脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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裏切り者を断罪せよ③

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「――殿下」

 ようやく口を開かれたのはシルヴァン殿。ええ……致し方のないことなのでしょう。私は彼がどれだけ大切にしていたかを存じていますから。ねえ、シルヴァン殿。私はあなたを恨みなどしません。いいえ、それで良かったのだと――。

「……やっぱりか。あんたは変わってしまったのかな。俺にはもう『かつてのエミリアン様』とは思えなくなっている」
「……!?」

 シルヴァン殿は側近として、仕える立場として。そうした振る舞いを放棄していました。

「……俺も、アリアンヌ様だってそうだ。なんで裏切るって思うんだよ。どれだけあんたの為にって!」 

 シルヴァン殿がそう嘆いていても、殿下は動じてはおらず。

「それがお前の媚びの売り方か」

 あまつさえ……このようなことまで。それを耳にしたシルヴァン殿は首を振りました。

「……元々そんな気はねぇよ。俺はもう、あんたにはついていけない。決別だ」

 シルヴァン殿ははっきりと、そう言い切っていました。堂々と殿下に宣言を――。

「でもな、アリアンヌ様はそうじゃない。彼女はずっと自分は婚約者だと言い続けていた。完全に線引きをされていたよ」
「シルヴァン殿……」

 私のことにまで気を配ってくださるのですね。あなたという方は……ですが。

「シルヴァン殿。私はあなたの心配りを無碍にしてしまいますわ」
「は……?」 

 シルヴァン殿は心外といった顔をしています。ええ、そうでしょうね。私の言動からして。

「公爵家の者として誤っていたとしても。私は――シルヴァン殿を切り捨ててまで、その立場を望むことはありません」

 愚かな判断だと罵られることでしょう。ですが、私の心はどうしても……シルヴァン殿を犠牲にしてまで。それだけは出来なかったのです。

「――というわけで、ですわ。こちらは殿下の意を背くことをしております。抵抗だってさせていただきましてよ」

 私は殿下に話しかけつつも、周囲の確認も怠らない。すぐにでも武器代わりのものを取りにいける。ここで終わるわけにも参りませんわ。

「……勇ましいこと、勇ましいこと」

 呆れながら仰るシルヴァン殿とて、そうではありませんの。あなたは諦めの目をしていませんわ。

「――それが君たちの答えか」

 殿下の底冷えするような声。この底知れない彼と対峙することになる。だとしても引けなどできましょうか。

「ええ、殿下」
「……そうか」

 殿下はそれだけでした。そう、話すことなどそれだけなのでしょう。さあ、突破を――。

「……はあー」
「え……」

 緊迫した雰囲気の中、殿下の長めの溜息が聞こえてきました。

「……そうだ、これが最善なんだ」

 そう呟いた殿下は居直り、そして――宣告する。

「アリアンヌ・ボヌール並びにシルヴァン・フーフォル。君たちは――生を終えることになる」

 それはいわば――死の宣告であるのだと。





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