呪われた婚約者と結婚した話

よしゆき

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 そんな感じに二人の結婚生活は続いていった。勘違いが勘違いを生み、誤解に誤解を重ね、しかし互いに気づく事なく、だからこそ平和な日々が過ぎていく。
 二人が結婚して一月以上経った。
 クロエはサイラスと一緒にパーティーに参加する事になった。夫婦揃って公の場に出るのはこれがはじめてだ。
 パーティーに着ていくクロエのドレスはサイラスが決めた。ドレスだけでなく、アクセサリーも靴も髪型も全てサイラスのコーディネートだ。
 自分の隣を歩くならきちんと着飾れという事だろう。
 いつも地味なデザインの落ち着いた色のドレスしか着ないクロエが絶対に選ばないようなドレスが用意されていた。
 肩を出すタイプのドレスなど着た事がないので落ち着かない。色が淡いピンクなのもいたたまれない。いつも髪は下ろしているので、首筋を晒すような髪型も恥ずかしい。普段アクセサリーなんて身に付けないから、高価なネックレスもイヤリングも自分が身に付けているのが申し訳なくなる。
 何もかもが自分には似合わない。こんな格好で人前に出なければならないのかと思うと憂鬱な気持ちになってくる。
 部屋で項垂れているとドアがノックされた。返事をすれば、サイラスが入ってくる。彼はまたクロエが贈った眼帯をしていた。

「クロエ、準備は終わったか? ……っ」

 彼はクロエを一目見た瞬間、ハッと息を呑んだ。
 自分の選んだドレスをクロエが着ている事にサイラスは深く感動する。
 彼女に着てほしいと思うものを、彼女に似合うと思うものを選んだ。
 クロエの事は自分が一番よくわかっている。彼女を美しく輝かせられるのは自分だ。そんな思いから、ドレスやアクセサリーなど、時間をかけて全てを選びに選び抜いた。
 自分の目に狂いはなかったと、彼女を見てサイラスは実感する。ドレスもアクセサリーもクロエの美しさを引き立てている。
 もちろん着飾らなくとも、クロエはそのままでも充分だ。けれどサイラスならば、彼女の美しさをより一層引き立てさせられる。
 そんな彼女を自慢し、見せびらかしたかった。
 自分の妻は、こんなにも素敵なのだと。
 この素晴らしい女性が、自分の妻なのだと。
 自分の手で光り輝くクロエを見て、サイラスは内心ニヤニヤが止まらない。しかしそれを隠すために唇を強く引き結ぶ。
 ムスッとした彼の表情を見て、クロエは似合っていなくてガッカリしたのだろうと思った。折角用意してもらって申し訳ないが、どうしようもない。
 クロエを褒める言葉は頭の中に無限に湧き出るが口を開けばにやつきが抑えなれない。サイラスは顔を背ける。

「では、行こう」

 それだけ言ってサイラスは彼女に背を向け歩き出す。
 クロエは何も言わず彼の後に続いた。
 パーティー会場へは馬車で向かう。馬車の中、向かい合って座るサイラスはずっとクロエから顔を逸らしていた。きっと見たくもないのだろう。
 実際のところサイラスはじっくりしっかりクロエを見つめたかった。頭のてっぺんから爪先まで、余すところなく脳裏に焼き付けたいと思っていた。
 しかし彼女をまともに見たらどうしても脂下がっただらしない顔を晒してしまうのがわかっていたから見れなかったのだ。
 互いに無言のままパーティー会場に着いた。
 会場に入ると、サイラスの手が腰に回された。まさかそんな事をされるとは思わずクロエは戸惑う。距離が近すぎるのではないだろうか。彼にとって女性との距離間はこれが普通なのか。
 サイラスはクロエの腰にしっかりと腕を回し、周囲の男性に彼女は自分の妻なのだとアピールする。牽制しつつ自慢しながら、参加者に挨拶していった。
 その間、サイラスはアプローチするような女性達の視線を感じた。今は眼帯で醜く呪われた部分が隠れている。呪いの事を知らない女性も多くいる。
 クロエがプレゼントしてくれた眼帯はデザインがよく、ファッションとしてとても映えた。
 しかしこうしてサイラスに見惚れる女性達も、ひとたび眼帯を外せば恐怖に悲鳴を上げるのだろう。おぞましいものを見るような視線をサイラスに向けるのだ。
 そんな女性達にも、そんな女性達と遊びほうけていた自分にも嫌悪感が湧き、酷く冷めた気持ちになった。
 できる事ならやり直したいが、過去はどうにもならない。だからこれからは、後悔しない人生を送ろう。
 隣にいるクロエの事を思いながら、サイラスは笑顔でパーティー会場を回った。
 挨拶が一通り終わったところで、クロエは彼から離れた。化粧室に入り、息をつく。
 結婚前もそうだったが、結婚してからもサイラスは女性の視線を集めていた。
 一人になり、彼は今頃色んな女性と言葉を交わしている事だろう。きっと今夜はこの会場内で見つけた女性と一緒に過ごすはずだ。ならば自分は気を利かせて、そっと一人で帰るべきだろう。
 少し時間を置いてからクロエは会場へ戻った。遠くにサイラスの姿を見つけると、案の定彼は女性に囲まれていた。
 誰かに言伝てを頼み、彼に先に帰ったと伝えてもらおう。
 そう考えて辺りを見回した時、用意されている料理の数々が目に入った。
 ずっとサイラスに連れられるまま挨拶回りをしていて、きちんと会場内を見ていなかった。クロエは引き寄せられるようにそちらへ足を向ける。
 様々な種類のきらびやかな料理が並べられていた。
 そういえば、夕食を食べていない。今まで緊張していて感じていなかった空腹が急に襲ってきた。
 早く帰るべきなのはわかっているが、この誘惑には抗えない。デザートを少し食べるくらいなら大丈夫だろう。
 クロエは皿を手に取る。
 美味しそうなケーキがたくさんある。まずはガトーショコラ、それからシフォンケーキにロールケーキ、ブラウニーにレアチーズケーキ、パウンドケーキとタルト。食べやすいように小さく切って用意してあるので、たくさんの種類を楽しめる。
 どれも美味しくて空腹なのも相まって、気づけばもりもり食べまくっていた。
 その時、すぐ近くで笑い声が聞こえて我に返る。顔を上げれば、隣に見知らぬ男性がいた。服装からするに、彼も招待客だろう。
 クロエと目が合い、男性は漏れる笑いを押さえた。

「すみません、あなたがあまりにも美味しそうに食べるものだから……何だか微笑ましくてつい笑ってしまいました」
「いえ……こちらこそお見苦しいものをお見せして、すみません」

 うっかり夢中になってしまった事をクロエは反省した。パーティーの場で人目も憚らずばくばく食べるなんて淑女としてはしたない姿を晒してしまった。

「とんでもない。美味しそうに食べる女性は素敵ですよ」

 男性はにっこりと微笑む。気を遣わせてしまって申し訳ない。

「美味しそうに食べるあなたを見ていたら、私も食べたくなりました。あなたのおすすめはどれでしょう?」
「どれも美味しいですが、食べた中ではタルトが一番好きです」
「なるほど。確かに見た目も綺麗でフルーツたっぷりで美味しそうだ」
「是非食べてみてください」

 この男性も甘いものが好きなのだろう。そう思ってすすめれば、男性はじっとクロエを見つめてくる。

「ケーキも綺麗ですが、あなたもとても綺麗だ」

 いきなり褒められて、クロエはポカンとしてしまう。それからすぐに、社交辞令だと思い至る。慣れていないので即座に反応できなかった。

「そのドレス、素敵ですね。あなたによく似合っています」
「ありがとうござ……」
「クロエっ」

 お礼を言う途中で名前を呼ばれた。背後にサイラスがいて、腰に腕を回され引き寄せられる。

「どうしてすぐに俺のところへ戻ってこない? 何かあったかと心配するだろ」
「すみません」

 しまった、とクロエは思った。こっそり帰るつもりが、失敗してしまった。

「あの……」

 会話に割って入られた男性は気まずそうに立ち尽くしている。
 その男性に向かってサイラスは言う。

「ああ、バントックさん。先程、奥様が捜していましたよ」
「え、ああ、そうですか……」
「はい。では私達はこれで失礼します」

 サイラスは頭を下げ、クロエを連れてその場を離れる。そしてそのまままっすぐ会場の外へと向かう。

「サイラス様、どちらへ……?」
「帰る」
「えっ」

 思わず声を上げれば、サイラスに睨まれた。

「何だ? 君はまだここにいたい理由でもあるのか?」
「いえ、そういうわけではないです」

 ただ、サイラスと一緒に帰る事になると思っていなかったのだ。
 帰りの馬車で、彼は何故か隣に座る。クロエの腰に腕を回したまま。そして明らかに不機嫌だった。
 行きの馬車の中でもずっと顔を顰めていたが、ここまで怒りを露にはしていなかった。
 彼は今、確実に怒っている。クロエはひしひしとそれを感じた。
 本当は先に帰るべきだったのにクロエがいつまでも居座ってしまったから。さすがに妻がいる場所で女性を口説く事ができなかったのだろう。気の利かない女だと、腹を立てているに違いない。
 謝ろうかと悩んでいると、先にサイラスが口を開いた。こちらに顔を向けず、正面に視線を向けたまま。

「随分楽しそうに話していたな」
「え?」
「褒められて嬉しかったか?」

 彼はつまらなそうに言う。
 一瞬何の事かわからなかったが、先程バントックと呼ばれていた男性に言われた言葉を思い出す。
 サイラスは何が言いたいのだろう。社交辞令を真に受けて喜んでいるのかという皮肉だろうか。
 だとしたら何と答えるべきかと考えあぐねていると、サイラスは憮然とした顔で言う。

「君が綺麗なのは、俺が一番よくわかっている」
「…………」
「俺が一番最初に、誰よりも先にそう思っていたんだ」
「…………はあ」

 サイラスの言いたい事がますますわからない。

「俺が選んだドレスなんだ。君に似合うドレスを選んだんだ。そのドレスが似合うなんて、他の誰に言われなくても俺が最初にわかっていたんだ」
「…………そうですか」
「俺が…………俺が、言いたかったのに……」

 サイラスは独り言のように吐き捨てる。
 結局彼の言いたい事が何もわからないまま屋敷に着いた。サイラスはそれ以上何も言わず、クロエと彼はそれぞれ自室へと戻った。
 部屋に一人になり、サイラスは自己嫌悪に陥る。
 クロエは何も悪くないのに、八つ当たりのように彼女にきつい態度をとってしまった。
 悪いのは自分だ。いくらでも機会はあったのに、クロエに言えなかった。綺麗だと。素敵だと。似合っていると。言い慣れているはずの言葉が一言も出なかった。
 そして結局、他の男に先を越された。
 誰よりも自分が彼女に伝えたかったのに。あんな、たまたま同じパーティー会場にいただけの男に言われてしまうなんて。
 どうして一目見た時に言わなかったのだと深く後悔する。
 クロエ相手だとどうしてこうも調子が狂ってしまうのか。他の女性には何も考えずにできていた事が、クロエにはできない。
 緊張して、顔が熱くなって、心臓もバクバクして、まともに顔も見られなくなって、言いたい事も言えなくなってしまう。
 これが恋なのだ、とサイラスは思う。
 彼女だけが特別で、彼女といると今まで感じた事のない感情が湧き上がる。
 クロエだけは失いたくない。誰かを手放したくないと思うのははじめてだった。





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