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暗闇イベント――シルヴァン編。
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「くっ……」
私をそっと離した直後、シルヴァン殿は乱暴に扉をこじ開けようとしています。彼も力があるでしょうに、扉はびくともしませんでした。
「私も!」
ドアに手をかけるシルヴァン殿に加わり、開けようとしました。ですが、それでも頑ななまでに扉は開かれず。
「致し方ありませんわ、鍵穴を壊してしまいませんこと?」
鍵穴かいっそ、扉自体か。これは単なる事故などではないのでしょう。悪意によるものだと考えた方が良さそうです。
「……すぐ物理に走るのな。けどな、多分無駄だ」
シルヴァン殿が扉に手を触れます。うっすらと光が浮かび上がっていました。
「封印の術が施されている。罠とは違う、高等なる術師によるものだろうな。そのクラスを雇えるともなると――」
シルヴァン殿は途中で口を噤まれてしまいました。彼は何かを思い当たったのでしょうか。それでも私に話す気はなさそうです。
「……いや、さすがに早計だよな。アリアンヌ様も呼び出されたんだったな。その人物が関与している可能性もありそうだけど」
「それは……肯定はしかねますわ」
私を呼び出した人物はブリジット嬢とはなっていました。ですが、私にはどうしても彼女がそのようなことをするとは思えなかったのです。日頃から私に冷たいところは否めませんが、ここまでのことはしたことはなかったと。そして――これからもすることはないのだと。
「わかった」
シルヴァン殿は信じてくださったのか、それ以上追及することはありませんでした。
「……さすがに捜しに来られるでしょう? 殿下もですし、イヴたちもそのはずです」
イヴに伝えておいて正解だったのだと、そう信じて。
「……ああ、そうだな。イヴ様たちがいる。信じて待つとするか」
「……シルヴァン殿?」
何故真っ先に殿下の名前が出ないのか。私が気になっていることに気づいているのでしょう。それでも彼はただ、悲しそうな顔をしていました。
「……悪いな、口にする度胸までなくて。ぎりぎりまで信じていたいんだ」
「……ええ、かしこまりました」
ああ、シルヴァン殿……私もわかってしまいましてよ。
またしてもですの……? 今回こそはって信じたかったのに。それでも『彼』は変わりはしなかったのでしょうか。そう、あの彼は……。
「ほら、座って待とう。これ、着といて」
「そんな……!」
シルヴァン殿は迷うこともなく、御自身のジャケットを脱ごうとしていました。私にかける為でしょう。
「寒いのはお互い様。私、他にも脱出口がないかあたってみますわ」
私は倉庫内をあたることにしました。無駄かもしれません。気を紛らわせたかっただけでしょう。
「……だな」
シルヴァン殿はジャケットを着直し、私とは別の場所にアプローチしてくれています。
日が暮れるまで、そして暮れた後も探しに探したものの……結局は見つかることはありませんでした。
「うう……」
倉庫内は冷える一方です。私も強がりを言えなくなるくらい、体の体温が寒くなっていくのを実感しています。体を温められるようなものもありませんでしたわね……。
「――アリアンヌ様」
「……シルヴァン殿?」
とっくに夜になっていて。イヴたちの迎えもまだで。そんな状況の中で、私たちは二人きり。
「……」
私は何を考えているのです。いくら男女といえど、私たちが『そのような』関係になることなど――。
「!?」
突然の浮遊感。私は今……シルヴァン殿に抱きかかえられていましてよ!?
「よっと」
彼は近くに腰を下ろします。自然と私も座らされることになります。その、彼の足の間に……それに。
「……誰かさんが上着受け取らないから」
などと言いながら、彼はまた制服のジャケットを脱いで私にかぶせたのです。そしてジャケットごと私を、私を――。
「しばらくは我慢して。こっちも体調を崩されたくないんだよ」
抱きしめているではありませんか……。
私をそっと離した直後、シルヴァン殿は乱暴に扉をこじ開けようとしています。彼も力があるでしょうに、扉はびくともしませんでした。
「私も!」
ドアに手をかけるシルヴァン殿に加わり、開けようとしました。ですが、それでも頑ななまでに扉は開かれず。
「致し方ありませんわ、鍵穴を壊してしまいませんこと?」
鍵穴かいっそ、扉自体か。これは単なる事故などではないのでしょう。悪意によるものだと考えた方が良さそうです。
「……すぐ物理に走るのな。けどな、多分無駄だ」
シルヴァン殿が扉に手を触れます。うっすらと光が浮かび上がっていました。
「封印の術が施されている。罠とは違う、高等なる術師によるものだろうな。そのクラスを雇えるともなると――」
シルヴァン殿は途中で口を噤まれてしまいました。彼は何かを思い当たったのでしょうか。それでも私に話す気はなさそうです。
「……いや、さすがに早計だよな。アリアンヌ様も呼び出されたんだったな。その人物が関与している可能性もありそうだけど」
「それは……肯定はしかねますわ」
私を呼び出した人物はブリジット嬢とはなっていました。ですが、私にはどうしても彼女がそのようなことをするとは思えなかったのです。日頃から私に冷たいところは否めませんが、ここまでのことはしたことはなかったと。そして――これからもすることはないのだと。
「わかった」
シルヴァン殿は信じてくださったのか、それ以上追及することはありませんでした。
「……さすがに捜しに来られるでしょう? 殿下もですし、イヴたちもそのはずです」
イヴに伝えておいて正解だったのだと、そう信じて。
「……ああ、そうだな。イヴ様たちがいる。信じて待つとするか」
「……シルヴァン殿?」
何故真っ先に殿下の名前が出ないのか。私が気になっていることに気づいているのでしょう。それでも彼はただ、悲しそうな顔をしていました。
「……悪いな、口にする度胸までなくて。ぎりぎりまで信じていたいんだ」
「……ええ、かしこまりました」
ああ、シルヴァン殿……私もわかってしまいましてよ。
またしてもですの……? 今回こそはって信じたかったのに。それでも『彼』は変わりはしなかったのでしょうか。そう、あの彼は……。
「ほら、座って待とう。これ、着といて」
「そんな……!」
シルヴァン殿は迷うこともなく、御自身のジャケットを脱ごうとしていました。私にかける為でしょう。
「寒いのはお互い様。私、他にも脱出口がないかあたってみますわ」
私は倉庫内をあたることにしました。無駄かもしれません。気を紛らわせたかっただけでしょう。
「……だな」
シルヴァン殿はジャケットを着直し、私とは別の場所にアプローチしてくれています。
日が暮れるまで、そして暮れた後も探しに探したものの……結局は見つかることはありませんでした。
「うう……」
倉庫内は冷える一方です。私も強がりを言えなくなるくらい、体の体温が寒くなっていくのを実感しています。体を温められるようなものもありませんでしたわね……。
「――アリアンヌ様」
「……シルヴァン殿?」
とっくに夜になっていて。イヴたちの迎えもまだで。そんな状況の中で、私たちは二人きり。
「……」
私は何を考えているのです。いくら男女といえど、私たちが『そのような』関係になることなど――。
「!?」
突然の浮遊感。私は今……シルヴァン殿に抱きかかえられていましてよ!?
「よっと」
彼は近くに腰を下ろします。自然と私も座らされることになります。その、彼の足の間に……それに。
「……誰かさんが上着受け取らないから」
などと言いながら、彼はまた制服のジャケットを脱いで私にかぶせたのです。そしてジャケットごと私を、私を――。
「しばらくは我慢して。こっちも体調を崩されたくないんだよ」
抱きしめているではありませんか……。
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