脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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狂王のもとへ。

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 特別出張の双子による聖水。ええ、今回もかけてもらいましたわ。タダで良いという、粋な計らいでした。

 美しき都でした。整えられた路に、整然たる街並み。美しき花々も咲き誇っています。暴君と呼ばれた彼が、このような見事なまでの都を作り上げていましたの……? 

 ですが似つかわしくない存在、ええ、彼らが蠢いているのです。
 かつての都を徘徊するは魔物たち。アンデッドのみならず、これまで会してきた魔物らも。手こずらせてきた彼らが立ちはだかってきたのです。

「まあ!」

 イヴが先だって稼働させてくれた魔法陣、それが魔物によって破壊されようとしていました。

「――させるか!」
「くっ……!」

 そうはさせまいと、兵士たちが斬りかかっていく。相手もかなりの強さのよう、苦戦しているようで。

「……」 

 私とて苦戦する相手でしょう。ですが、時間はかかれど蹴散らしてみせまして――。

「……先、行くぞ」
「!」

 武器を構えようとした私、その腕を掴んで止めたのは殿下でした。彼は首を横に振っていました。

「……あとは頼んだ」

 殿下の苦しそうな声……苦渋の決断。駆けつけてくれた忠臣たちを置いていかなくてはならない。

「……はい、殿下。こちらはお任せください。あなた方はあなた方の道へ――」
「わかった」

 殿下は私の手をとって魔法陣へと飛び込んでいった。

「……皆さん、大丈夫です。聖女がきてくれる。それまでどうにか持ちこたえください!」

 オスカー殿や冒険者の皆さんも続いていく。私たちは彼らの無事を祈るかのように、歩みを止めずに進んでいくのです。


 城門までやってきたのに、待ち構えていたのは多くの魔物たち。先に着いていた冒険者たちも中々突破できずにいたようでした。

「……私達も加勢しないとね。皆様方、先に進んでください」
「ケリ、つけてくださいよぉ! もちろん、こいつら倒したら追いかけますんでね!」

 歴戦の冒険者方も苦戦は避けられない。彼らはこちらに託してきたのでした。

「……」

 残された私たち、いえ、彼らが繋いでくださったのです。決着をつけにいきましょう。


 殿下、オスカー殿、私たち三人は城内を走っていました。魔物の姿はありません。とても静かな城内、外の騒ぎが嘘のようです。

「……」

 この脳筋をもってしても強大なる敵。これまでの敵とは比べ物にならないほど。ブリジット様方がご尽力してくださっても、はたして無事であるのでしょうか――。

「……今は先に進もう。俺達が奴を討てばいい。俺達ならばやり遂げられる、そうだろう?」
「……殿下」

 優しい声で諭してくださった殿下。私を安心させるかのように微笑んでくださる。私はとても勇気づけられて。

「……はい、殿下」

 肩の力が抜けたようですわ。ええ、託されたのですから。前を見ましょう。

「……ええと、俺もいるよ? 俺もバリアで守るからね?」

 気まずそうに手を上げているオスカー殿。

「も、もちろんでしてよ! あなたの御力は存じていますわ」
「そ、そう?」

 私は勢いあまって返事してしまい、オスカー殿を驚かせてしまったのでしょうか。彼、たじろいでいますものね。

 ええ、あなたの御力は実感してますわ。とても……助けられましたもの。

「……」

 ああ、殿下が気まずそうにしておいでですこと。例の件の一因であらせられましたものね?
 
「……ふふ」

 いつもの雰囲気ですはね。緊迫めいた状況でもありますのにね。ですが、いつもの私たちだからこそ、成し遂げられるのだと。そういった自信を取り戻せたようでした――。

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