脳筋悪役令嬢の華麗なる恋愛遊戯~ダンジョン攻略駆使して有利に進めてみせます!~

古駒フミ

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黒く、塗りつぶされて

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「え、なに……? 弟とか、ヒューゴ様とか……なんなの?」
  
 困惑するブリジット、彼女は私に尋ねようとしていましたが。

「――ユイちゃん!! これ!?」

 ――書が、黒く淀んだ気を纏っていた。勝手に開かれたのは好感度のページ。私たちが築いてきた絆、その証が今。

「きゃああああ!?」

 ブリジットの高らかな悲鳴と。

「……っ!」  

 ……私の声にならない悲鳴。

 そのページは浸食されていた――黒く、塗りつぶされるかのように。

「あ……」

 ようやく、辛うじて。私は声を出せたけれど……そんな。

 彼らは黒に埋め尽くされてしまって――そして。

「なーに、そのリアクション? ――私がいるじゃん?」  

 そう、最後の項目。ハテナだったそこが解禁されていて――セレステの姿が。器もなく、何ももっていないセレステだけが。

「いやぁ……ひっどい縛りだったわ。他の連中攻略しない限りは、なんてさ?」  

 そのような条件でしたの? ……いえ、この状況はなに? 他の皆様はどうなってしまいましたの!?  

「……」

 いえ、落ち着きなさい。今、セレステと会話ができているのです。好機であると、だから落ち着いて……お願い、私。

「――彼らに何かをしたの、セレステ」

 ねえ、セレステ。あなたはここまでのことが出来た。
 いえ――今までもそうだったのでしょうね。あなたはただ、一連の出来事を知っていただけではなくて。

 ――裏で手を引いていたのだと。

 イヴになりすましていたあなたの口癖――面白くない。
 ユウ君とヒューゴ殿を貶めたのも――面白さを求める為。

 本当にどうして!! そんな、そんな理由で……。

「……ねえ、あなたは」 

 駄目だ、声が震えてしまう。だって、本当は信じられなくて。信じたくてもなくて。

 なんで。

 なんでセレステが? 

「……ユイちゃん」

 私、ブリジットの手を握っていました。勇気を得たかったのでしょう。

「うん」
「……ありがとう」

 彼女もまた、握り返してくれたのです。ええ、対峙しましょう――セレステと。

「彼らに何かをしたのなら――私はあなたを許さない」

 大親友であっても、かけがえのない相手でも――許されないことだと。私はまっすぐに見据えたのです。

「……あんな奴ら、どうでもよくない?」  
「なっ!」  

 この温度差よ! セレステ、怠そうに語るではありませんの! 

「そ、どうでもいいの。だから、特に何もしてないってー。ほんとほんと」
「あなた……」

 賢者としてのあなた……いえ、あなたが賢者絡みなことも衝撃的ではありつつも。ピースは散りばめられていましのね……。

 どこまで信じていいの? と、思っている間にもセレステの話は続いていて。

「本当だって、このゲームの……っと」

 ブリジットのことをちらりと見ると、セレステは口を噤みました。ここがゲームの世界ということまで存じていたようですわね。ブリジットに配慮したと? 

「とにかく――この世界でたのしーく、生きていればいいんじゃない?」 
 
 と、イヴの声でそう語るのです――そして。

「――『あんた』抜きの世界でね」
「!」  

 セレステが差し出す手――黒い霧に取り巻かれるは私!! 

「おいで――ユイ」

 ――私に向けて。私を誘おうとしている……どこに? 

「何するの、セレステ!」  

 ブリジットが聖なる力で排除しようとしてくれる、けれどそれは霧散してしまって……。

「ほんと怖いなぁ、ブリジットは。ねえ、ブリジット? 私になら任せられるって、嬉しかったよ? だから任せといて?」
  
 私を黒い霧で拘束しながらも、ブリジットにはかつての親しみのある態度、優しい声で。

「ブリジットはブリジットで大好きだったよ――元気でね?」  
「セレステ!」 
 
 といった言葉まで。それを受けたブリジットは怒っていた。

「あはは、最後まで怖いんだから」

 一人だけ、セレステだけが笑っている。この場に似つかわしくない笑い。

「っと、このへんにしとこっと。面倒くさい奴らに来られてもだし」
「……っ!」  

 ええ、『彼ら』が来たら打開策が――一方で、相対するとなると。

 ――きっと只事では済まない。互いに。
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