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番外編
魔力切れ……?
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夜中。体の芯から冷えるような寒さを感じて目が覚めた。
なんかダルい。体が鉛みたいに重くて、頭もボーッとしている。
風邪か……いや、そんな単純な話じゃない気もする。自分のおデコや首に手を当ててみるけど熱はない。熱はないのに、全身を冷たい霧が包むように寒気が襲ってくる。
毛布に頭までぐるりとくるまって丸くなる。震えは止まらず、冷えた足先をこすり合わせ、手の指先に息を吹きかける。
(……ただの風邪? 本当にそうだよな……? でも、この寒気とだるさは普通じゃない気がする……)
俺の異変に気づいたのは、隣で寝ていたガウルだった。
「……おい、大丈夫か?」
「……うん、たぶん大丈夫。なんか風邪っぽいだけ……かも」
言葉にはしたものの、自分でもその確信は持てなかった。
ガウルは俺の額に手を当て、そのまま前髪をかき上げると、俺の額にガウルの額がぴったりとくっついた。
「……熱は無さそうだな」
「……うん、今はすごく寒い」
「これから上がるかもな」
ガウルはおもむろにシャツを脱ぎ捨てると、毛布の中に滑り込んできた。そのまま、俺を両腕でぎゅっと包み込み、柔らかくも弾力のある温かい胸板に顔をうずめる形になった。
「……少しはあったかいか?」
「……ありがと」
ガウルは毛布に隙間ができないように丁寧に整え、震える背中を大きな手でそっと撫でた。
(あー……なんだろ、あったかいし、めちゃくちゃ安心する……)
その温もりに包まれながら、俺は自然と力が抜け、冷えきった体がじんわりと解けていくのを感じた。
「……ご主人様、どうしたんですか?」
背中越しに、アヴィの囁き声が聞こえた。
ガウルが代わりに答える。
「寒気が止まらないらしい。具合が良くないみたいだ」
それを聞いたアヴィは、すかさず俺の背中にぴったり身を寄せ、毛布にくるまったガウルごと俺を後ろから抱きしめた。
「……気持ちが悪いな」
「そんなこと言ってる場合ですか。ご主人様を温めるのが先決でしょう」
その瞬間、クーが寝返りを打ったのか、ガウルの向こう側でベッドが軋む音が響いた。
「……えーっ、なんでガウルとアヴィが抱き合ってるの!?」
うん、クーの位置からだと、そう見えるよな。
――だが、すまん。今はツッコミを入れる余裕なんて、俺にはなかった。
「あっ、なーんだ、あいだにユーマがいたんだ! ビックリしたー! 二人が変な気でも起こしたかと思った……!」
「……おい、静かにしろ」
「クーさん、非常事態です。ご主人様の具合が悪そうです。2階から使ってない毛布を何枚か持ってきてくれませんか?」
「え!? 待って、すぐ持ってくるね」
「……ごめんな」
「いいから、寝てろ」
ほどなくして毛布を抱えたクーが戻ってきた。
「……ユーマ、大丈夫? 寒いの?」
「……震えは収まった。でも手足がまだ冷たい」
「毛布を掛けてください」
クーが毛布をかけてくれて、ガウルとアヴィも熱を逃さないように更に密着してきた。
毛布の中には、ガウルの温かい胸板とアヴィのやわらかな体温が、俺を包み込むように重なっている。
冷たかった手足も、じんわり温かさが染み渡って、体の奥から力が抜けていく。
俺は目を閉じたまま、小さく息をついた。
ガウルの大きな手が背中を撫で、アヴィの腕がそっと腰を支えてくれる。
毛布と人肌のぬくもりに包まれて、俺は深い呼吸と共に、少しずつ穏やかに眠りに落ちていった。
――あっつい……。
いや、暑いを通り越してもはや熱い、灼熱。
なにこれ、サウナ? 砂漠? 炎天下の車の中!?
汗で張り付いた前髪が鬱陶しい。
服もシーツも肌にべったり貼りついて、まるで蒸し器の中の点心状態。
「ぬわっっっちぃぃ……ッ!!」
あまりの蒸し暑さに、思わず毛布を蹴り飛ばし、反射的に上体を起こす。
――そして。目に飛び込んできた光景に、俺は固まった。
ライトとリーヤとリィノが、火鉢の上で真っ赤に石を焼いている。
その焼けた石を、クーが水を張った鍋の中へ――ポチャン。
瞬間、モワッと立ちのぼる灼熱の蒸気。
あっという間に部屋がサウナと化した。
そしてその横では、チビたちがなぜか腕立て伏せ、ダンベル、スクワット。
筋肉が湯気に霞みながら、リズムよく動いている。
……いや、待て。
なんで屋敷の寝室で“人体ボイラー式暖房システム”が稼働してるんだよ!?
「兄貴! この部屋暖炉がねぇもんで、あっしらであっためといておきやした!!」
「熱気循環完了ッス!!」
「おりゃああぁぁッ!」
体感温度、たぶん50度。ここ、寝室じゃなくて地獄の岩盤浴じゃねぇかッ!!
「ぬわああああッッ!! 暑いんだよおおおお!!!」
俺の絶叫が響く中――。
ベッドの上では、上半身裸のガウルとアヴィが、汗に濡れた肌をほのかに光らせながら、アンニュイに前髪をかき上げていた。
湯気のような熱気が立ちこめる部屋の中で、人気モデルのグラビア撮影みたいに見えるのが腹立つ。
「……元気そうだな」
「……ええ。やはり僕たちの献身という名の、愛の勝利ですね」
ちょ、待て待て!?
お前らヒーロー感出してるけど、俺、蒸し殺されかけてたんですけど!?!?
そしてその後、当然のように「みんな汗だくだし、風呂行くか!」という流れになり、
全員で風呂に突入――。
(いや、全員で!? 風呂に!? 入る必要ある!?!?)
完全に芋洗い状態。
湯船の中は、もはや筋肉と尻尾と獣耳のカオスフェスティバル。
俺はその混沌の中心で、ただ茫然と、筋肉の荒波に揉まれるしかなかった。
結局、あの寒気の原因も分からぬままだったが――
……けれど不思議なことに。
湯上がりの俺の身体は、妙に軽く、スッキリとしていて。
心も身体も、なぜか完全に“整った”のだった。
こうして――俺んち史上最大の“人力サウナ事件”は、
暑苦しさと蒸気と色気とカオスに塗れながら、華々しく幕を閉じたのだった。
なんかダルい。体が鉛みたいに重くて、頭もボーッとしている。
風邪か……いや、そんな単純な話じゃない気もする。自分のおデコや首に手を当ててみるけど熱はない。熱はないのに、全身を冷たい霧が包むように寒気が襲ってくる。
毛布に頭までぐるりとくるまって丸くなる。震えは止まらず、冷えた足先をこすり合わせ、手の指先に息を吹きかける。
(……ただの風邪? 本当にそうだよな……? でも、この寒気とだるさは普通じゃない気がする……)
俺の異変に気づいたのは、隣で寝ていたガウルだった。
「……おい、大丈夫か?」
「……うん、たぶん大丈夫。なんか風邪っぽいだけ……かも」
言葉にはしたものの、自分でもその確信は持てなかった。
ガウルは俺の額に手を当て、そのまま前髪をかき上げると、俺の額にガウルの額がぴったりとくっついた。
「……熱は無さそうだな」
「……うん、今はすごく寒い」
「これから上がるかもな」
ガウルはおもむろにシャツを脱ぎ捨てると、毛布の中に滑り込んできた。そのまま、俺を両腕でぎゅっと包み込み、柔らかくも弾力のある温かい胸板に顔をうずめる形になった。
「……少しはあったかいか?」
「……ありがと」
ガウルは毛布に隙間ができないように丁寧に整え、震える背中を大きな手でそっと撫でた。
(あー……なんだろ、あったかいし、めちゃくちゃ安心する……)
その温もりに包まれながら、俺は自然と力が抜け、冷えきった体がじんわりと解けていくのを感じた。
「……ご主人様、どうしたんですか?」
背中越しに、アヴィの囁き声が聞こえた。
ガウルが代わりに答える。
「寒気が止まらないらしい。具合が良くないみたいだ」
それを聞いたアヴィは、すかさず俺の背中にぴったり身を寄せ、毛布にくるまったガウルごと俺を後ろから抱きしめた。
「……気持ちが悪いな」
「そんなこと言ってる場合ですか。ご主人様を温めるのが先決でしょう」
その瞬間、クーが寝返りを打ったのか、ガウルの向こう側でベッドが軋む音が響いた。
「……えーっ、なんでガウルとアヴィが抱き合ってるの!?」
うん、クーの位置からだと、そう見えるよな。
――だが、すまん。今はツッコミを入れる余裕なんて、俺にはなかった。
「あっ、なーんだ、あいだにユーマがいたんだ! ビックリしたー! 二人が変な気でも起こしたかと思った……!」
「……おい、静かにしろ」
「クーさん、非常事態です。ご主人様の具合が悪そうです。2階から使ってない毛布を何枚か持ってきてくれませんか?」
「え!? 待って、すぐ持ってくるね」
「……ごめんな」
「いいから、寝てろ」
ほどなくして毛布を抱えたクーが戻ってきた。
「……ユーマ、大丈夫? 寒いの?」
「……震えは収まった。でも手足がまだ冷たい」
「毛布を掛けてください」
クーが毛布をかけてくれて、ガウルとアヴィも熱を逃さないように更に密着してきた。
毛布の中には、ガウルの温かい胸板とアヴィのやわらかな体温が、俺を包み込むように重なっている。
冷たかった手足も、じんわり温かさが染み渡って、体の奥から力が抜けていく。
俺は目を閉じたまま、小さく息をついた。
ガウルの大きな手が背中を撫で、アヴィの腕がそっと腰を支えてくれる。
毛布と人肌のぬくもりに包まれて、俺は深い呼吸と共に、少しずつ穏やかに眠りに落ちていった。
――あっつい……。
いや、暑いを通り越してもはや熱い、灼熱。
なにこれ、サウナ? 砂漠? 炎天下の車の中!?
汗で張り付いた前髪が鬱陶しい。
服もシーツも肌にべったり貼りついて、まるで蒸し器の中の点心状態。
「ぬわっっっちぃぃ……ッ!!」
あまりの蒸し暑さに、思わず毛布を蹴り飛ばし、反射的に上体を起こす。
――そして。目に飛び込んできた光景に、俺は固まった。
ライトとリーヤとリィノが、火鉢の上で真っ赤に石を焼いている。
その焼けた石を、クーが水を張った鍋の中へ――ポチャン。
瞬間、モワッと立ちのぼる灼熱の蒸気。
あっという間に部屋がサウナと化した。
そしてその横では、チビたちがなぜか腕立て伏せ、ダンベル、スクワット。
筋肉が湯気に霞みながら、リズムよく動いている。
……いや、待て。
なんで屋敷の寝室で“人体ボイラー式暖房システム”が稼働してるんだよ!?
「兄貴! この部屋暖炉がねぇもんで、あっしらであっためといておきやした!!」
「熱気循環完了ッス!!」
「おりゃああぁぁッ!」
体感温度、たぶん50度。ここ、寝室じゃなくて地獄の岩盤浴じゃねぇかッ!!
「ぬわああああッッ!! 暑いんだよおおおお!!!」
俺の絶叫が響く中――。
ベッドの上では、上半身裸のガウルとアヴィが、汗に濡れた肌をほのかに光らせながら、アンニュイに前髪をかき上げていた。
湯気のような熱気が立ちこめる部屋の中で、人気モデルのグラビア撮影みたいに見えるのが腹立つ。
「……元気そうだな」
「……ええ。やはり僕たちの献身という名の、愛の勝利ですね」
ちょ、待て待て!?
お前らヒーロー感出してるけど、俺、蒸し殺されかけてたんですけど!?!?
そしてその後、当然のように「みんな汗だくだし、風呂行くか!」という流れになり、
全員で風呂に突入――。
(いや、全員で!? 風呂に!? 入る必要ある!?!?)
完全に芋洗い状態。
湯船の中は、もはや筋肉と尻尾と獣耳のカオスフェスティバル。
俺はその混沌の中心で、ただ茫然と、筋肉の荒波に揉まれるしかなかった。
結局、あの寒気の原因も分からぬままだったが――
……けれど不思議なことに。
湯上がりの俺の身体は、妙に軽く、スッキリとしていて。
心も身体も、なぜか完全に“整った”のだった。
こうして――俺んち史上最大の“人力サウナ事件”は、
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