脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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アリアンヌは未来の王太子妃。

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 鳴ったのは予鈴。そうですわね、殿下には戻っていただかないと。

「さあ、殿下。お戻りになりませんと。二階上にありますでしょう?」
「えー、ぎりぎりまでいたーい」

 私が促すも、殿下は抵抗している。いえ、結構距離ありますでしょう? 本当に戻りませんと。

「ふふ、殿下? 次の休み時間でも、お昼休みでも。時間はありましてよ? ですから、今はどうか」
「えー……俺の婚約者、鬼なんですけどー。鬼婚約者!」
「……」

 イラッ。ああ、いけませんわ。私は笑顔を保ちませんと。

「ええ、鬼で結構でございます。殿下の為でしたら、時として鬼ともなれましょう」
「うわぁ、鬼宣言だ! あー、鬼婚約者はこわいこわい、かえろかえろ。鬼婚約者め……!」
「ええ、ご理解いただけまして何よりですわ」

 ……。私は最後まで笑顔を貼りつけたまま、殿下をぎりぎりのところまで送ったのでした。

「――いやぁ、ああやって間近で見るとさ。あの二人って然るべきというか」
「そうそう! ドーンと構えている正妻って感じ」

 教室から戻ると、噂話が聞こえてきました。内容からして私と殿下のことでしょうか。

「……あ、ごめん! 悪口とかじゃなくて。その、お似合いの二人っていうか!」
「そうそう! お互いがふさわしいなって」

 そう仰ってくださるのですね。そう、そのように見られていたのですね。

「そう言ってくださること、誠に喜ばしいことですわ。私にもまだまだ至らぬ点もございますから、精進しませんと」

 そう、お褒めいただいたのですからね。気が引き締まる思いです。

「アリアンヌ様、かたいってー」
「まっ、そうですの?」

 私は肩を軽く叩かれました。ああ、この感覚久しいですわ……今世でも体験できるなんて! 

 と、そうこうしている内に本鈴です。先生が来られる前に着席しませんと。

「……婚約者」

 去り際に聞こえてきたのは、オスカー殿の声でした。あまりにも冷えきった声音でしたから、私は足を止めてしまいました。

「――はーい、朝礼始めます」

 扉が開きました。入ってきたのは担任の先生です。

「って、アリアンヌさん、席に座ってねー?」
「あ……」

 そうでしたわ……私は立ったままではありませんか。そのとぼけた反応もあってか、ドっと笑い声が起きていました。

「し、失礼致しました……」

 私は顔を赤くしながらも席に着いたのでした。ああ、恥ずかしい……褒められた矢先にこれですわ。

「……」

 オスカー殿もいつものように笑っています。ええ……いつも通りですわよね? 


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