脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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真紅の宝箱

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「そうですわね……」 

 私は持参してきたリュックを前にもってきました。この時までは渡そうにも……受け取り拒否されていたプレゼントたち。今、お渡ししてみようかしら? 

「……また、例のプレゼント?」  
「ええ、受け取ってくださるかしら?」  
「……」
「……」

 長き沈黙よ。その、お嫌かしら……? 

「……せっかくですし、いただきましょうかね」
「まあ!」  
「……って、こんなに?」 
 
 待ってましたといわんばかりに、私は一気に取り出したのです。いえ、パリンが怖いですからね、まだ一部でしてよ? 怖いかしら? 

「ありがとうございます。では、まずは――」

 個包装の一つを手にとって、ヤニク殿は開封されていきます。ふふふ、中身はなかなかのものでしてよ? 

「……おおお!! 闇騎士の鎧!! 闇の力に対抗できる!」 
 
 ふふふ、そうでしょうそうでしょう? あなたも装備可能でしてよ? 

「……おおお!! 万能治療薬!! 生涯で一度でもお目にかかれるとは!」
  
 そうでしょうそうでしょう? 私も驚きの逸品でしてよ? 

「……おおお!! 豪炎の大剣!! 火属性、助かる!」  

 そうでしょう!? 私は激しく頷いていますわ!! 私も欲しいくらい!!
 なんです、ヤニク殿ったら。あなた、こういったものがお好きでしたのね!! ああ、興奮をば。失礼しましたわ。

「……すみません、興奮し過ぎた」

 自身を律していた、ヤニク殿。そんな……。

「いえいえ、それだけ喜ばれたのはこちらも嬉しきこと」

 私も令嬢ぶってなければ、大っぴらに楽しんでましたから。

「……ありがとう」
「いいえ」

 ……あら、随分とくだけた笑顔のヤニク殿。大層喜んでくださったからね、きっと。

「……」

 と、一方で。通常の宝箱でこの喜びよう。レアだとどれほどだったのかしら? というか……少しずつのお渡しにしましょう。パリンは怖いですもの、パリンは。


 律儀なヤニク殿、返礼としてギフト券をくださいました。この地にて使えるものだとか。ええ、使わせていただきましょうか。

「――ふふ、迷いますわね」

 ふらっと立ち寄った雑貨屋。気持ちの良い挨拶で迎えてくださいました。善きこと。

 どれもこれも素敵ですわ。花の香りがそよぐハンカチ……ええと、こちらは父に。多忙なる日々の癒しになれば幸いかと。お母様にはアロマですわね、彼女が好みそうな香りですわ。あとは兄や姉たちの喜びそうなもの……世話になっている使用人たちにも。

「ええと、彼にも――――」

 イヴ。いつもながらの特別扱いをしたいですわ……ですが!! ここは我慢を……。
 我慢を!! 



「――おかえりなさいませ、お嬢様。本日も『かの地』へお出かけでございましたか」
「た、ただいま戻りましたわ?」 
 
 帰ったら即イヴでした。彼は邸の正門前で待ち構えていたのです。それに……ええ。

「あら、イヴったら。かの地、とは? 私、都を散策しただけでしてよ?」  
「……へえ、お一人で。お伴を連れずに、ですか」

 ああ……イヴの視線がまとわりつく。辛いですわ。

「イヴ、ご内密にくださいませ。大変なる教育の日々なのです!! 学園だって始まってしまいますわ。だから息抜きをと」
「ええ、大変なる日々を送られているのは存じてます……僕は連れていってくれないんですか」
「うっ!」  
「どうしてお一人で……あなたに何かあったらと思うと……だからどうか、今後はお連れくださいませ……」
「ううっ!」  

 イヴの縋るような眼差し、なんたる目力……!! 悲しそうなのに、こう、圧が、圧が……!! 

「イヴ……イヴよ!! ときに、人は一人で動かねばならぬ時もあると……それが今なのです!」  
「え、なんで」

 イヴ、素に戻ってましてよ、イヴ。

「あ、失礼しました。まあ……そうですね。何かのお考えがあってのことかと思いますし」

 本当は納得がいってないのでしょう、それでもイヴは承知してくれたようです。

「アリアンヌ様――僕はあなたのイヴ・ポルトです。あなたの力になりたいんです。どのようなことでも、お話しくださいね?」  
「……イヴ」 

 イヴ。あなたは記憶の共有は出来なくなっており、今回は伝えてもいません。それでもあなたは変わらず――力になろうとしてくれるのですね。
 苦しい。本当は話したいくらい。それでも、イチと決めたからには……!! 

「……ひとまずお疲れでしょう。そちらのお荷物、運ばせてくださいね?」  

 それくらいはいいでしょう、と。イヴは荷物もといお土産を持とうとしていました。邸の近くとあって、リュックから出していたものですわね。ええ、それは甘えようかしら……どのみち。

「ネタバラシですが、お土産ですわ。家族の分は私の方で渡しておきます。仕えてくれる皆にはあなたから渡してくださるかしら?」  

 特産物、大盤振る舞いでしてよ。皆、召し上がってくださいまし。イヴ、頼みましたわね。

「……僕の分も」
「え、ええ……」

 一緒、ですわね。あなたの分も含まれていると。

「……ふふ、ありがとうございます!! 皆様、喜ばれることでしょう!」  

 イヴは笑顔を振りまき、大量の荷物を抱えていきました。とことん笑顔ですわね……? なんでしょう、なにか。

「――放っておかれるのも、今だけなら、まあ」
「……イヴ?」 
  
 ぼそりと、彼はそう呟いていて。イヴ……イヴ? 

「ああ、そうそう。殿下からの手紙もお預かりしています。本日いらっしゃりましてね、不在とお伝えしましたから」
「で、殿下……」

 殿下からのお誘いはあります。王太子から直々にと。私は体調不良と偽って、苦しくもお断りをしていました。そうした仮病をしつつも、こっそり抜け出して辺境伯領へと。

「体調不良ということで、お断りしましたから。それはいいんですけど」

 いいんですの? いえ、あまりよろしくはないでしょうけど……。

「殿下も……僕も。ううん、それだけじゃないかな――我慢の限界、来ないといいね?」  
「……」

 お土産を抱えながら、しゃがんだイヴ、彼は――私の耳元にそう囁いてきたのです……。
 どこまで、御存知なの……イヴ。

「――ああ、それと。辺境伯領? 今の季節、白蘭が見頃ですよね? 僕、好きなんです」

 どこまで……イヴ!?  


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