脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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離れていても。

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「なんて……」

 後部座席で休んでいた私たち。シルヴァン殿が休める時に休んでおけ、ついたらぎりぎり働いてもらうと。そんな彼の恩情からでありました。

 馬車に垂らされた布から覗くダンジョン。ああ、なんて――なんて巨大なのでしょう。なんてこと……。



「――アリアンヌ様! 殿下!」

 到着した私たち、早速迎えてくれたのはイヴでした。登校途中に脱走した私のこと、イヴは心配もしていて咎めたくもあることでしょう。ですが彼はそれは後だと、案内してくれることになりました。

「ああ……」 

 一度は崩壊し、そして再建されたダンジョン。もう廃墟ではありません。

 そこは――アルブルモンド。遥か昔、狂王の時代のものといえましょう。
 そう――かつてのアルブルモンド城と連なる都がダンジョンといえました。遠くにのぞむのは王城。

 いわば最終ダンジョン、ラスボスが鎮座しているようであると――。



 開始地点に集っていた人たち、冒険者の皆様もそう。そして――。

「……そうか」

 殿下は眩しそうに見つめていたのは、一部であれど国軍の兵たちでした。我が兄もいますわ。お声がけしている状況ではありませんわね。

「――殿下。微力ながらも参上しました」

 やってきたのはヒューゴ殿でした。彼はアイテムの配給や修繕など。後方支援に徹するのだと。

「殿下、俺もです。フェル家の者として、王の盾と馳せ参じました」

 オスカー殿もでした。彼は恭しく跪いていました。彼の守りの力なれば、殿下を守ってくださることでしょう。

「私たちも参りました……! この癒しの力、役立ててみせますから!」

 先頭に立つのはブリジット様。彼女に付き従う集団も携えてでした。ブリジット様も含めて彼らは制服姿でした。私と一緒ですわね。いてもたってもいられなかったのでしょう。

 歴戦の冒険者たちも。殿下を信じてくださる軍人たちも。ええ、総力戦ですわね。

「――殿下。形式めいたことはご容赦願いたい。それと手短に説明もさせていただきたく」

 ええ、名無し殿ですわね。彼が統率されているのでしょう。殿下は数回彼をチラ見していましたが、正されました。魔物頭に面を食らっていたようですわね。おまけに半裸。

「現在はアルブルモンド城と都……昔のだろうか。ダンジョンはその姿をとっている。強大なる魔物達、多くの罠、なによりこの広大さだ。ルートの確保を行っているのが現状だ。大分掴め出来てきてはいる」

 本日になって変貌したダンジョン、ダンジョンに長けた彼らによって、あらかたの把握はできているようでした。

「空中での移動は対策がなされているな」
「ええ……」
 私は名無し殿と共に空を見上げました。瘴気を孕んだ空、空中にはびこる魔物たち。陸路の方が良さそうですわね……。
「幸いというべきか、魔法陣による移動が可能だった――ご令嬢」

 名無し殿は私に向けて。そして彼が腕をとったのはイヴでした。

「――本来ならばあなたに同行、そう考えてはいた。だが、こちらとしても移動手段の確保、確実に行わせていただきたい」
「そういうことですのね……」

 名無し殿、イヴのことを評価してらっしゃること。イヴにルート確保に専念してほしいのでしょう。イヴが先導して動いてくれる分、道は切り拓かれていくのだと。それだけではない、器用なイヴにフォローをお願いしたいようですわね。

「……待って。僕、アリアンヌ様がきたらそっちにって!」
「……すまない」

 ……イヴは私についてきてくれる予定だったのでしょうか。ただ名無し殿は、私についていくよりはと考えたのでしょう。イヴ一人の動きによって多くが助かるのならと。

「――イヴ、頼みましたわよ。あなたの働きによって多くが助かるのです」
「……そんな」

 イヴは御意とは言いませんでした。失望した姿のままで……。

「――殿下方には精鋭たちが付き従う。守りの御手、フェル家のご令息もおられる。それで手を打ってはくれないか」
「……はい」

 イヴは納得していないと、彼の背中が語っているかのよう。職務、従者として心配している心はよろしくても、イヴ、今はどうか――。

「……そう精鋭たちだ。だが、シルヴァン殿は別の任務にあたってもらっている。莫大なる罠の処理は彼にお願いしている――殿下についていけない」
「……そういうことです」

 シルヴァン殿、彼は彼で既に動いていたようです。地下室にきたのは束の間のことでしたのね。シルヴァン殿とて本当は殿下のお傍にいたいでしょうが……。

「……ああ、俺もだな。頼んだぞ、シルヴァン」
「仰せのままに」

 殿下もシルヴァン殿も。互いに側にいたいことでしょう、ですが適材適所ともいえましょうか。

「――あ、そうだ。オスカー様、こちらをお持ちくださいませ」
「そうだった。頂戴しておきますね」

 シルヴァン殿が小さきものを渡していました。受け取ったオスカー殿は懐にしまっていました。私は気になりはしますが、心の隅に置いておきましょう。なんらかの特攻アイテム、お守りするアイテムといったものでしょうから、おそらく。

 それぞれの場所で私たちは戦っていく。向かうは王城――『狂王』の元へ。

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