最強魔王、引退したい。でも勇者がだめすぎるので、育成はじめました。

冬木ゆあ

文字の大きさ
5 / 20

第5話 魔王、冒険者になる

しおりを挟む
 翌朝、さっそくリリトヴェールとアランは、冒険者ギルドがある商店街の入り口に向かった。
 二人は冒険者ギルドの扉をくぐると、そこは酒場も併設されていて、冒険者で賑わっていた。
 冒険者ギルドの受付は奥に設置されているようで、二人は冒険者たちが座る席の合間を縫うように歩いて行く。
 すると、野次が飛んできた。

「おいおい。ここは子供の来るところじゃないぞ」
「さっさとおうちに帰りなぁ」

 男たちの笑う声が響き渡った。
 しかし、リリトヴェールは気にした素ぶりはなく、受付のカウンターにいる女性に声をかけた。

「魔石の換金がしたいんだけど」

 女性はにこやかな表情で尋ねた。

「冒険者カードはお持ちですか?」

 リリトヴェールは首を横に振った。

「まだ登録していない」
「失礼ですが、年齢を教えてください」

 リリトヴェールが答えた。

「ふたりとも十四だ。年齢制限があるの?」

 女性はうなずいた。

「十三歳から登録できます。お二人は十四歳でいらっしゃるので問題はございません」

 女性はそう言いながら、一冊の本を取り出して開いた。
 表紙の裏に手形が書いてあり、本の中身は白紙だった。

「この手形に手を乗せてください。すると、ステータスを読み取り、右側の紙に記載されます。それが冒険者カードになります。登録料はひとり小銅貨五枚です」

 リリトヴェールはカウンターに小銅貨五枚を置いた。

「へぇ、便利な魔道具だね。アランが登録して」

 アランは頷いてから手形に手を置いた。
 右側の紙に文字が浮かび上がり、女性はそれを見て、少し興奮したように言った。

「レベルは六ですね。全体的にステータスは高いです。特に攻撃力。属性はすごい! 二属性に適性があります。光と火。光属性は珍しいんですよ」

 女性はアランの腰にある剣に気がついて尋ねた。

「その剣、もしかして勇者の剣ではありませんか?」

 アランは「ああ」と言って、自分の剣を見た。
 すると、やりとりを見ていた他の冒険者からも声が上がった。

「勇者だって?」
「そういえば昨日、この街に勇者が来ているって聞いたぞ」

 冒険者たちがカウンターにぞろぞろと集まってきた。
 女性はアランに羽ペンを渡し、ステータスを測る魔道具を指差した。

「それではここにサインをお願いします。冒険者として活動するための名前なので、本名でなくても大丈夫です」

 アランは少し考えてから『アラン』と本名を記載した。
 女性はその紙を切り取って、アランに渡した。

「これが冒険者カードです。なくさないようにしてくださいね」

 アランはうなずいて、それを受け取った。
 複写になっていたようで、女性はもう一枚紙を切り取り脇に置いた。
 それからリリトヴェールに視線を向けた。

「次、お嬢さんどうぞ」

 リリトヴェールは両手を横に振った。

「私はいいよ」

 女性はリリトヴェールに確認した。

「依頼を受ける際、パーティ全員が冒険者登録をしていないと受けられません。違反すると罰則が科せられます。依頼は受けないご予定ですか?」

 リリトヴェールは少し考えてからアランに視線を向けた。

「まずは魔石を換金してもらおう。私が登録するかはその金額を見て決める」

 アランはかばんから魔石の入った巾着を取り出して、中身をカウンターに出した。

「いくらになりますか?」

 女性は魔石を鑑定して言った。

「小銅貨十五枚ですね」

 リリトヴェールはそれを聞いて苦笑した。

「魔石ってあんまりお金にならないんだね。しかたがない。私も登録するよ」

 リリトヴェールは目を閉じた。

 ――今の自分のステータスも気になるけど、騒ぎになっても困るからな。アランがレベル六だというのなら、そのくらいまでレベルを落として……と。

 リリトヴェールは茶色の瞳を開いて、ひとつ息を吐いてから魔道具に手を置いた。
 女性は浮かび上がったステータスを見て目を丸くした。

「レベルは七ですね。あなたも全体的にステータスが高いですが、魔力がすごいです。アランさんと一緒で属性は二つ。闇と雷ですね。闇属性もとっても珍しいですよ。それではここにサインをお願いします」

 リリトヴェールは『リリー』と名前を書いた。
 女性から冒険者カードを受け取り、アランのと一緒にかばんに入れた。
 女性は、今度はカウンターから出てきて、依頼が貼られた掲示板へと案内してくれた。

「依頼はここに張り出されます。お二人はレベル六とレベル七なので、Ⅾランクの冒険者です。なので、この辺りですね」

 女性が示したのは、森での薬草採集と、魔獣討伐の依頼だった。
 それぞれ成功報酬はあまり高いものではなかった。
 リリトヴェールはじっくりと掲示板を見ていると、破格の報酬の依頼があった。

「あのダンジョン攻略、大銀貨八枚っていうのはなに?」
「近くにあるダンジョンの攻略依頼ですね。現在地下八階以降は未踏破となっています。それを全部攻略すると成功報酬として大銀貨八枚が支払われます。ダンジョンにはお宝や、魔物も多く、攻略できなくてもけっこういい収入源になります」
「それ受けたい!」
 
 リリトヴェールがそう言うと、女性は申し訳なさそうな顔をしながら答えた。

「ダンジョンへ挑むにはレベル十、Cランク以上でなければいけません。残念ながらお二人にはまだダンジョンに入る資格がないのです。なので、レベル十まで頑張って鍛錬してくださいね」

 それを聞いたリリトヴェールはショックを受けた。

 ――それを早く言ってほしかった……!

 ショックを受けている横でアランがリリトヴェールに視線を向けた。

「ほら。やっぱりもう少しレベルを上げてから旅立つべきだったんだよ」

 そう言われたリリトヴェールは何も言い返せなくて悔しげにアランを見た。
 リリトヴェールはため息を吐いて、女性に言った。

「とりあえず薬草採集と、魔物討伐の依頼を受けます……」

 やりとりをずっと見守っていた冒険者たちは笑った。

「勇者様が薬草採集と、魔物討伐だってよ」
「レベル六って俺たちの方が強いじゃないか」

 リリトヴェールとアランはそんな中、小さくなりながらとぼとぼと冒険者ギルドをあとにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

処理中です...