたは、約束の日ですわ。天気は相変わらずの曇り空、抜かりなく傘は持ち出しておりますわ。
 服装もイヴのアドバイスによるものでしてよ。好みのデザインや色、アクセサリーなど。なるほど。服装も大事ですわね。

 馬車にて私を送り出してくれました。つかず離れずの距離で、私達を見守ってくださるそうです。苦労をかけますわね。
 待ち合わせ場所は、都の噴水広場。その近くで人形劇も開催されているのだとか。その場で解散ということもなく。彼は色々プランを練っていらっしゃるとか。内容は当日の楽しみとなりますのね。

「おはようございます、アリアンヌ様」
「まあ、ヒューゴ殿……」

 かなり早く出掛けたつもりでしたが、既にヒューゴ殿が待ってらしたわ。
 来て……くださいましたのね。約束を反故される方ではないとは思ってましたが。

「ごきげんよう。本日は楽しみにしておりましたわ」

 そう、来てくださったのですから。今は楽しく過ごそうではありませんの。

 私は本日の彼の姿が新鮮に映りました。いつもの制服姿ではない、スーツ姿の彼。さすがですわ、様になってますこと。

「ふう……圧を感じますね。これは、ご期待に添えないとですね」
「まっ。ふふ、そうですわね。期待値は高いですわよ」
「ええ、でしょうね。精々頑張りますか」

 いつものやりとりですわね。少し安心してしまいましたわ。その……普段の姿より、大人びておりましたから。いつもの彼でいてくれて、本当に……。

「本当に来てくださって良かったです。人形劇、貴女に見て欲しかったから……」
「……ヒューゴ殿」

 ヒューゴ殿は私に手を差し出していた。ええ……そうね。エスコートですわね。ならば、私もその手を――。

「――ヒューゴ様!」

 そのお声は――ブリジット様? どうして、彼女が。それも……一人で。

「ブリジット!?」

 動揺するヒューゴ殿をよそに、ブリジット様は抱きつかれたではありませんか! そのまましがみつき、彼から離れようとはしません。

「……すみません、アリアンヌ様。ブリジット、落ち着いてください」

 私に頭を下げつつも、ヒューゴ殿は彼女の肩を掴んでから体を離していた。人前ということもあってかしら。それに落ち着かせた方が良さそうですものね。……彼の体温があった方が落ち着くでしょうが。

「……あ。ごめんね。アリアンヌ様も……その」
「いいえ、私のことはお構いなく……ブリジット様?」
「!」

 私を見ると、彼女は体をびくつかせていました。前に私が怖いという話はありましたが、二人きりの時は饒舌だったではありませんか。私の何をそんなに怖れているというのでしょう。

「……話さなくちゃ」

 ブリジット様はご自身を奮い立たせ、状況を語ることに。

「……私、また襲撃されちゃって。誘拐……されそうになってしまって」

 言葉にするのは辛かったのかもしれません。ブリジット様は涙声になっていました。

「……みんな、とも、はぐれちゃって。私、私……どうなることかって……」

 それでも懸命に話されています。お辛かったことでしょう……もう良いのでは。

「……十分です、ブリジット」

 ヒューゴ殿にも十分に伝わったことでしょう。彼女の両肩には触れたまま、優しい目のまま。

「……ヒューゴ様。私、もっとちゃんとしなくちゃって。警吏の人、呼んだりとか……」
「そんなことはありませんよ。必死だったのでしょう?」

 そう、どこまでも優しく接しているのです。すると、よりブリジット様のつぶらな瞳から涙が溢れ出てしまいます。

「……うん、必死だった。ヒューゴ様に、会えたらって……! 本当に会えるなんて……私」
「ブリジット……!」

 溢れる涙は止まらず、ブリジット様は相手を――思い人を見つめたまま。そんな彼女からの眼差しから。彼もまた、目をそらせずにいた。

「……」

 ブリジット様はまだ打ち震えたままでした。余程ショックだったのでしょう。二度目の襲撃でもありますものね。

「……ブリジット。貴女は大事な身です。ご自宅に帰った方が良いでしょう。はぐれたようではありますが」

 従者連れか、学友か。はぐれてしまったと仰ってましたわね。一人で帰すわけには参りませんわね。

「……私の従者もついてきておりますから。彼らに――」

 ヒューゴ殿も同様でしたのね。彼にも従者や護衛がついてきた。なので送らせようとしたのですが。

「ヒューゴ様……お願い、側にいてほしいの」
「……ブリジット」

 不安定なブリジット様は、なおもヒューゴ殿を見つめたままです。そのまま再び、彼に体を寄せていました。ヒューゴ殿は迷っていました。抱き縋る彼女を、今度は拒むこともなく……。

「……一旦、ブリジットを送ってきます。失礼させていただきます」
「……」

 一瞬でしょうか。ブリジット様の眉がぴくりとなったような……? 

「……お願い、ヒューゴ様。一人にしないで」

 ブリジット様はより震える声で、彼に縋っています。これだけ悲壮感を漂わせているのだから、気のせいですわね……? 


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