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想いのカタチ。
しおりを挟む顔は笑顔、内心は怒りまくっているであろう彼、シルヴァン殿に邸まで送っていただきました。殿下も付き添ってくださいましたわ。彼……私に帰らないでと懇願してきましたの。それも。
『お願いアリアンヌ……一人にしないで。シルヴァンが怖いの。きっと二人になったらお仕置きされちゃうのぉ! だから、ね?』
瞳をキュルキュルさせながら。お得意のものですわね。ええ、シルヴァン殿の檄がとぶことでしょう。想像がつきますわ。
一方のシルヴァン殿は本気ですわ。私におざなりに挨拶をすると即、王城へと帰っていきましたもの。私に擁護はさせないぞという鉄の意思。
「……はあ」
突風のように慌ただしく去っていかれましたわ。余韻に浸ることもなくですわね。
心地の良い疲れでもあります。今夜は熟睡できそうですわね。
「……お帰りなさいませ、お嬢様」
「あら、イヴ。ただいま戻りましたわ」
執事服の彼が迎えてくれました。私のこと、待っていてくれたようですわね。
「気になることがございまして――」
イヴの気になること、書に関することでしょうか? それとも――狂王に関すること? いずれにせよ、腰を据えて話を伺うことにしましょう。
「狂王に関するのはまだなんだけど……」
部屋に戻り、窓際の席に座る私たち。イヴが書の好感度のページを見せてくれました。
「プレゼント、あげてコレなんでしょ? 逢瀬だって重ねているのに……」
「なんともまあ……」
いくらバグの可能性があれど……ここまで変動がないことなどあります? こ、告白というのは嘘だともおもえませんのに……この変わらなさは。
「い、いつになったらですの……変化しますの!?」
私は自分で思っている以上に苛立っていたようです。こう、このねっ? この悠長に浮かんでいるような器の呑気さもまた……ん?
「……ん?」
私は衝動的だったことでしょう。軽々しく浮いているであろう器を摘まみ上げたくなったのです。どれほど軽いのかと確かめようとしていて。
「え」
イヴも声をもらしています。所有者であるイヴですらしたことがなかった……今の私の行為。私は今、好感度のページに触れていたのです。
「わ、私は一体何を……!」
今になって顔を青くしていました。器が割れでもしたらどうするつもりだったのです、私! 幸い、何事もなくて良かったですわ。
……器は軽い、中身がないと実感してしまいましたが。
「アリアンヌ様ー……?」
「え、ええ。もうしませんわ」
イヴが頼みますよといった目を向けてきます。ふう、気をつけませんと。
「それにしても妙な触り心地でしたわ。周りが液体のようで、ほら、手も濡れてしまいましてよ――」
そう、余白の部分に触れた時――私の手は濡れていたのです。まるで水に、液体に触れたかのような。
「これは……」
液体の色は何も色付きと定まったわけではなくて。
――とうに器から液体は溢れ出ていて、枠いっぱいに液体で満たされていたとしたら。
『――ああ、そうだ。俺にはプレゼントは必要ないぞ?』
『……にしても、好感度が無、かぁ』
「……!」
殿下のこれまでのお言葉が降りかかってくるのです。とっくにそうだったというのでしょうか……。
いつからだったのか。抑えていたと仰っていた意味は。
「……アリアンヌ様」
「!」
イヴの声、私はハッとしたのです。私は浸っていたのでしょうね。イヴをまたしても放置してでした。
「……問題ないようなら戻ります」
「ええ……ありがとう?」
イヴは微笑んだまま退室していきました。
「好感度は問題なかったと……ええ」
もうじき始まるのは学園生活――殿下と過ごす時間も増えるのですから。私は平静でいられるのでしょうか……?
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