夕暮れ、キミと猫散歩

古駒フミ

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楽しい寄り道

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 日々は経っていく。
 一歩、また一歩と。
 花宵君が人間でいられる時間、それが増えていった。



 今日もいそしむクラブ活動。いつもの校舎、夕方から夜へと変わっていって。
 ついに、今日になって。

「みんなお疲れー、今日もケンジ飯ー!」

 タエちゃんのテンション高い声。本日の活動終了の合図だった。

「あ……」

 良かった、本当に良かった。花宵君は途中に猫にならなかった。猫になることなく、最後までいられた。本人はいまだ信じられなさそうにしていた。

「うんうん、アキラもお疲れ様」

 やってきたのはタエちゃん。うんうん、と労っていた。それは皆同じ思い。私だってそうよ。

「ありがとう……みんな」

 花宵君は小さく笑った。わっと皆が沸き立つ。

「あとはそうね、ケンジ飯ね?」

 ケンジ飯、彼の実家のスーパーへ。何気に私も初参加なのよね。

「ああ」

 花宵君は頷いた。そうね、一緒に――。



 この島きってのスーパーへ。皆思い思いのものを買っていく。巨大おにぎりや、唐揚げ棒。デザート系の子もいるわ。私はもちろん――棒つきバニラアイス!

 大所帯だけど、少しの滞在ならよいと。スーパー側の厚意のもと、入口近くのスペースで私たちは食べていた。

 ふむふむ。花宵君はチョコミント。清涼感せいりょうかんあるわね。
 ふむふむ、タエちゃんはストロベリーアイス。ああ、果肉かにくがジューシーね! 私も迷ったのよ!
 ふむふむ、ケンジはクッキーアンドクリームと。クッキーのザクザク感が、ザクザク感が、こう!

 それぞれがチャージして、私もまたしてもハズレで。今日はもうおひらきとなった。さあ、帰りましょう。

「サヨ、送ってく。送ってくから」

 ケンジがすでに自転車でスタンバイしていた。本人はすでに行く気満々まんまんで。ええ、心配してくれているから。おじいちゃんとのこともあるし。

久々ひさびさだから、オレ、送ってくから!」

 力強く何度も。そうね、ずっと花宵君を送っていたから――体調不良という名目で。

「でもケンジ……」

 私、思うのよ。あなたの家はココ。なのにあの坂道につきあわせてしまうこと。気が引けてもしまうというか。

「オレ、送りたいんだよ……」

 子犬のような目を向けてくるわね……いえ、あなたが望んでというより? 心配だからと、だからよね?

「……」

 花宵君からの視線を感じる。私とケンジに向けて?

「……俺が送っていく」

 すっと間に入ってきたのは花宵君。私とケンジの間に。

「な、なんだよ……」

 ケンジにとっては突然の申し出もうしでなわけで。

「別に。帰る方向が一緒だから」
「なっ」

 淡々たんたんと述べる花宵君に、面食めんくらったのはケンジ。

「確かにそうよね。それじゃ、一緒に帰りましょうか」
「サヨっ!?」

 納得している私に、驚愕きょうがくしているケンジ。私としてもこっちの方が有り難いありがたいというか。私より断然体力があるケンジでも、ほら、あの坂道は……ね?

「それじゃ、お二人さーん。ケンジも。また明日ねー?」

 タエちゃんは向こうで待っていた友達と。もう解散の流れだった。

「えー……」

 ケンジ、どこまでも心配してくれるってこと? あなたに負担をかけたいのよ、私としても。



 夏休みも折り返しとなった。島も『いりあい祭り』の準備が進んでいる。いたるところに提灯ちょうちんや、猫のオブジェとか。染められつつある、こちらの島。

 今日は喫茶店のお手伝い。それから日が落ちると、黒猫アキ君のご来店。おじいちゃんは今日もレコードをかけるのかしら?

「島もお祭り一色になってきたね」

 おじいちゃんは鼻歌はなうたまじりだった。島につられてご機嫌みたい。そんな彼がかけたのは、ミュージカル音楽だった。こっちの心まで浮かれてきそう。

「……」

 私、思ったの。おじいちゃん、徹底的にピアノ曲は流さない。それは私を気遣きづかってこそ。
 一室いっしつにあるピアノ、私は目をそむけたままで。

「……にゃー」

 アキ君、私に声をかけたのかしら? 猫語ではあるわね。彼、私の足元までやってきた。

「……ふふ」

 私、安心したの……。

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