脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
303 / 442

暗闇イベント――エミリアン編。

しおりを挟む

 食後の私たちはまったりしていました。窓際の席にて語らいをと――。

――激しい雷鳴が鳴った。プツンと切れたのは部屋の照明。

「暗闇きたー!」
「殿下……殿下?」

 大層喜んでますこと……? 部屋、真っ暗でしてよ? ああ、手元の照明、蝋燭にしようかしら。ランタンか――。

「え……?」

 暗闇の中、飛ぶのは蝶……蝶? 私はおなじみの蝶たちがかと思っていましたが、どうやら違うようでした。
 闇を灯すかのように、色鮮やかな蝶がいくつも。七色の蝶、虹のようですわね。とても幻想的で、外が嵐であることも忘れさせてくれたかのようで。

「ふふふ」
「殿下……あなたという方は」

 照らされた殿下はそう、悪戯が成功したようなお顔。普通の紙吹雪かと思いましたのに。そういうことでしたのね。

「……同じ誕生日で良かった」

 誕生日の話をした時、殿下に聞かれたことがありました。『ユイの誕生日はいつだったかと』。奇しくも私は同じ誕生日でした。こんな偶然あるのかと今も驚いています。

「――誕生日おめでとう。俺からの本当の贈り物だ」
「……!」 

 とても自然に――私の左手に触れてきて。次は――薬指。

「はっ!」

 私は咄嗟に左手を引っ込めました。ええ、ムードもへったくれもありませんわ。

「ええー!? そういうことするかぁ、普通!?」

 殿下から非難ごうごうでした。そんな彼が手にしていたのは――ええ、光り輝く指輪でしたもの! この流れ……薬指にはめられる流れでしたのでしょう。

「受け取ってくれよぅ、いい値段したんだよぅ、血税じゃなくて別の筋で稼いだお金なんだよぅ……」

 引っ込みがつかなくなった彼は、私にこれでもかと渡してこようとします。

「殿下……その、婚約指輪は既にいただいてますから」

 ええ、婚約が成立した時に。不思議なもので、成長した今でも着用できる代物、なんらかの術がかけられているのでしょう。

「とかいって、つけてないだろう?」
「それはまあ……大事にしまっておりますわ。学園にもつけていけませんもの」
「……まあ、俺もだけどな」
「まあ、お互い様ではありませんか」
「えへ?」

 殿下のいつもの笑顔はさておき。こちらの指輪、ですわね。

「俺からの贈り物……指輪にしたかったんだ。普段使いでいいからつけてほしい。どうか受け取ってくれないか?」

 殿下は指輪入れにしまうと、改めて私に渡してきました。

「殿下……嬉しいのです。ありがとうございます。丁重に扱わせていただきますわ」
「いや丁重じゃなくていいから、つけてほしいんだ。それつけて暴れてもいいから」
「それは……その」

 丁重にもなりましてよ? あなたからの贈り物ですし、高そうな宝石もついてますもの。軽々しく扱うなどと。いえ……暴れる? 

「……今はまだ。大事に扱うと、それはお約束しますわ」
「……そうか」

 殿下は御自身の分まで用意されていたようでした。お揃い、対になるようなもので。彼もそう、着用することはありませんでした。

「――なら、今はこれで」
「!?」

 またしても私の手はとられ、今度は彼の口元へ。そして口づけられたのは――薬指でした。軽く触れたあと、彼は目を細めて微笑んでいて。

「ああ、愛おしいな……」
「……」

 殿下のお言葉に、私ばかりが顔が赤くなってしまう。それがより、殿下を喜ばせるようで。

「……日付が変わる前に。帰るようにって約束だから」

 少しでも破ればフルボッコだ、と殿下。いえ、いくら荒々しき我が家族でも。殿下相手にそんな……ねえ? 

「……俺も、際限なくなりそうだから」
「……」

 唇は離れても、手は触れられたまま。私たちの手は重なり合っていて。


 時間は流れていく、流れていってしまう。

 ――ああ、もう今日が終わろうとしている。殿下もそう、後ろ髪を引かれるようであっても、お帰りになるのだと。

「……殿下」

 玄関までのお見送りでは足りなくて。私は窓越しに馬車が去っていくのを見ていました。

「……」

 あの蝶たちも消えてしまっていました。そういうものだったのでしょう。そう跡形もなくて――夢のような時間でした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。

しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。 次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。 破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?

笹乃笹世
恋愛
 おケツに強い衝撃を受けて蘇った前世の記憶。  日本人だったことを思い出したワタクシは、侯爵令嬢のイルメラ・ベラルディと申します。 一応、侯爵令嬢ではあるのですが……婚約破棄され、傷物腫れ物の扱いで、静養という名目で田舎へとドナドナされて来た、ギリギリかろうじての侯爵家のご令嬢でございます……  しかし、そこで出会ったイケメン領主、エドアルド様に「例え力が弱くても構わない! 月50G支払おう!!」とまで言われたので、たった一つ使える回復魔法で、エドアルド様の疲労や騎士様方の怪我ーーそして頭皮も守ってみせましょう!  頑張りますのでお給金、よろしくお願いいたします!! ーーこれは、回復魔法しか使えない地味顔根暗の傷物侯爵令嬢がささやかな幸せを掴むまでのお話である。

処理中です...