呪われた婚約者と結婚した話

よしゆき

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 それからクロエは定期的に焼き菓子やケーキを作り、彼のところへ持っていった。そしてそれを一緒に食べるのが習慣になっていった。
 サイラスは本当に美味しそうに、笑顔で食べてくれる。そして言葉でも美味しいと伝えてくれる。
 思えば、自分の作ったものをこんな風に目の前で食べてもらうなんてはじめてだ。
 実家にいた頃、家族や使用人に食べてもらう事もあったが一緒に食べた事はない。彼のように「美味しい」と言ってくれた人もいない。クロエも感想を求めなかった。
 だから、自分が作ったものを美味しそうに食べてもらう事がこんなに嬉しいなんて知らなかった。
 今までは自分が食べたくて作るだけだった。でも今は、彼に喜んでほしくて作っている。誰かのために作るのもはじめてだった。
 サイラスが嬉しそうに顔を綻ばせれば、クロエも嬉しくなって自然と口に笑みが浮かんだ。
 いつしか、彼に名前を呼ばれるとドキドキするようになっていった。彼の笑顔を見るとドキドキして、彼に見つめられるとドキドキする。彼の手が自分の手に触れるとドキドキして、肩が触れ合うほどの距離の近さにドキドキする。
 いつの間にか、彼と同じベッドで眠る事に緊張するようになっていた。
 そんな落ち着かない日々を過ごしていたある日。サイラスは友人と約束があると言って屋敷を出ていった。
 その為、週末はいつも彼とデートをしていたが、久しぶりに予定が空いた。と言っても、クロエは特にする事もない。
 そういえば、母から手紙が届いていた事を思い出す。事務的な近況報告の手紙なので急ぐ事はないと返事を後回しにしていたが、時間のある時に書いてしまおう。
 そう考えて引き出しを開けて、便箋の残りが少ない事に気づいた。そういえば街に出た時に買ってこようと思っていたのだった。
 今日は外出するつもりはなかったが、必要な時に切らしてしまっても困るのでクロエは便箋を買いに行く事にした。
 こういう雑務は使用人に頼んでもいいのだが、忙しいわけでもないのにわざわざ人に頼む事ではない。早速身支度を整え、クロエは外に出た。
 いつも行っている雑貨屋へまっすぐに向かう。店内で目当てのものはすぐに見つかった。購入し、店を出る。
 そのまま帰ろうかと思ったが、ふと目に入った本屋に足を踏み入れた。お菓子作りの本を見る。
 クロエに作れるお菓子の種類は決して多くはない。そろそろレパートリーが尽きそうだった。
 本を手に取ってみると、珍しいお菓子や見た目の可愛らしいお菓子など色々な種類のお菓子のレシピが書かれている。
 今度はこれを見て作ってみよう。そう思い、クロエは数冊選んで本を購入した。
 今度こそ帰ろうかと思ったが、折角街に出てきたのなら屋台にも寄っていこうか。そんな事を考えながら歩いていると、遠くにサイラスの姿を見つけた。
 彼は一人ではなく、女性と一緒に歩いていた。サイラスはその女性と、迷いのない足取りでホテルに入っていった。
 彼は友人と会うと言って出ていった。性別は聞いていない。あの女性が、サイラスの友人なのだろうか。
 でも、ホテルに入っていった。女性の友人と、ホテルに?
 二人でホテルに入るような、そういう間柄の女性の友人なのか。
 それとも、友人というのが嘘だったのか。
 彼が嘘をついたとは思いたくない。でも、もし本当に友人だとしても、二人きりでホテルに入る、つまり肉体関係のある友人だという事なのかもしれない。
 クロエは考えるのをやめ、その場を離れた。そしてそのまままっすぐ、屋敷に帰った。
 母への手紙の返事を書き、それが終われば別の事をして、何も考えられないようにする。
 サイラスはなかなか帰ってこなかった。クロエの夕食が終わる頃、漸く帰宅した。
 彼の態度はいつもと何も変わらない。彼にとっては女性とホテルに入る事など何でもないのだ。それはそうだろう。彼が今まで何人の女性と遊んできたのか、数えれば両手では足りないはずだ。
 いつもなら寝室に入っている時間になっても、クロエは自室から動けなかった。どうしても、寝室に行く気になれない。
 クロエは庭に出る事にした。夜風に当たって、気持ちを落ち着かせようと思った。
 誰もいない庭は静かで、クロエはベンチに座り息をつく。
 思い出さないようにしても、どうしてもサイラスが女性とホテルに入っていく光景が脳裏を過る。
 女性は後ろ姿しか見えなかったが、きっと華やかで綺麗な女性なのだろう。クロエとは正反対の。
 そんな事を考えると、胸に痛みが走った。
 ズキズキと、胸が痛む。
 クロエは自分がショックを受けているのだと気づいた。そしてショックを受けている自分に驚く。
 彼がどこで何をしようと干渉するつもりはないし、関心もなかったはずだ。前までずっと、彼は他の女性のところで一夜を過ごしていると思っていた。その時は何も感じなかった。興味もなかった。
 でも今、確かに自分は悲しいと思っている。
 それはどうしてなのか。
 きっと、自分の気持ちが変化したからだ。
 自覚した瞬間、ポロリと涙が零れた。
 悲しい。自分は悲しんでいる。
 サイラスが、女性とホテルに入っていった。
 その事実が、ただただ悲しい。
 涙が溢れて止まらなくなる。胸がぎゅうっと締め付けられるように痛い。
 サイラスにとっては、何でもない事なのかもしれない。でもクロエにとっては、苦しくて堪らない事だ。
 この気持ちを、どうすればいいのだろう。
 わからない。
 彼にぶつければいいのか。胸に秘めておくべきなのか。
 こんな気持ち持て余すばかりで、クロエはどうすればいいのかわからない。だってはじめてなのだ。こんなに心を揺さぶられるような感情を抱くのは。
 だから、考えてもわからない。
 とりあえず涙が止まるまでクロエはじっとしていた。
 涙がおさまり心もどうにか落ち着けて、クロエは庭から離れ屋敷の中に戻ろうとした。
 その時、ドアから血相を変えたサイラスが飛び出してきた。彼はそのまま門へと走っていく。
 あまりの勢いにクロエは呆然と彼の後ろ姿を見送る。
 あんなに急いで、こんな時間にどこへ行くのだろう。ひょっとして、あの女性のところだろうか。今夜は彼女と一緒に過ごすという事だろうか。
 そう考えると、おさまったはずの涙がまた込み上げてきそうになる。
 しかしサイラスは門を出る前にピタリと足を止め、体ごとこちらを振り返る。
 そしてクロエの姿を目に映し、こちらへ駆け寄ってきた。

「クロエっ……!! 良かった、こんなところにいたのか……!!」

 サイラスは泣きそうな顔でクロエの肩を掴む。

「待っていても全然寝室に来ないし、部屋を訪ねてもいなかったからっ……クロエがどこかへ行ってしまったのかと……っ」

 どうやらとても心配させてしまったようだ。冷静さを失くして半ば衝動的に外に出たのだ。もちろん誰にも言っていないし、置き手紙も残していない。彼が不安に思うのも当然だろう。

「すみません、少し夜風に当たろうと庭にいたんです……。黙って出てきてしまって申し訳ありません」
「いや、いいんだ。俺が早とちりをして……危なく外に捜しに出るところだった……」

 そこでサイラスはハッと目を見開く。

「クロエ……泣いていたのか……?」

 クロエの涙の跡に気付き、サイラスは蒼白になる。

「どうしたっ!? 何があったんだ……!? 誰かに何かされたのか!?」
「い、いいえ、何も……」
「っ、まさか……俺か……? 俺が君を傷つけるような事を……?」
「これは……あの……」
「言ってくれっ……。俺が何か君を傷つけるような事をしてしまったのなら……。いや、今まで散々最低な事をしてきたくせに何を言ってるんだという感じだが……もし俺が何かしてしまって、自分でそれに気づいていないなら、俺は自分が許せないっ……。だから、お願いだ、クロエ……っ」

 サイラスは真剣な眼差しで切実に訴えてくる。
 適当に誤魔化す事も、何も言わずにやり過ごす事もクロエにはできなかった。
 二人で屋敷の中に戻り、寝室に入る。ソファに座り、クロエは躊躇いがちに口を開いた。

「……私、今日、買う物があって街に出たんです」
「そうなのか」
「はい。……それで、サイラス様をお見かけして……。その……女性とホテルに入っていくのを見ました」
「! 違うんだ!!」

 サイラスは叫ぶように言った。

「あいつは学生時代の友人で、男なんだ!!」
「…………」
「今は離れた街に住んでいるんだが、探偵をやっていて仕事でこっちに来ていて、変装する必要があって女性の格好をしていて、一緒に入ったホテルは今そいつが泊まっているホテルで、ホテルのレストランで食事をするために入ったんだ!!」

 一気に言い切った後、サイラスは愕然とした様子で頭を抱える。

「って、めちゃくちゃウソくさい!! どう考えても浮気を下手なウソで誤魔化しているようにしか聞こえない!!」
「お、落ち着いてください、サイラス様……」
「待ってくれ、ちゃんと紹介する、今すぐあいつのところへ行こう! 今なら部屋にいるはずだ!」
「ええっ……」
「いや、もう外は真っ暗だ……クロエをホテルまで出歩かせるわけにはいかない……。ホテルに電話して、あいつに繋いでもらおう! そしてあいつにここまで来てもらってちゃんと説明させるんだ!」

 本当に電話をかけに行こうとする彼をクロエは止める。

「待ってください、いけません、こんな遅い時間にそんな……」
「だって、クロエに誤解されたままなんてイヤだ! 浮気だと思われたくない!」
「大丈夫です、わかりましたから」
「信じるのか、クロエ……?」
「もちろんです。だって本当の事なのですよね?」
「本当だが……。俺だったらあんな説明絶対に信じない……。ウソくさ過ぎて、もっと上手いウソをつけないのかと詰っていただろう……」
「私は、ウソだなんて思っていませんから……」
「クロエ……」

 クロエが宥めれば、サイラスは感動したように瞳を潤ませた。

「でも、やっぱりあいつには会ってもらえるか……? 俺はちゃんと証明したい。女性とホテルに入ったんじゃなく、男友達とホテルのレストランに行ったんだって。今すぐじゃなくて、日を改めて。あいつはまだ暫くこの街に滞在すると言っていたから」
「わかりました」

 懇願するように言われ、クロエは頷いた。

「すみません、私、勘違いしてしまって……」
「謝らないでくれ。そんなところを見たら、勘違いするのは当然だ。寧ろ誤解されるような行動を取ってしまった俺が悪い」
「いいえ、そんな……。サイラス様はただご友人と会っていただけですから」
「いや、女性の格好をした友人と二人で歩いていたら周りからどう見られるのか、俺がちゃんと考えて行動していれば……」

 そこでサイラスははた、と何かに気づいたように言葉を止める。

「……ちょっと待ってくれ、今の話って関係あるのか?」
「え?」
「クロエが泣いていた事と、何か繋がりが……?」

 サイラスは神妙な顔で訊いてくる。
 サイラスが女性とホテルに入っていった。その事実にクロエが泣いていたなんて思いもしていない様子だ。
 それはそうだろう。クロエは以前、サイラスは他の女性のところで夜を過ごしていると勘違いし、それを嘆きもせず平然と受け入れていたのだから。
 その事をサイラスは知っている。だからそれがクロエが泣いていた理由だと、彼の中では繋がらない。
 正直に伝えなくては……とクロエは思った。
 思ったけれど、なかなか言葉が出てこない。
 自分の気持ちを伝える事がこんなに勇気のいるものなのだとはじめて知った。
 ぎゅっと掌を握り、クロエは口を開く。

「私が泣いていたのは、サイラス様が女性とホテルに入っていったのだと思ったからです……」
「え……?」
「サイラス様とその女性が、親密な関係なのだと思って……そう考えたら悲しくて……それで泣いていました……」

 頬を赤く染めてたどたどしくも説明するクロエを見つめ、サイラスは大きく目を見開く。

「それって……」

 呆然と呟き、それからクロエの言葉がじわじわと脳に浸透していく。頬に熱が上り、口元がにやけそうになる。サイラスはバチーンッと叩くような勢いで口を手で覆った。
 クロエはぎょっとする。

「サイラス様……!?」
「すまない……クロエを悲しませ、泣かせて……それなのに、喜んでしまって……。嬉しいと、思ってしまって……」

 サイラスはこうして、クロエの言動で喜んだり悲しんだりする。
 それが嬉しい。
 前までクロエは、彼に何を言われても喜ぶ事も悲しむ事もなかった。
 でも、今は違う。
 彼と同じように、彼の言動に喜んだり悲しんだりしている。

「私はじめてなんです、こんな気持ちになるの……。でもきっと、この気持ちが好きって事だと思うんです……」

 クロエはまっすぐにサイラスを見つめた。熱を帯びた彼の瞳と目が合う。

「私、サイラス様が好きです」

 はにかみながら伝えれば、彼は顔を真っ赤に染めた。

「俺もっ……俺も好きだ! 大好きだ、クロエ!」

 クロエはにっこりと、輝くように微笑んだ。





 後日クロエはサイラスと共に彼の友人のところへ足を運び、しっかりと紹介された。クロエは疑っていたわけではないが、サイラスはきちんと証明できた事にとても満足そうにしていた。





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