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29. 船で繋がれる俺
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暗くてよくわからなかったが、ミカエルが乗せられた船は大型の、ガレオン船…某有名な海賊映画で出てくるような船に似ていた。
遠洋航海に用いられる船である。
どこに連れて行かれるのだろうと思うと、不安と恐怖で押し潰されそうだった。
手足を縛られ、首にも何かをつけられている為、動くこともできない。
フードの男に抱えられ、通り過ぎる船室からは、そこかしこから泣き声が聞こえていた。
「…この泣き声は」
「余計なお喋りも禁止だぜ王子サマ。心配しなくても、アンタは最高等級の客室にご案内だ」
「……」
「大人しくしてりゃ、危害は加えねぇ。大事な大事な、商品だからな」
「……」
商品って言ったのか。
では、船室の泣き声は。
フードの男を見やるが、反応はなかった。
「ほら、一番いい部屋だ。王子サマには狭いかもしんねーが、まぁ我慢してくれや。向こうに着いたら、いい生活が待ってるだろうよ」
荷受人は、すでに存在しているらしい。
両足の拘束が解かれたかわりに、ベッドの足に繋いだ鎖で、右足首を拘束された。
ブーツも脱がされ素足に鉄輪は冷たく不快だったが、床を歩けるよう、スリッポンのような靴を新たに用意してくれたのは、おそらく親切なのだろう。
「部屋での生活には困らないようにしてるぜ。食事も三食出る」
「…手は」
「それは俺が部屋から出て、鍵をかけてから、そっちの男に外してもらいな」
「え」
フードの男は、無反応だった。
「そいつは見張りだ。強いからな、反抗しようとすんなよ。傷つかれちゃ困るからな…まぁ、回復してもらえばいいんだけどよ」
「……」
「んじゃぁな。いい子にしてな」
扉は閉ざされ、鍵がかけられた。
呆然と扉を見つめていると、両手を取られ、拘束が解かれた。
「…ありがとう、ございます…」
小さく礼を言うが男は反応せず、部屋の端っこの床に直接座り込んだ。
黒い外套の下は、黒い服を着ているようだった。
身長は高い。
おそらくカノラド王くらいはあると思われる。
細身だが、鍛えていないわけではなさそうだ。
目に見える場所に武器はなかったが、どこかにあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
まだ、わからなかった。
ベッドに繋がれた鎖は長いが、部屋の外に出ていける程ではなかった。
トイレやバスルームには行けそうで、安堵する。
これはどうすればいいのか。
大人しく、助けを待つのが最善だ。
だがもし、船が出航してしまったら。
カノラド王が、国の威信をかけて追いかけて来てくれるだろうと思ってはいる。
親睦会で他国の王子が誘拐されるなんて、国際問題である。
何が何でも救い出そうとするだろう。
生きた状態で。
…死んだらこれもまた、国際問題になるからだ。
ベッドに腰掛け、窓の外を見ようとしたが、塞がれていた。
えええ、しっかりしてらっしゃる。
子どもの身体なら無理をすれば通れそうな大きさの、円形の窓だった。
潰されてしまっていては、助けを求めることもできない。
おそらく他の船室も、同じように逃げ道は塞がれているのだろう。
通路を通った時に泣いていたのは、おそらく子どもだった。
年齢は不明だが、おそらくミカエルと近い年代だろうと思う。
奴隷商人がいることは知っていた。
五国において奴隷制度は廃止されたが、それ以外の国ではまだ制度が生きている場所があり、売買も盛んであるという。
どこかの国から買ってきたのか浚ってきたのか、この国で停泊して補給をし、さらに別の国へと行くのだろう。
奴隷制度が廃止された国に、奴隷を連れ込むこと、関係者と関わることは法律違反である。
港に停泊している以上、この船は違反船だった。
港を管理する貴族もしくは官僚に、協力者がいるのではないか。
ミカエルが助け出されれば、その辺も明らかになるだろう。
こういう時、自分に主人公チートがあれば、自力で逃げ出すことができるのに。
まだまだ、勉強も体力も、何もかもが足りない。
無意識に触れた首に、何かがつけられていることを思い出す。
首輪か、チョーカーか。
文様がぐるりと一周刻まれており、中央には石がはまっているようだ。
これが何かを、尋ねてもいいものか。
端にいるフードの男へ視線を向けると、男もこちらを見ていた。
顔は見えないものの、フードの位置がこちらを向いている。
「…あの、これは何でしょうか」
「……」
無言で返された。
ですよね。
この男は、一言も口を利いていなかった。
あえて黙っているのか、喋れないのかは知らないが。
ただじっと、こちらを見ている。
「……」
第二王子アルヴィスを思い出してしまった。
元気かな。
彼もいつも、ミカエルの顔をじっと見つめていた。
無事に帰りたい。
身体を倒し、ベッドに横になった。
じゃらりと鎖が鳴り、足首が引っ張られる。
子どもには重かった。
鎖を引っ張ってベッドに乗せようと思い、身体を起こそうとするが、すぐ至近に黒い外套があり、驚いた。
「…え」
「……」
鎖を持ち上げ、余裕を持たせてベッドの上に乗せてくれた。
誘拐犯の一味のくせに、親切だな?
きょとんとしたまま礼を言うと、男はまた部屋の端へと戻っていった。
遠洋航海に用いられる船である。
どこに連れて行かれるのだろうと思うと、不安と恐怖で押し潰されそうだった。
手足を縛られ、首にも何かをつけられている為、動くこともできない。
フードの男に抱えられ、通り過ぎる船室からは、そこかしこから泣き声が聞こえていた。
「…この泣き声は」
「余計なお喋りも禁止だぜ王子サマ。心配しなくても、アンタは最高等級の客室にご案内だ」
「……」
「大人しくしてりゃ、危害は加えねぇ。大事な大事な、商品だからな」
「……」
商品って言ったのか。
では、船室の泣き声は。
フードの男を見やるが、反応はなかった。
「ほら、一番いい部屋だ。王子サマには狭いかもしんねーが、まぁ我慢してくれや。向こうに着いたら、いい生活が待ってるだろうよ」
荷受人は、すでに存在しているらしい。
両足の拘束が解かれたかわりに、ベッドの足に繋いだ鎖で、右足首を拘束された。
ブーツも脱がされ素足に鉄輪は冷たく不快だったが、床を歩けるよう、スリッポンのような靴を新たに用意してくれたのは、おそらく親切なのだろう。
「部屋での生活には困らないようにしてるぜ。食事も三食出る」
「…手は」
「それは俺が部屋から出て、鍵をかけてから、そっちの男に外してもらいな」
「え」
フードの男は、無反応だった。
「そいつは見張りだ。強いからな、反抗しようとすんなよ。傷つかれちゃ困るからな…まぁ、回復してもらえばいいんだけどよ」
「……」
「んじゃぁな。いい子にしてな」
扉は閉ざされ、鍵がかけられた。
呆然と扉を見つめていると、両手を取られ、拘束が解かれた。
「…ありがとう、ございます…」
小さく礼を言うが男は反応せず、部屋の端っこの床に直接座り込んだ。
黒い外套の下は、黒い服を着ているようだった。
身長は高い。
おそらくカノラド王くらいはあると思われる。
細身だが、鍛えていないわけではなさそうだ。
目に見える場所に武器はなかったが、どこかにあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
まだ、わからなかった。
ベッドに繋がれた鎖は長いが、部屋の外に出ていける程ではなかった。
トイレやバスルームには行けそうで、安堵する。
これはどうすればいいのか。
大人しく、助けを待つのが最善だ。
だがもし、船が出航してしまったら。
カノラド王が、国の威信をかけて追いかけて来てくれるだろうと思ってはいる。
親睦会で他国の王子が誘拐されるなんて、国際問題である。
何が何でも救い出そうとするだろう。
生きた状態で。
…死んだらこれもまた、国際問題になるからだ。
ベッドに腰掛け、窓の外を見ようとしたが、塞がれていた。
えええ、しっかりしてらっしゃる。
子どもの身体なら無理をすれば通れそうな大きさの、円形の窓だった。
潰されてしまっていては、助けを求めることもできない。
おそらく他の船室も、同じように逃げ道は塞がれているのだろう。
通路を通った時に泣いていたのは、おそらく子どもだった。
年齢は不明だが、おそらくミカエルと近い年代だろうと思う。
奴隷商人がいることは知っていた。
五国において奴隷制度は廃止されたが、それ以外の国ではまだ制度が生きている場所があり、売買も盛んであるという。
どこかの国から買ってきたのか浚ってきたのか、この国で停泊して補給をし、さらに別の国へと行くのだろう。
奴隷制度が廃止された国に、奴隷を連れ込むこと、関係者と関わることは法律違反である。
港に停泊している以上、この船は違反船だった。
港を管理する貴族もしくは官僚に、協力者がいるのではないか。
ミカエルが助け出されれば、その辺も明らかになるだろう。
こういう時、自分に主人公チートがあれば、自力で逃げ出すことができるのに。
まだまだ、勉強も体力も、何もかもが足りない。
無意識に触れた首に、何かがつけられていることを思い出す。
首輪か、チョーカーか。
文様がぐるりと一周刻まれており、中央には石がはまっているようだ。
これが何かを、尋ねてもいいものか。
端にいるフードの男へ視線を向けると、男もこちらを見ていた。
顔は見えないものの、フードの位置がこちらを向いている。
「…あの、これは何でしょうか」
「……」
無言で返された。
ですよね。
この男は、一言も口を利いていなかった。
あえて黙っているのか、喋れないのかは知らないが。
ただじっと、こちらを見ている。
「……」
第二王子アルヴィスを思い出してしまった。
元気かな。
彼もいつも、ミカエルの顔をじっと見つめていた。
無事に帰りたい。
身体を倒し、ベッドに横になった。
じゃらりと鎖が鳴り、足首が引っ張られる。
子どもには重かった。
鎖を引っ張ってベッドに乗せようと思い、身体を起こそうとするが、すぐ至近に黒い外套があり、驚いた。
「…え」
「……」
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