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レヴァンタジア式
しおりを挟む「――お待たせしました。準備が整いましたので、お越しください」
イヴの声がしていました。吹き抜けであるこちらの間、彼はノックはせずにゆったりと近づいてきたのです。
「あれ、アリアンヌ様……?」
私、後ろ姿でしたわね。立ち上がって振り返ると――。
「そ、そ、その恰好は……!」
イヴ……イヴ? 彼はあまりのも動揺しているようですわ? 顔も真っ赤ですわね? 肌を過度に露出してもいませんのに……?
「おやおや、イヴ? あまりの愛らしさにやられてしまったのかな?」
「それもあるけど! あ……いや、そっちもですけど、それよりおじ様!」
……それもあるけど、って。私まで顔がのぼそうですが、今は落ち着きましょう。卿の揶揄う気満々の表情でも見て冷静になりましょう。そう、彼はおちょくる気満々ですのよ? 乗せられてはならなくてよ……!? イヴはまだ興奮したままですわね。
「『今』は違う、少なくとも今は違いますから! 着替えさせてください!」
「……?」
イヴは猛抗議をしていました。私の服装に問題があるのかしら。こちらの文化を学んでおくべきでしたわ。
「……おやおや、イヴ? 『その気』があったから――君は来たのではないのかな?」
「……っ」
イヴの口が止みました。その気、とは……イヴがレヴァンタジアにやってきた理由ともいえるのでしょうか。
イヴの失踪、そしてこちらの国へ。それが判明するというのでしょうか。
「――さあ、積もる話は食事会にて。その時にでもお伝えしましょうか」
「ええ……」
私はお招きをうけることになったのでした――真実を語られるお食事会へ。
卿とイヴと私、三名だけの食事会。密室で行われることになりました。この国の食事スタイル、床にマットが敷かれ、そちらに並べられた料理たち。味と匂いが強めの郷土料理。床に座って食事をすることになります。
「手づかみのもあるけれど。アリアンヌ様、ひとまずこちらをご使用ください」
「ありがとう」
私は隣のイヴからスプーンとフォークを受け取りました。ナイフも一応、と近くに置いてくれてます。近くに。
「……」
イヴが、近い。私たちは隣りに座っているのです。しかも密着するような位置で。真向いの卿が満足そうにしておられますわ。
「母なる――」
卿が暗唱するは、食事前のお祈りでしょうか。卿はもちろん、イヴもスラスラと口にしていました。私は……言葉尻だけはどうにか。ええ、笑顔でいましてよ?
それからグラスを手にとって乾杯、と。こちらはビシっと決まりましてよ。良い音が響いたものです。
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