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あなたは誰?
しおりを挟む運命の日はついに明日にまで迫っていてました。本日の夕頃、私はブリジット様を自室に招いていました。夕日が影を作る、窓際にて語るは私たち。
「――ごめんね、セレステのこと探るっていっても」
中々、とブリジット様は俯きながら首を振っていました。
「そんな……」
私は手を振りました。気にしないでいただきたいですわ……。
「あ、でもね! 夢に出てきたの!」
「まあ!」
そうですわね、あなた、夢の中でセレステからヒントをもらっていたと。その夢の内容とは――。
「えへへ、三人で大樹で話していた夢。楽しかったなぁって」
懐かしそうに笑うブリジット様、それから悲しそうに瞳を伏せていて。
「って、なんのヒントにもならないのにね……本当にどうしてるんだろうね」
「ブリジット……」
私にはわかります。さぞ幸せな夢だったのでしょう。その分、それが夢であると、夢だったと。その落差たるや……心情、お察ししますわ。
「セレステ、会いたいな……」
ブリジット様の前だったから。つい、結衣として口にしてしまって。
――バンッ!! 突然開かれたるは部屋の扉!? 私たちは何事かと立ち上がったのです。
「……イヴ?」
開いた当人はイヴ……? 彼は自信に満ち溢れた表情でやってきました。本当にイヴ……?
「――こっちだってそうだよ。ずっとそうだよ」
そうは言うけれど。違う。イヴではない。なりすました別人でしょう。警戒を高めた私は立ち上がり構えました。ブリジット様もです。
ええ、そうですわ。ここ最近、イヴの様子はおかしかった。一体、何が――。
「……待って」
――私の脳裏に浮かんでしまった人物。
「ね、ユイちゃん……?」
不安そうなブリジット、私をユイと呼ぶ。彼女と顔を見合わせました。私たちが思い浮かべている人物、それは。
「――セレステ?」
確信まではもてなくとも、イヴでないのは確か。答えはというと。
「ふふ、正解」
にんまりと笑ったイヴの姿をした――セレステ。
セレステ、あなたは何を考えているの。このようにしなくても、夢の中でもやりとりは出来たでしょうに。
「この体、馴染むなぁ。もっと早くこうしてれば良かった」
「……」
馴染む? ……何はともあれ、イヴの体を乗っ取っているのは確かであると。
だからなの? セレステに憑依されていたから、だから、イヴの力は強大になっていたと? それは、それが意味することは――。
「はーい、ユイにブリジット!! 久しぶり……って、わけでもないけどね」
それは夢の中でのやりとり、だからかと思っていたけれど。
「――『弟』クンの時はどうも」
「――え」
弟……ユウ君? その時って? ……その時って。
「騙された滑稽な冒険者達もそう」
嵌められてしまった冒険者たち……その時は。いえ、その時だけではない。
随所、あらゆるところで、彼は――セレステは。
「ユイは優しいよねぇ? 弟クンも――ヒューゴサマも許すんだから」
――『あんなことまでされたのに』と。歪んだ笑みをしながら。
あなたは知っていたというの? 何から何まで?
ねえ、あなたは誰。
本当にセレステなの?
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