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5.魔王城アカデミー
11話
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その日の午後、シオンは魔王城の地下へと向かっていた。
つい最近まで地下室の存在を知らなかったが、今日はそこに用事がある。
長い廊下を歩いて、滅多に開かれない重たいドアを開ける。
ギギ、と軋んだような音を立てながらゆっくりとドアが動き、地下へと続く空間を思わせるひんやりとした空気が僅かに流れた。
長い間主を失っていたその空間に、ようやく明かりが灯されるようになって数日。
薄暗さはあるものの、地下へ続く階段は綺麗に掃き掃除され、光を宿すランプの油も新品に交換されている。
コツ、コツと、地下へ続く通路の壁に反響して靴音が響く。
それから少し歩いたところに、ドアがひとつ。
シオンはそのドアをノックして、中へと呼びかけた。
「シンシアさん、いらっしゃいますか?」
返事の代わりに、にゃーんという鳴き声が返ってくる。
「入りますね」
そろっとドアを開けると、足元にすかさず黒猫がすり寄ってくる。
最初は恐ろしいと感じるところもあったが、こうして顔を寄せてくる姿はどうやっても愛くるしい。
ぐるぐると鳴るあごの下を何度か撫でてやってから、シオンは部屋の奥へと向かった。
陰鬱な空気が漂っていた崖の上の洋館とは異なり、この地下の研究施設はこざっぱりとしている。
地下室の大半は研究施設にスペースを割いているが、その一部を改装してシンシアが私室として利用しているらしい。
荷物がまさに運び込まれたばかり、という様子だが、全体的にがらんとしていて物寂しさがあるのだ。
地上の光を取り入れられる窓の近くに、小さなテーブルセットが佇んでいる。
その上には、カップがふたつ。
シオンが来る前に、誰かがここを訪ねていたのだろうか。
「あら、お嬢さん」
艶を放つような声。
「シンシアさん、お邪魔しています」
そこには、丈の短い漆黒のワンピースの上から白衣を纏ったシンシアの姿があった。
(わあ、刺激的!)
タイトな生地が、彼女の豊満なボディラインを引き立てている。
シオンは自分の貧相な体を思い出して、なんだかいたたまれない気持ちになった。
「その後、変異モンスターの解析はどうかなと思いまして」
シオンの問いに、シンシアは気だるげな返事を返した。
「んー……そうねえ……蜘蛛の時もそうだけど、サンドワームのほうも結構雑な仕事をしているっていう印象ね」
私ならやらないわ、と言ってシンシアはフンと鼻を鳴らした。
彼女なりの美学に、何か反するところがあったのだろうか。
「雑、というと?」
「お嬢さんも言ってたけれど、蜘蛛に関しては変異が強すぎて体のバランスが崩れていたし……サンドワームの中、開けてみたけど、自分の毒で体を中から焼かれてる状態だったわよ」
中から焼かれる、という言葉にシオンは思わずぞっとした。
妙に狂暴で、傷を負わせても行動を止めなかったという証言もある。
もしかしたら、体内が毒素で汚染されているせいで暴れていたのかもしれない。
「こんな雑なやりかた、冗談でも私に疑いが向いたなんて失礼も甚だしいわよ」
シンシアは憮然とした表情で腕組みをした。
「面白そうなパーツを、とりあえずくっつけてみただけ、っていう感じ。適合するかは運だから、失敗も相応に発生してるでしょうね」
その目には侮蔑の色が滲んでいて、やはり彼女はマッドサイエンティストではなく医者なのだ、と感じさせる。
にゃあ、と鳴いてシンシアの方へと黒猫が駆け寄った。
この猫も、恐らくは彼女に命を救われた存在なのだろう。
「他の地域からも、別の変異体のうわさが聞こえてきているんです」
「そうでしょうね。この手の研究、やめ時が見つからないのよ。くじ引きみたいなものだもの」
美しくないわ、と頬を膨らませて、シンシアは猫を抱き上げた。
やめ時が見つからない、という言葉が、シオンの心に影を落とす。
変異体の出没が頻発するようになったら、世界はどうなってしまうのだろうか。
あの時、レヴィアスが背中に負った傷を思い出す。
手を伝った血の温かさと、青ざめていく彼の顔が頭の隅にこびりついて離れない。
「愉快犯か、何らかの思想を持っての行いなのか、半々ってところね」
「……目的があるとして、それは何なんでしょう」
「それを調べるのは私の仕事じゃないわよ。でも……」
ん、と赤く染まった唇を小さくとがらせ、シンシアが少し考える。
彼女の胸元で猫があくびをひとつ。
「単純に生物兵器として……もしくは、換金目的か、技術をもっと高等な生物に適用するための準備段階か……」
宙を見るような目をしながら、シンシアがブツブツと小さく呟く。
これは恐らくシンシアの癖なのだろう。
早すぎる思考が、口元から溢れるように流れ出る。
「もっと高等な生物……ですか」
ぞわ、と鳥肌が立つのを感じながら、シオンが呟いた。
「これまで見つかったのはサンドワームと蜘蛛でしょう? どちらも生物としては割と単純にできていて、自己修復力も高い。多少うまく適合しなくてもなあなあで生きてはいけそうな部類なのよ」
確かに、言われてみればその通りだ。
そして、次に噂が聞こえてきたのはパイロリザード。
彼らもまた、自己修復力が高い。
そして、サンドワームや蜘蛛と比較すると、シンシアが言う『高等な生物』に近づいているような気がする。
シオンはこわごわとシンシアへ問いかける。
「もし仮に、最終的な目標が人間や魔物に対する技術の適用なのだとしたら……?」
「まあ、出来なくはないでしょうね。……例えば、私がオリヴィエに施した手術のように。実際はもっと、大がかりでしょうけれど」
シンシアは自嘲気味に笑った。
人間や、魔物が、変異させられてしまう可能性がある。
それは想像しただけでひどく恐ろしく、シオンは恐怖に押し黙ってしまった。
「ありがとうございます。パイロリザードの件は討伐の運びになった際、改めて話をさせてください」
「はいはい、でもどこまで手伝うかは、私が決めることだからね」
少し鬱陶しそうな顔をされて、シオンは苦笑いする。
シンシアと猫に挨拶をして、足早に地下室を後にした。
「ふう……」
地上に戻り、シオンは食堂で貰ったオレンジジュースを飲みながら、ぷらぷらと魔王城内の広場を散歩していた。
ふと、以前カイレンに教えてもらったとっておきのビュースポットを思い出して、足を向ける。
ジュース一杯分の休憩をしよう、という気持ちになれたのは、最近のシオンにとっては大きな進歩だ。
人通りの多い道を抜け、食用の果樹が立ち並ぶエリアへと向かう。
作業中の小休憩用に設置されたものだろうが、小さなベンチとテーブルがいくつか並んでいる。
シオンはよいしょとそのベンチに腰かけて、伸びをした。
まだ色づく前の、青いリンゴの実がぽつぽつと木になっている。
時折聞こえる、プン、という蜂の羽音が、静寂に少しのアクセントを加えてくれた。
「やあ、昨日あんなことがあったのに不用心だね」
背後から突然声をかけられて、シオンはビクリと肩を震わせた。
振り返らなくてもわかる。
甘やかなこの声の持ち主は、ひとり。
「エリオルさん……」
名前を呟くと、エリオルはふわりと微笑んだ。
昨日見た狂気とは全く結びつかない、華やかで、清らかな笑顔だ。
今は、とにかくその美しさが恐ろしい。
思わずシオンはベンチから腰を上げ、ぎゅっと両手を握りしめてエリオルと向かいあった。
「なぜ魔王城に出入りを?」
「魔王には客として迎えられているよ。僕には天界とのパイプ役としての利用価値があるからね」
天界。
つまりは、天使が住まう、地上とは離れたところに存在する場所のことだと聞いた。
それでも、昨日のノイルの様子を思い出すと、こうも頻繁に魔王城に顔を出す理由がわからない。
まさか、本当に今でもレヴィアスの命を狙っているのだろうか?
警戒心をむき出しにして、シオンはぐっと身構えた。
「大丈夫、昨日と今日の目的は君じゃない」
エリオルが目を細めてニコリと笑った。
その言葉を信じていいのかどうかも、もはや疑わしい。
瞳の奥は、こちらをじっととらえて微動だにしていないのだから。
「シンシアが魔王城に戻ったと聞いたからね、挨拶に来たのさ」
シンシアの研究室に置かれていたふたつのカップと繋がった。
彼女が会っていたのは、エリオルだったのか。
思えば、港町で初めて出会った時もエリオルはオリヴィエの研究ノートを持っていた。
「シンシアさんとはお知り合いなんですか」
「オリヴィエの研究のファン、って言っただろう? あれは勿論本当、だからシンシアともぜひ話がしたかった」
エリオルは医学に興味があるということだろうか。
深く聞きたいような気もするが、このままふたりで会話をしていて良いのか、とシオンの頭の中で警鐘が鳴る。
「……心配しなくても、今、レヴィアスを殺すつもりはないよ」
エリオルは、シオンの目を見てそう囁いた。
真っすぐに見据えられて、シオンは思わず目を泳がせる。
「昨日は急に腕を掴んだりしてごめんね。仲直りをしよう」
奇妙なほど明るい口調で、エリオルはシオンに語り掛ける。
言い知れぬ恐怖に、シオンはその場から逃げだそうと後ずさりした。
それを許さない、というように、エリオルは言葉をつづけた。
「お詫びに、君が知らない、僕とレヴィアスのお話をしよう」
エリオルは流れるような所作で、シオンにベンチへと座る様に促す。
シオンは口を引き結んで、静かにベンチへと腰かけた。
つい最近まで地下室の存在を知らなかったが、今日はそこに用事がある。
長い廊下を歩いて、滅多に開かれない重たいドアを開ける。
ギギ、と軋んだような音を立てながらゆっくりとドアが動き、地下へと続く空間を思わせるひんやりとした空気が僅かに流れた。
長い間主を失っていたその空間に、ようやく明かりが灯されるようになって数日。
薄暗さはあるものの、地下へ続く階段は綺麗に掃き掃除され、光を宿すランプの油も新品に交換されている。
コツ、コツと、地下へ続く通路の壁に反響して靴音が響く。
それから少し歩いたところに、ドアがひとつ。
シオンはそのドアをノックして、中へと呼びかけた。
「シンシアさん、いらっしゃいますか?」
返事の代わりに、にゃーんという鳴き声が返ってくる。
「入りますね」
そろっとドアを開けると、足元にすかさず黒猫がすり寄ってくる。
最初は恐ろしいと感じるところもあったが、こうして顔を寄せてくる姿はどうやっても愛くるしい。
ぐるぐると鳴るあごの下を何度か撫でてやってから、シオンは部屋の奥へと向かった。
陰鬱な空気が漂っていた崖の上の洋館とは異なり、この地下の研究施設はこざっぱりとしている。
地下室の大半は研究施設にスペースを割いているが、その一部を改装してシンシアが私室として利用しているらしい。
荷物がまさに運び込まれたばかり、という様子だが、全体的にがらんとしていて物寂しさがあるのだ。
地上の光を取り入れられる窓の近くに、小さなテーブルセットが佇んでいる。
その上には、カップがふたつ。
シオンが来る前に、誰かがここを訪ねていたのだろうか。
「あら、お嬢さん」
艶を放つような声。
「シンシアさん、お邪魔しています」
そこには、丈の短い漆黒のワンピースの上から白衣を纏ったシンシアの姿があった。
(わあ、刺激的!)
タイトな生地が、彼女の豊満なボディラインを引き立てている。
シオンは自分の貧相な体を思い出して、なんだかいたたまれない気持ちになった。
「その後、変異モンスターの解析はどうかなと思いまして」
シオンの問いに、シンシアは気だるげな返事を返した。
「んー……そうねえ……蜘蛛の時もそうだけど、サンドワームのほうも結構雑な仕事をしているっていう印象ね」
私ならやらないわ、と言ってシンシアはフンと鼻を鳴らした。
彼女なりの美学に、何か反するところがあったのだろうか。
「雑、というと?」
「お嬢さんも言ってたけれど、蜘蛛に関しては変異が強すぎて体のバランスが崩れていたし……サンドワームの中、開けてみたけど、自分の毒で体を中から焼かれてる状態だったわよ」
中から焼かれる、という言葉にシオンは思わずぞっとした。
妙に狂暴で、傷を負わせても行動を止めなかったという証言もある。
もしかしたら、体内が毒素で汚染されているせいで暴れていたのかもしれない。
「こんな雑なやりかた、冗談でも私に疑いが向いたなんて失礼も甚だしいわよ」
シンシアは憮然とした表情で腕組みをした。
「面白そうなパーツを、とりあえずくっつけてみただけ、っていう感じ。適合するかは運だから、失敗も相応に発生してるでしょうね」
その目には侮蔑の色が滲んでいて、やはり彼女はマッドサイエンティストではなく医者なのだ、と感じさせる。
にゃあ、と鳴いてシンシアの方へと黒猫が駆け寄った。
この猫も、恐らくは彼女に命を救われた存在なのだろう。
「他の地域からも、別の変異体のうわさが聞こえてきているんです」
「そうでしょうね。この手の研究、やめ時が見つからないのよ。くじ引きみたいなものだもの」
美しくないわ、と頬を膨らませて、シンシアは猫を抱き上げた。
やめ時が見つからない、という言葉が、シオンの心に影を落とす。
変異体の出没が頻発するようになったら、世界はどうなってしまうのだろうか。
あの時、レヴィアスが背中に負った傷を思い出す。
手を伝った血の温かさと、青ざめていく彼の顔が頭の隅にこびりついて離れない。
「愉快犯か、何らかの思想を持っての行いなのか、半々ってところね」
「……目的があるとして、それは何なんでしょう」
「それを調べるのは私の仕事じゃないわよ。でも……」
ん、と赤く染まった唇を小さくとがらせ、シンシアが少し考える。
彼女の胸元で猫があくびをひとつ。
「単純に生物兵器として……もしくは、換金目的か、技術をもっと高等な生物に適用するための準備段階か……」
宙を見るような目をしながら、シンシアがブツブツと小さく呟く。
これは恐らくシンシアの癖なのだろう。
早すぎる思考が、口元から溢れるように流れ出る。
「もっと高等な生物……ですか」
ぞわ、と鳥肌が立つのを感じながら、シオンが呟いた。
「これまで見つかったのはサンドワームと蜘蛛でしょう? どちらも生物としては割と単純にできていて、自己修復力も高い。多少うまく適合しなくてもなあなあで生きてはいけそうな部類なのよ」
確かに、言われてみればその通りだ。
そして、次に噂が聞こえてきたのはパイロリザード。
彼らもまた、自己修復力が高い。
そして、サンドワームや蜘蛛と比較すると、シンシアが言う『高等な生物』に近づいているような気がする。
シオンはこわごわとシンシアへ問いかける。
「もし仮に、最終的な目標が人間や魔物に対する技術の適用なのだとしたら……?」
「まあ、出来なくはないでしょうね。……例えば、私がオリヴィエに施した手術のように。実際はもっと、大がかりでしょうけれど」
シンシアは自嘲気味に笑った。
人間や、魔物が、変異させられてしまう可能性がある。
それは想像しただけでひどく恐ろしく、シオンは恐怖に押し黙ってしまった。
「ありがとうございます。パイロリザードの件は討伐の運びになった際、改めて話をさせてください」
「はいはい、でもどこまで手伝うかは、私が決めることだからね」
少し鬱陶しそうな顔をされて、シオンは苦笑いする。
シンシアと猫に挨拶をして、足早に地下室を後にした。
「ふう……」
地上に戻り、シオンは食堂で貰ったオレンジジュースを飲みながら、ぷらぷらと魔王城内の広場を散歩していた。
ふと、以前カイレンに教えてもらったとっておきのビュースポットを思い出して、足を向ける。
ジュース一杯分の休憩をしよう、という気持ちになれたのは、最近のシオンにとっては大きな進歩だ。
人通りの多い道を抜け、食用の果樹が立ち並ぶエリアへと向かう。
作業中の小休憩用に設置されたものだろうが、小さなベンチとテーブルがいくつか並んでいる。
シオンはよいしょとそのベンチに腰かけて、伸びをした。
まだ色づく前の、青いリンゴの実がぽつぽつと木になっている。
時折聞こえる、プン、という蜂の羽音が、静寂に少しのアクセントを加えてくれた。
「やあ、昨日あんなことがあったのに不用心だね」
背後から突然声をかけられて、シオンはビクリと肩を震わせた。
振り返らなくてもわかる。
甘やかなこの声の持ち主は、ひとり。
「エリオルさん……」
名前を呟くと、エリオルはふわりと微笑んだ。
昨日見た狂気とは全く結びつかない、華やかで、清らかな笑顔だ。
今は、とにかくその美しさが恐ろしい。
思わずシオンはベンチから腰を上げ、ぎゅっと両手を握りしめてエリオルと向かいあった。
「なぜ魔王城に出入りを?」
「魔王には客として迎えられているよ。僕には天界とのパイプ役としての利用価値があるからね」
天界。
つまりは、天使が住まう、地上とは離れたところに存在する場所のことだと聞いた。
それでも、昨日のノイルの様子を思い出すと、こうも頻繁に魔王城に顔を出す理由がわからない。
まさか、本当に今でもレヴィアスの命を狙っているのだろうか?
警戒心をむき出しにして、シオンはぐっと身構えた。
「大丈夫、昨日と今日の目的は君じゃない」
エリオルが目を細めてニコリと笑った。
その言葉を信じていいのかどうかも、もはや疑わしい。
瞳の奥は、こちらをじっととらえて微動だにしていないのだから。
「シンシアが魔王城に戻ったと聞いたからね、挨拶に来たのさ」
シンシアの研究室に置かれていたふたつのカップと繋がった。
彼女が会っていたのは、エリオルだったのか。
思えば、港町で初めて出会った時もエリオルはオリヴィエの研究ノートを持っていた。
「シンシアさんとはお知り合いなんですか」
「オリヴィエの研究のファン、って言っただろう? あれは勿論本当、だからシンシアともぜひ話がしたかった」
エリオルは医学に興味があるということだろうか。
深く聞きたいような気もするが、このままふたりで会話をしていて良いのか、とシオンの頭の中で警鐘が鳴る。
「……心配しなくても、今、レヴィアスを殺すつもりはないよ」
エリオルは、シオンの目を見てそう囁いた。
真っすぐに見据えられて、シオンは思わず目を泳がせる。
「昨日は急に腕を掴んだりしてごめんね。仲直りをしよう」
奇妙なほど明るい口調で、エリオルはシオンに語り掛ける。
言い知れぬ恐怖に、シオンはその場から逃げだそうと後ずさりした。
それを許さない、というように、エリオルは言葉をつづけた。
「お詫びに、君が知らない、僕とレヴィアスのお話をしよう」
エリオルは流れるような所作で、シオンにベンチへと座る様に促す。
シオンは口を引き結んで、静かにベンチへと腰かけた。
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