どんなものでも燃やす男とどんなものでも凍らせるロリ、そんな二人のイチャイチャスローライフ

劇場版俺

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一章

七話

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「シルド・ローシュタインンンンンンンン!!」


 「!? び、ビックリした。ってなんだあんた戻ってきたのか。あれ、カレンは?」


 「貴様のようなカスがっ! カレン様の名前を口にするな!!」


 窓際でカレンの帰りを待ちわびていたシルドに対して、フレイアは感情の矛先を全て向けた。


 「どうしたんだよそんな怒り散らして? も、もしかしてカレンがなんか酷いことでも言ったか? それだったら謝るよ、あいつのたまに出る余計な一言は容赦がないからさ」


 「だまれだまれだまれぇぇ!! 貴様をっ!」


 瞬間、フレイアの体から高濃度の魔力のオーラが放出され始めた。


 「! お前なにをするつもりだ!」


 「殺すゥゥゥゥ!」


 放出された魔力が、一つの塊となりそれは荒れ狂う水の巨大な弾丸となった。


 だが、それは僅か一秒足らずに消え失せた。


 一度放てば止まることのない憎悪の弾丸は、まるでシャボン玉のように、姿形無く消失したのだ。


 正しくは、焼失したのだった。


 「うそでしょ……」


 フレイアは自分自身の全てを込めた弾丸が消えたことが余りにも衝撃的で我に返った。


 「テメェ……マジでどういうつもりだ」


 「ヒッ……!」


 強いて例えるのであればそれは蛇に睨まれた蛙、とでも言うべきなのだろう。一度正気になったフレイアに、殺意を引っ込めてしまったフレイアに、向けられた本物の殺意。


 それはフレイアの戦意を消失、もとい焼失させるには十分だった。


 けれどフレイアは臆したそのひ弱な精神力ながらも、一歩も引き下がることはしなかった。


 何故なら、憎悪に潰されたその心の隙間には、かつてのカレンがいたからだ。


 その記憶だけで、フレイアは立っていた。そこにいたのだ。


 「詳しくは知らないけれど、とにかくだ」


 再びシルドは殺意を込めた視線でフレイアを直視した。


 「燃やされたいのなら、遠慮なくやるぞこの野郎」


 「やれるものならば、やってみよ! 炎魔法の貴様が、水魔法の私に勝てるわけがないのだから」


 フレイアは、引き下がらない。ここで引き下がったら、カレンを思う気持ちを捨て去ったも同然になってしまうのだから。


 「……テメェ相当な阿呆だな」


 「なんだと貴様! もう一度言ってみろ!!」


 「……これ以上は目立つ。場所を変えるぞ着いてこい」


 シルドは借宿の裏側、つまりはこの名も無き村の更に奥。山の頂上へ向かった。


 「ここなら、被害もそんなでないだろう」


 「貴様が周囲の事を気にするとはな、かつては我らが青の国を燃やした張本人だろうに」


 「……それは昔の俺だろうが、今の俺はそんなことしない。もっとも、村から離れたのはあれ以上事がでかくなるのを避けるためだ。テメェを燃やすのに、俺は一秒だって掛かりはしないからな」


 「戯言を抜かすなシルド・ローシュタイン!!」


 再び水の弾丸が生成される。サイズこそ小さいが、弾の総数は遥かに増加していた。


 「私の水の弾丸は、貴様ら炎の魔法師を殺し尽くす為の魔法だ! 防げるのであれば防いでみろ!!」


 「防ぐっていうのは、違うな。おいテメェ、一つ質問だ」


 「死ね! シルドォォォ!」


 「その弾丸……」


 無数の水の弾丸が、シルドに迫ってきていた。


 交わすのも、防御魔法をつかうのも間に合わない。言うなれば必中距離。


 「燃えるのか?」


 刹那の時だ。放たれた水の弾丸は、一瞬の紅蓮に包まれて燃え尽きた。


 蒸発ではなく、文字通り。焦げて、地に落ちたのだ。


 「また……! 貴様一体なにをしたんだ答えろシルド・ローシュタイン!!」


 「答えるも何もない。燃やしたんだよ」


 「そんなはずあるわけがない! いくら貴様の煉獄だろうと反属性の魔法を燃やすなどできるはずなど……!」


 「一理ある。それなら、だ。あえて答えるのだとしたら、」


 シルドはフレイアを呼び指し、呟いた。


 「魂すら燃やす炎に、燃やせないモノがあるわけないだろうがこのマヌケが」


 「そんなこと……!」


 あり得ない。あり得るはずもない。


 魔法には属性が存在する。属性ごとにその魔法の有利不利は変化するのだが、それはあくまでも普通の魔法での話だ。


 「俺の魔法は、古代魔法なんだぜ?」


 「!!……私の完敗というわけだな」


 フレイアは膝をつき、シルドに頭を垂れた。


 「殺すのなら、殺せ。敵に情を掛けられるほど私は落ちぶれていない」


 「なに言ってるんだお前? そんなことするわけないだろうが」


 「な、何故だ! 殺るのなら一思いに殺れ!!」


 「断る。冗談じゃない」


 「そんな……何故だ、何故なんだ。今の私を、カレン様に見られる位なら私は死んだ方がいいのに!」


 「殺すわけないだろ。だってお前、そんなに必死に泣いてるじゃねえか」


 「!!」


 シルドの言葉通りに、フレイアは涙を溢していた。


 「詳しい事情は知らないけれど俺は、カレンのことで泣くお前を、泣いてくれるお前を、殺しはしないよ絶対に」


 「うぅ……うぁぁ……」


 フレイアは、泣きじゃくった。小さな赤子のように泣きじゃくった。


 「自分の大切な人が自分のことを覚えていないのは、きっと、死ぬほど辛い。カレンがお前のことを覚えていないのは、一概に俺のせいでもあるんだ」


 「お前、ではない」


 「……じゃあなんて呼べば?」


 「フレイア、フレイア・ソードデイズ。それが私の誇り高き名だ」


 「わかった、フレイア。今も言ったが、カレンがお前のことを覚えていないのは俺のせいだ。けれど、償いはできる」


 「償い……」


 「あぁ、そうだ。で、その償いっていうのはだな……フレイア、俺達と一緒に暮らさないか?」


 「……今なんて?」


 「だから俺達と、カレンと暮らさないかってこと」


 「ハァァァァァァァ!!? 貴様何を言っている!」


 「だってそうすれば、お前はカレンとまた友達の関係になれるし、俺は俺でカレンに思い出をあげられる。一石二鳥だろ?」


 「それはそうだが、でも……」


 フレイアは体をむず痒そうに捩らせた。


 「安心しろ。俺別にお前みたいなバカに手を出そうなんて考えもしないから」


 「んな!? そ、そういうことではない!」


 「ならなんで顔そんなに真っ赤なんだよ。変なこと想像したのか?」


 「ち、違うぞ断じて違うぞ!」


 「まあいいや、そんなことどうでも」


 「き、貴様なぁ、ふざけているのか」


 「ふざけてはないよ。少なからず、カレンが関係あることにはな。で、どうするんだ? 住むのか、住まないのか」


 「す、住むに決まっている! 無論だ!」


 「そうか。それじゃあよろしくなフレイア」


 こうして、シルドとカレンのスローライフに、一人住人が加わったのだった。


 その事でカレンの誤解を解くのに丸二日かかったのは、また別の話。


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