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いくつものダンジョンを巡って
しおりを挟む形を変えるはダンジョン。
この日はジャングルタイプ。熱帯地方特有の蒸し暑さと果実の芳醇なる香りよ。
さて、こちらは開始時点。川を渡る必要がありますが――。
「――む、カヌーもボートも混雑しているか。泳ぐか」
「泳ぐ、ですって」
そういえばあなた、泳いでましたわね……私も興味津々ではありましたわ。ふむ、泳ぐと。
「あはは、冗談ですよね?」
イヴ、目が笑ってますわね。私たちはノリノリのままでしたが。
「あはは……冗談ですよね?」
イヴ、目が笑ってませんわ。私たちは自粛することにしました。
「戯言失礼した。小型船で渡ろう」
名無し殿はライセンス証から小型船を出現させました。洗練されたデザインですこと!!
「――ああ、あなた方もご一緒にいかがか」
名無し殿はその場にいた複数人にもお声がけを。乗れずにいた方々ですわ。私たちも頷きます。
「……」
人に囲まれた名無し殿。人を束ねている名無し殿。ダンジョン冒険者の頂点ともいえる彼。
ねえ、名無し殿。あなたは本当に生き生きしてらっしゃるのね。
アリエス学園の生徒となった今でも、ダンジョン通いは続いていました。
青き宝箱。それらが出たのはあの日だけでした。といっても、未だに渡す機会を伺ったままですわね。中々、渡せず……。
イヴが探ってくれた『あの国』のこと。御兄弟も多く、特定も難しいと。
『……あ、でもお一人。アリエス学園に留学なさっていたんです。もう卒業されてますけれど』
――ええ、昼下がりの君。彼は学園の卒業生だったと。殿下たちの一学年上、この春卒業されたばかりですわね。
『ただ、もう国には戻られているようです。公務にも励まれているとか』
帰国なさっていたと。近い国ではありますが、行き来は労を要しますものね。そうですのね……ありがとう、イヴ。
日々を重ねるごとに姿を変えていくダンジョン。
時には『彼ら』を交えつつ、数多のダンジョンを巡りましたわね。
果てなき砂漠、古代を彷彿させる神殿、身が凍えるような白銀の世界も――。
この日は……因縁でもありし魔導研究所。初登場、となってますわね。数あるダンジョンでも出現が――皆様方も苦戦なさっていて。
「……ああ!」
さっそく入口に戻された私たち……ああ!! 本当に……ああ!!
私は、私は何故、罠の位置を覚えていませんでしたの!! いきなりペラペラと説明をして怪しまれようと。
「……僕の力が至らず、申し訳ございません」
イヴが苦しそうにしていました。このような顔をさせずに済みましたのに……。
いえ、イヴ。今回ばかりは相当なものなのです。あなたが駆使してくれていても、罠が張り巡らせられていて。
「アミュレットはいらんかねー」
「いらんかねー」
ここで商売人、双子のお二方の登場です。
「幸運を上げるよー」
「上げるよー、罠を回避しやすくなるよー」
おお、そういった効能でしたのね。今知りましてよ。有難き効果でしたこと。冒険者は彼らに集中し、速攻で売り切れていました。イヴは出遅れたと悔しそうに。
「ああ、有用だ。といっても……」
名無し殿、考え込まれてますわ。このダンジョン、罠の発動回数が達したら崩壊ですから。ノーミスが望ましいところ。
「……本日はここまでですわね」
以前は罠のエキスパート、シルヴァン殿のご協力もあってのことでしたから。彼への協力を仰ぎませんと。ええ、致し方ないことです。
「……」
名無し殿は順々と冒険者方を見て、それから私を。彼は思い巡らせているようで――。
「――皆、しばし時間をくれないか」
そう告げた彼は、双子になんらかの交渉をしていました。少しのやりとりのあと、巻物状態の紙を手にしていました。譲り受けたかのよう。それを地面に広げ、一心不乱に書き記していたのです。
「――お待たせした。こちらに罠の場所を記していった。撮影でも記憶でもいい。覚えていって欲しい」
完成されたマップ。そこに湧き上がるは完成。誰しもが名無し殿を信頼してますもの、彼が攻略した上でのデータと思ってのことでしょう。それは私もそう思えることですが。
「……名無し殿?」
完璧な地図――全てを踏破済みで。それでいて――罠スキルが長けていないと、そうでないとわからないようなところまで。
名無し殿、あなたは――。
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