【完結】前世ハイスペックブサメンの俺、今世ではイージーモードを歩みたい

影清

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232. 冬の魔族領で過ごす俺3 

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「あーん起きたら朝だったぁ!ジーン、姫と一緒にテント入ったよねぇ?」
「おはようございます、ご友人様。わたくしは、エントランスでお暇致しましたよ」
「えぇー!ベッドインしたんじゃないのぉ?なんで姫、覚えてないのかなぁ…」
「ご自分で、ベッドまで歩いていらっしゃいましたよ。よほどお疲れだったようですね」
「疲れてはいるよぉ~!だって朝起きたら筋肉痛だもん!」
「回復して差し上げたいのは山々なのですが、体力と筋力をつける為には、そのまま我慢して頂くしかありません」
「えぇー!歩けないよぉ!」
「今日も一日、頑張りましょう」
「あーん、ロベルト助けてぇ!ジーンがいじめるのぉ!」
「…ご友人殿の為を思っての発言だと思うがな」

 朝七時。
 睡眠時間の足りない身体に鞭打ちながら、ミカエルがテントを出ると、すでに全員が揃っていた。
 聖女とご友人は、魔獣の襲撃があっても呼び出さず放置していたので、睡眠は十分に足りているように見える。
 Aランク冒険者の面々は、聖女とご友人のテント周辺に防御陣を張って護衛をしてもらっていた為、おそらく寝不足であるだろうが、表面上は平然としているように見えた。
 バージルとロベルトは騎士団での訓練で慣れているようだったが、アベルとジーンは眠そうだ。
 シャリエルは、椅子に座りながら寝ていた。
 歴代勇者達が残してくれた、安全地帯以外で夜営することになった場合、寝不足を覚悟しなければならない、ということを、痛感した一夜だった。
 一日二日は耐えられても、連日になると日中の活動に支障が出そうだ。
 ミカエルは規則正しい生活をしてきた影響で、睡眠時間が減ると身体が重く、怠く感じる。
 命の危機に晒されてはいても、王宮で恵まれた生活をさせてもらっている自覚はあった。
 こういうトラブルは、今後勇者パーティーの精神を鍛えることに役立つだろう。
 冬期休暇の間に、色々な経験をしておきたい所である。
「おはようございます」
 ミカエルがタープ下のテーブルへと歩み寄ると、全員から挨拶を返してもらった。
 なんとなく決まっている席に着くと、今日の給仕当番である勇者アベルが、明るい笑顔を向けながらインスタントコーヒーを淹れてくれた。
「昨日あれから、また襲って来たらどうしようって考えてたら、ほとんど眠れませんでした。ミカエル様は、眠れましたか?」
「僕は眠れたよ。さすがに徹夜は辛そうだなと思って、無理矢理」
 礼を言いつつコーヒーカップを受け取って答えると、「さすがだ」と感心されたが、単にアルヴィスの体温が温かくて気づいたら眠っていた、とは言えない。
 アルヴィスはおはようの挨拶をした後は転移で戻って行ったので、また夜になったら現れるのだろう。
 六人掛けのテーブルを二つ並べ、バージルとミカエルとロベルト、向かいにシャリエルとアベルとジーンが座り、隣のテーブルは聖女とご友人、向かいに冒険者三名が座るようになっているのだが、ご友人はこちらのテーブルに座りたいと、何度も文句を言っていた。
「姫だけ仲間外れ、ひどい!!」
「意味が分からない」
 バージルの、ご友人に対する口癖と化してしまった台詞に、勇者パーティーの全員が内心で同意している。
 彼女が望んでいるのは、勇者パーティーのテーブルの真ん中…ミカエルやアベルの位置に自分が座り、周囲のメンバー全員におだてられ、褒め称えられ、ちやほやされる、逆ハーレム状態になることだ。

 彼女の望みは知っている。
 だが、叶えてやる義理はない。

 これが好人物であったなら、女性が一人、という環境も鑑みて、自然と気を遣って逆ハーレム状態になったかもしれない。
 残念ながら彼女は、好感度上げに失敗している。
 それも、致命的に全員分。
 よくぞここまで全員の神経を逆撫で出来るな、と感心する程だ。
 共に行動する勇者パーティーのメンバーが、自分と同じような感性を持ってくれていることに、ミカエルは感謝していた。
 おそらく一人でも彼女の味方がいたら、分裂していたことだろう。
 その点、聖女はご友人の味方、とは言い難かった。
 友人は友人でも、随分とドライな関係のようだ。
 互いに庇い合うことはなく、助け合うこともない。
 どちらも我関せずで、自分が良ければそれでいい、という考えのようだ。
 似た者同士で、気は合うのだろう。
 しかしながら、今のようにご友人が一人、頑なになってしまった場合、仲裁に入る存在がいないことが、厄介だった。
 バージルとご友人の雰囲気が険悪になっているので、ミカエルは止めに入った。
「ご友人殿は、こちらで食事をしたいのですか?」
「そう!そうなの!皆と楽しくお喋りしながら、食べたいの!」
 力説されたが、それならバージルと険悪な雰囲気を作ったらダメなのでは?と、思わずにはいられない。
「なるほど。では朝食は、こちらでされますか?」
「えっいいの!?」
「ちょっと、ミカエル…」
 咎めるようなバージルの視線に微笑みを向けてから、ご友人へと向き直る。
「ただ、昼食と夕食は、進捗や計画の見直しなどの話をしないといけませんし、聖女殿と一緒に食事をして頂いてもよろしいでしょうか」
「えー…」
「一緒に攻略の話をされますか?」
 おまえの機嫌を取る話題はしない、と遠回しに言うと、ご友人は攻略の話は興味がないようで、不満そうな顔をしながら首を振った。
「姫、戦いの話とか、わかんないもん。怖いし」
「そうですよね。血生臭い話題も出るでしょうし、ご無理はなさらない方が」
「…え、ミカエル、姫のこと、心配してくれてるんだ…!?」
「もちろんです」

 心配しているのは、進捗ですけど。

 優しく微笑んで見せると、わかりやすくご友人のテンションが上がった。
「そういうことなら、朝食だけで我慢してあげてもいいよ…!順調にいけば、昼も夜も皆と食べられるってことだもんね!」
「そうですね」
「…ミカエル」
 眉を顰めたロベルトだけでなく、勇者パーティー全員に後で謝ろうと思う。

 折衷案としては、これが最善だった。 

「ではご友人殿は、私の席にどうぞ。聖女殿の隣、失礼しますね」
 聖女に向けて言えば、聖女はコーヒーを啜りながら、片手をひらひらと振った。
「勝手にどーぞー」
「えーっ!ミカエル行っちゃうの!?」
「誰かが移動しないと、ご友人殿が座れませんから」
「でもぉ…!」
 さらに言い募られる前に席を立ち、コップと並べられた皿、カトラリーを持って移動した。
 ご友人の分もミカエルがいた席に運んでやると、もう機嫌は直っていた。
  
 男は無条件で自分をちやほやするものだと、信じて疑っていないのだろう。

 相手が彼女のことを好きでなければ成立しない大前提なのだが、彼女はそこに疑問を持つことはないのだろうか。
 過去の成功体験からの自信なのかもしれないが、この世界では通用していない、ということに、どうか最後まで、気づきませんように。

 結局毎朝、聖女の隣は交替で座る、ということに落ち着いて、ご友人だけが楽しい朝を過ごしていた。
 ちなみに、その日から「オススメ夜営地」以外で夜営をしていても、魔獣に襲われることはなくなった。

「ゆっくり眠れるな」
「…アル、なんかした?」
「俺はなにもしていない」
「…そっかぁ」

 毎晩やって来るアルヴィスが、自信満々にベッドへ連れ込もうとするので、なんかやったな?とは思うものの、証拠はなかった。
 ミカエル達が夜営地に張った結界を覆うように、ラダーニエが広範囲に結界を張り、魔獣の侵入自体を防いでいた、ということを知ったのは、魔王討伐を終えてからのことである。

「我が君は、一帯の魔獣を殲滅しようとなさいましたが、そうするとリポップ時間の関係で、ミカエル様のレベル上げに影響が出かねませんので」

 と言われて、自分は過保護にされているな、と思ったのだった。
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