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こっそり争奪戦。
しおりを挟む潜水艦のところまで戻ってきました。
「皆様、お疲れ様です」
私たちを迎えてくださったのは、ヒューゴ殿でした。寄り添っているのはブリジット様です。
「ご心配おかけしました。私は復帰できます」
彼の容態は十分回復しているようでした。隣のブリジット様も頷き、太鼓判を押しています。
「おお、おかえりヒューゴ!」
オスカー殿は勢いに乗って抱きしめようとしましたが、相手は病み上がりと思い出しやめてました。
「それじゃ、私は戻るね? みんなと行動するから」
「ブリジット、ありがとうございました。皆様にもよろしくお伝えください」
ヒューゴ殿のお礼に、ブリジット様は微笑んで返してました。ブリジット様は彼らと探索に出かけられるのでしょう。あら、迎えもきてますわ。
「ブリジット様ー……すみませーん。例の宝箱ですが、どうしてもですねぇ、『虹色』が見つからなくてですねぇ?」
……虹色、ですって?
「それは仕方ないよ。気にしないでね? 私も頑張って探すからっ」
張り切るポーズも可愛らしいですわ。彼らもほっこりとしてますわ……いえ、虹色?
「ふふふ……?」
顔は笑顔、でも私の背中は冷や汗びっしょりでしてよ? ええ、ブリジット様もまた宝箱で好感度を稼いでましたの? それにしては、これまで彼ら三人が言及しませんでしたものね。匂わせもしませんでしたわ。
ともあれ今回のブリジット様は殿下狙いである……そういうことですのね。
「だからといって、引くわけにも参りませんわね? こちらだって宝箱を獲得しましてよ?」
「はいっ、アリアンヌ様! あ、でも、名無しさんにバレない程度でね?」
イヴは賛同しつつも念押しをしてきました。確かにそうですわね。あからさまな争奪戦は極力避けていきましょう。
私たちは彼らの目を掻い潜りつつ、宝箱の回収に勤しんでいました。ばったり出くわしても素知らぬ顔です。
「……ブリジット様、どう思われます? 狙い、一緒な気ィしません?」
「そんな……でも、そんな気もしてきたかも」
「せやね。はーん……競合相手なんやね」
私たちの狙いが相手にもバレてきてますわね。ゴり通すのも限界かもしれません。
「――っと、先手必勝。ブリジットごめんねー」
すぐに動かれたのはオスカー殿。彼は一番に動いて虹色の宝箱を先取していました。
「妨害できないんだっけか……ま、いいか。ガチるか。分け前減るし」
シルヴァン殿も得意の罠や妨害スキルが使えず、不完全燃焼のようでした。といっても、宝箱しいては金策の為ですもの。抜かりないことでしょう。
「僕だってお守りしながら獲得してみせますっ」
張り切りイヴも、負けじと獲得していますわ。
「すみません。今回は彼女に恩がある為、私は採取に専念させていただきます」
「ええ、それもまた当然でしてよ。病み上がりでもありますもの」
私たちはあくまで互いの妨害はしない。それでも張り合うように宝箱を争奪していくのでした――。
慌ただしく私たちは廃墟を駆け抜け、かなり奥地へと進んでいました。今回も最終地点到達に至ったと思いきや。
「……ここ、最終地点じゃないよ」
わりと現存されていた建物。そちらは鍵がかけられてました。イヴが開錠スキルを駆使しても開かないのです。専用の鍵が必要でありますの?
「……スキルでどうにかできないってのも、なんだかなぁ」
イヴは消沈しながら語っていました。今この部屋に出来ることはないと、私たちは真逆に来ていた道を引き返すことにしました。
「……」
鍵穴に触れているのはヒューゴ殿でした。彼は何度も穴を確認すると、私たちに提案してきたのです。
「――本日は無理ですし、お時間かかるかもしれません。それでも私の方で復元させていただけませんか?」
「よろしいのですの……?」
「はい。私に出来ることをやりたい、出来ると思いますので」
復元、かなり労することでしょうに。ヒューゴ殿は清々しいお気持ちなのでしょうか、彼は晴れやかです。ならばとお言葉に甘えることにしました。
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