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待望の誕生日。
しおりを挟むダンジョン消失、王太子の婚約騒動。色々とありましたわね。ええ、私と殿下の再婚約は――保留のままでした。色々と処理やら何やらがあるようでした。殿下も頻繁に公爵邸に訪れては、話し込まれているようですわ。
この日も殿下は通い詰められていました。私は殿下と応接間にて茶を嗜んでいました。隣に座られますわね。かなり密着状態で……。
「――よ、ようやくだ!」
殿下は歓喜に震えていたのです。
「煩わしい対処もなんのその、ようやく再婚約だっ!」
俺はやり遂げたと殿下は興奮してました。
「ええと……ありがとうございました?」
「喜んでくれよぉ!」
殿下は嘆いていました。ええ、安堵もしますし、望ましくもありますが……。
「申し訳ありませんわ、実感がわかなくて」
「実感わかなくてもさぁ! 俺と再婚約だぞ!? 恋愛一直線だろ?」
「……友愛の心をもって殿下を支えますわ――アリアンヌ様と共に」
「くっ……さらりと混ぜたつもりだったのに、しっかりと拾いおって……!」
殿下は歯ぎしりをしながら実に悔しそうです。
「そう、アリアンヌ様とですわ……」
前にもありましたわね……この感覚。本当に最近になって、私はアリアンヌ様を感じられるようになってますの。気持ちもそう、同化しているかのようで。本当に不思議……。
「……」
殿下、どうなさいましたの? そのようなお顔で……そんな切羽詰まったかのような?
「殿下……お休みになられてますか?」
お疲れ、なのかしら。こちらに来られているのもですが、それ以外も激務でしょうね。逢瀬の機会も実際は時間が限られてますもの。ああ……目にクマまで。
「そう、寝不足……そうなんだよ、俺、疲れてるんだよ」
「!」
私の手をとると……御自身の頬へ。殿下の手も添えられてます。で、殿下……?
「はあ、癒されるなぁ。ああ、そうだ――君の誕生日も近づいているな?」
「え、ええ……そうですわね?」
この状態でですの? お話は続けられるようで……ええ、私もひとまずは。緊張はしてしまいますけれども。っと、そんな私を察したのか殿下は手をよけられました。代わりににこやかに見つめられていますけれど……。
「ずっとさぁ? 俺、直接祝えなかっただろう? 今回こそはってなるだろ?」
「まあ……!」
今回でようやくですのね? 過去の私よ、散々ボイコットされてきた私たちよ! 殿下はちゃんと来てくださいますわよ!
「……ふーん? 嬉しいんだ?」
「ええ――」
……そう、ですわね。私、はしゃいでますわね。思った以上に嬉しかったのかしら。ああ、殿下はすっかり上機嫌ですわ。鼻歌も歌ってらっしゃいます。
「そうですわ、夜会にお招きしますわね。招待状もお送りしますから――」
「え? 夜会は開催されないよ?」
「え?」
「お招きしないんだよ? ――俺以外」
私が聞き返すのも、殿下はきゅるんとしたお顔でそう答えてくるのです……殿下?
「だって、俺が独占するから。心配するな、公爵の許可も下りている!」
「な、なんですって……?」
まさかの展開でした。というか、私抜きで話が進んでますこと! くう、令嬢あるあるですわ。親の都合、本人の意思無しというものは……!
「……まあ、そうですわね。殿下と過ごせるのなら」
それが確かなのなら、私も良いものかと思えるのです。ええ、今年こそですわね。
「……おいおい、とことん可愛いな、おい」
「え」
「可愛い! ハグだ、ハグ!」
「っと」
殿下、抱きしめようとしましたが私は躱します。躱しつつも、私は質問することにしました。
「殿下、場所はどうなさいますの? 我が邸はその……」
ボヌール邸はお勧めできないのです。定番の停電イベント発生でしてよ……?
「え? アリアンヌのお部屋だよ?」
「え?」
「部屋に邪魔するよ? ――この俺が」
「いえ、殿下……!?」
これは聞き返さずにいられますでしょうか……!
「案ずるな! 準備はこちらで行わせてもらう。びっくりさせるんだぁ」
なんて無邪気なお顔。
「……ま、知ってるわな? 暗闇確定なの。暗闇どっきりかぁ……」
なんたるお顔。殿下……御存知でしたのね。
「……怖いお顔。まあ、心配するな。君の誕生日、良い思い出を作りたいんだ。だから張り切るんだっ!」
「殿下……」
そうですわね……良い思い出にしましょう。彼はこんなにも張り切ってくださるのですもの。多忙な身なのに……多忙。
「殿下、こちらで準備させていただきますわ」
「え、やだ」
「……」
本当にこの方は即答ですわね。それからやだやだを連呼。ご自身で準備するときかないのです。ああ、まだ連呼してますわ……?
「……でしたら、ご一緒に準備しませんこと?」
「それいいな!」
私はダメ元の提案でしたが、殿下は予想以上に嬉しそうでした。折衷案あいなりました。
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