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でっち上げにも定評がある、そんなライバル。
しおりを挟むそうこうしている内に、私の誕生日も近づいて参りました。ええ、この際ですもの。誕生日は楽しむことにしましょう。
休憩時間の教室。ブリジット様改めブリジット嬢、彼女を中心に盛り上がっています。すっかり馴染んでいらっしゃるわ。それを蚊帳の外から眺めるのは私と。
「……はあ、楽しそうですね。騒がしいともいうか」
溜息交じりに遠巻きに見ているヒューゴ殿。どうやらお知り合いなのは変わらずのようでした。互いに挨拶はしていましたから。
ですが、ヒューゴ殿? あなた、加わらなくてよろしいの? 文句を言いつつも、再び本に目を戻しているではありませんか。よろしいんですの……?
「ねえねえ、オスカー様。昨日はお招きありがとうございました。とても美味しかったよ。ご家族の方にもお礼を言っといてね?」
夕食に招かれた……ですって? いつの間に……?
「そう? お口に合ったのなら良かった。うちの家族にも伝えておくよ。また来てほしいって言ってたし」
「ほんと? ……あ」
無意識にブリジット嬢は彼の腕に触れようとしたけれど、それは引っ込めた。そして、安心させるような笑顔。怯んでいたオスカー殿もそう――絆されたかのような表情。
「あー、見せつけられてんのかねぇ」
「夕飯にお招きとか、もうさー?」
仲睦まじい二人を盛り立てるのは級友たち。やめて、と頬を真っ赤にするのはブリジット嬢。オスカー殿も笑っておられます。
「……あ」
笑顔だったブリジット嬢の笑顔が曇る。彼女が見ているのは私。
「ご、ごめんなさい……アリアンヌ様。私達、うるかったですよね」
か弱きブリジット嬢を睨みつける公爵令嬢だと―でっちあげようとしてますのね? なんてこと、またしてもですわ。出逢って数日なのに、あまりにも通常運転ではなくて?
「いいえ? 賑やかなのは良いことではなくて? 休み時間ですもの」
私は屈しませんわよ。笑顔で答えますわ。実際そうだと思ってますし。羨ましくもありますもの。
「嘘……本当は怒ってる。みんなやオスカー様の前だからって」
なんてこと。でっち上げが過ぎましてよ。主張するしかありませんが――。
「……あのさ、ブリジット」
オスカー殿が話そうとしたところ、その後の咳払いにかき消されることになります。
「おほん。煩いと思っているのは、私の方です。アリアンヌ様と違って、私は寛容ではありませんから」
咳払いと共に、そう発言したのはヒューゴ殿でした。本を片手に鋭い目つきを向けています。
「えっと、ヒューゴ様?」
ブリジット嬢は愛らしく首をこてんと傾けます。
「ブリジット? あなたも淑女なら――静かなおしゃべりくらい出来ますよね?」
ヒューゴ殿は笑顔にはなりました。ですが、張りついた仮面のようなものであり。
「う、うん……わかってるよ、わかってる」
ブリジット様は苦々しい顔をしていました。その後、会話を再開していましたが、声のトーンは落としていました。
「ヒューゴ殿、助かりましたわ」
私は席を立って、彼の近くまで移動しました。読書中、ごめんなさいね。
「いいえ、このくらいは。ですがしっかりしてください」
「ええ、その通りですわね……」
手厳しいですが、正論ですわね。
「……。私は、あなたが貶められるのを見たくありませんから」
「……ええ。本当にありがとうございます」
手厳しい中にも、確かな温もり。私は嬉しくなった。
「……?」
ふと感じた視線。それは――オスカー殿からでした。でも、その目は合うことはなく。彼はブリジット嬢との会話に戻ったのですから。
「……オスカー殿」
あなたも。おそらくではありますが……何かを言おうとしてくれたのでしょうか。おめでたい頭と言われたらそれまでです、ええ。
私の誕生日は近づいている。そうですわね、楽しいことを考えましょう。楽しいことを――。
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