42 / 311
40. 元愛人の過去
しおりを挟む
王の元愛人ニコル・カッツは、元平民とはいえ、苦労を知らずに育った。
宿屋の娘である母は美人で気だてが良く、近所の男女だけでなく、遠方からもわざわざ泊まりに来る程人気があった。
だからこそ男爵の目にも止まったのだが、宿は連日満員御礼で、食事もそこそこ美味しかったから、平民の中でもとても裕福だった。
宿屋の主人である祖父は、気難しい一面を持ってはいたが、整った容貌をしており、また祖母も美人で名の通った人だったこともあり、町では名の知れた美形一家だった。
ニコルもまた、幼少期は町一番の可愛さで皆から可愛がられ、お菓子や服やアクセサリーなど、望まずとも贈ってもらえることが常だった。
家族は皆、「可愛がってもらえるよう、可愛く振る舞いなさい」と口を揃えて言った。
家族の誰もが通ってきた道だったから、それが当たり前だと思って育った。
ニコルが五歳の時、母が再婚した。
生まれた弟と妹は、ブサイクだった。
父親に似てしまったのだろう、可哀想に。
父親はいくつかの町で商売をしている、金持ちだった。
この町でも商売をしたいからと、宿に泊まり、母に一目惚れした。
多額の金を貢いでくれて、宿はさらに大きくなり、豪華になった。
母もそろそろ楽をしたいといい、プロポーズを受け入れた。
ブサイクな弟妹は、贈り物などしてもらえない可哀想な子達だった。
家族は皆、可愛がってもらえるのが当たり前で、贈り物ももらえるのが当たり前だったから、可哀想にね、と言っていた。
実の父親でさえ、自分に似てしまった弟妹を可哀想に、と言っていた。
弟妹は、年が近い兄であるニコルを敵視するようになっていった。
ニコルは可愛がられ、たくさん贈り物をもらっているのに、自分達にはない。
突っかかられ、泣かれても、ニコルは可哀想に、としか思わなかった。
ブサイクだから、愛されなくて、可哀想に。
俺は可愛いから、男にも女にもモテてしまう。
十五になる頃には、小柄で可愛いニコルは、男達から姫のような扱いをされるのが当たり前になっていて、年頃を迎えた女達からは敬遠されるようになっていたが、ニコルは気づかなかった。
話しかけたらすぐにどこかへ行ってしまう、貧乏でブサイクな彼女達、可哀想だな、と思っていた。
男爵から、男爵家の跡継ぎになれと言われて、嬉しかった。
やっぱり俺は、特別なんだ。
家族皆、喜んでくれた。
弟妹は顔を歪めてとてつもなく醜い顔になっていたが、元からだから、可哀想だな、としか思わなかった。
「おまえもここの連中も、おかしい。おかしいって、思わないのかよ!」
「どうして?愛されないからって、卑屈になっちゃ駄目。もっと可愛くしなきゃ。皆も、可愛い子が好きなんだよ。わかるでしょ?」
それが、弟と交わした最後の言葉だった。
弟は十六で妹を連れて、他国へ出て行った。
それきり音信不通になったらしいが、家族は誰も気にしなかった。
家族との別れは、寂しくなかった。
だって、俺はもっともっと、幸せになるんだから。
学園に入って、たくさん男友達が出来た。
皆に囲まれて、姫のように扱ってもらえた。
貴族で金持ちの子息が相手でも、ニコルの可愛さは通用した。
親切にしてもらえ、贈り物をもらえ、大切にしてもらえた。
第二王子にまで見初められて、嬉しかった。
セフレ扱いだったけど、王子様だよ?十分幸せだった。
俺は、特別なんだ。
平民の頃と同じように振る舞っても、誰も怒らなかったし、可愛いと言ってくれた。
付け焼き刃で身につけさせられた貴族の礼儀だなんだは、あっという間に忘れてしまった。
学園卒業の時には、第二王子は愛人として呼んでくれなかったけど、しばらくしたら呼んでくれた。
俺は可愛いから。
愛されちゃうんだ。
ダミアンとは二年の愛人契約だったけど、やっぱり一年しかもたなかった。
すぐ飽きちゃうんだから。
しょうがない人。
次を見つけようと思っていたら、第一王子の婚約披露の日、学園時代のセフレの一人、オースティン・ガーランドに再会した。
ニコルは招待されていなかったが、こっそり見に行ったのだ。
会場には入れなかったし、第一王子もどんな顔か確認できなかったけど、庭園をうろうろしていたら声をかけてくれたんだ。
黄蘭宮から庭園は、人目に付かずに移動出来るから。
運命だって、思ったよね。
向こうも会いたかった、会いに行こうと思ってたって、言ってくれたんだ。
黄蘭宮は、さすがに入れなかったと思うけどね。
でも、気持ちが嬉しいじゃない。
それから街へ買い物に行くたび、手紙をもらった。
王族が第一王子を気に入ったから、って書いていたけど、本当はオースティンが気に入ったんだろうなって、思ってる。
王族が第一王子を見初める機会なんて、ないもんね?
王族が、って言っておけば、箔がつく。
特別感出ちゃう。
大事な友達のオースティンのお願いは、聞いてあげなきゃなって、思ったんだ。
王族を紹介してくれることで、おあいこだよね。
だからその手紙だけは、破って捨てちゃった。
バレたらその王族の人に、失礼になっちゃうからね。
それくらいの配慮は、俺にもできるんだ。
ミカクンと一緒に出かける時、俺も一緒に誘拐してもらって、途中で下ろしてもらって、全然違う所に逃げました!って言えば、ごまかせるんじゃない?って言ったら、採用された。
まだ愛人契約が残っているし、しっかりお金も貯めておきたかったから、ミカクンと一緒に王国へ行くのはやめたんだ。
必死に敵から逃げてきた俺、健気で可愛くない?
絶対、ダミアンも優しくしてくれると思うんだ。
カノラド連邦で街に下りた時にメモを渡されたから、あっこれか!って、わかった。
一生懸命計画を立てて、ミカクンと一緒に誘拐してもらった。
そこまでは、とても上手く行っていた。
冷たい牢の壁につけた背中から、全身が冷えていく。
王宮内はいつも室温調整の魔道具が動いていて、快適だったというのに。
冬の寒さに、震えが止まらなかった。
ひどいよ。
俺が何をしたっていうのさ。
オースティンがミカクンを気に入って、会いたいって言うから、会わせてあげようと思っただけじゃん。
王子様って、行きたい所に自由に行けないんだよ?
いっつも事前に許可、擦り合わせ、調整が必要とか言って、大変なんだ。
オシウィアド王国ってすっごく遠いし、ミカクン、一生行けないかもしれないでしょ。
可哀想じゃん。
いい機会だ!って思ったのに。
誰も褒めてくれないの。
俺、ダミアンの為にも一生懸命頑張ったのに。
ミカクンと仲良くなれるように、お酒も買ってきてあげたのに。
あーあ、俺ばっかり、損してる。
しかも明日処刑なんだって。
ひどいよ。
俺、こんなに可愛く健気に頑張ってきたのに。
首につけられたチョーカーも、可愛くない。
俺の趣味じゃない。
魔法が使えなくなるって言われたけど、元から俺、まともに魔法使えない。
魔力はあるけど、生活魔法も攻撃魔法も、友達がやってくれた。
授業の時には、友達が代わりにやってくれることを、先生におねだりしたら許してもらえた。
第二王子だった、ダミアンの名前を出したらすぐだった。
ダミアンも友達にやってもらって、ギリギリだけど留年せずに済んだんだ。
こんなダサイチョーカー、やめて欲しい。
俺に似合わないんだから。
やだよぉ。
死にたくないよぉ。
「ウッフフ」
笑い声が聞こえた。
女のような、男のような、不思議な声音だった。
「…だれ…?」
顔を上げると、目の前の床に笑う首が落ちていた。
「…ヒッ…!?」
思わず仰け反るが、壁に阻まれ後ろには下がれなかった。
「あぁン、落ち着いて。ここから出してあげに来たのよ」
「……え……!」
ずるずると、床から生えるように、身体の上半身が見えてきた。
呆然と見ているうちに、つま先まで露わになった。
十歳から十五歳くらいの、少女に見えた。
華奢な身体には凹凸がなく、すとんとしていた。
服は軍服のような詰襟で、体型はよくわからない。
ヒールの高いブーツを履いているようだった。
顔は、とても美しい。
薄いピンクのような色をした髪が、複雑に編み込まれ、ツインテールにされていた。
毛先に行くに従って黒くなっており、染めているのかと思ったが、違和感は覚えなかった。
腰ほどある長さの髪を後ろへと払いのけ、嫣然と微笑む姿は、少女というよりは娼婦のようにも見える。
「どうする?オースティンだっけ?アイツに会いたいなら、連れて行ってあげるけど?」
オシウィアド王国にいる男の名前を、少女は言った。
紅い瞳が細められ、口紅を塗ったような赤い唇が弧を描く。
迷うことなど、微塵もなかった。
「行く。連れて行って!」
「ウッフフ。イイ返事。それでこそ、人間よね」
これだけの会話をしていても牢番の反応がないことに、ニコルは気づかない。
防音魔術の上に目くらましがかけられているのだが、ニコルが知る必要もないことだった。
「アタシはとっても親切なの」
オースティンの下僕で、俺を助けに来てくれたのだと、ニコルは解釈した。
「ありがとう。俺のこと、ニコルって呼んでいいよ!アンタの名前何?」
ネイルの施された華奢な手を差し出され、ニコルは素直に手を乗せた。
瞬間、力を込めて握りしめられ、ニコルは悲鳴を上げる。
「いっ…いたい、痛い、いたいよぉ!!なに、何するの!!」
潰されるかと思うような力に涙が溢れ、思わず叫ぶ。
少女は、ふと力を抜いた。
「あらぁ、力が入っちゃった?いっけない、虫にイラついちゃったわ!」
「…や、やめてよぉ。俺の手、潰れちゃうとこだったんだから」
「そうねぇ。じゃ、行きましょうか」
どうやってここから出るんだろう、なんて、思う暇もなかった。
気づけばニコルは、知らない屋敷の中にいた。
宿屋の娘である母は美人で気だてが良く、近所の男女だけでなく、遠方からもわざわざ泊まりに来る程人気があった。
だからこそ男爵の目にも止まったのだが、宿は連日満員御礼で、食事もそこそこ美味しかったから、平民の中でもとても裕福だった。
宿屋の主人である祖父は、気難しい一面を持ってはいたが、整った容貌をしており、また祖母も美人で名の通った人だったこともあり、町では名の知れた美形一家だった。
ニコルもまた、幼少期は町一番の可愛さで皆から可愛がられ、お菓子や服やアクセサリーなど、望まずとも贈ってもらえることが常だった。
家族は皆、「可愛がってもらえるよう、可愛く振る舞いなさい」と口を揃えて言った。
家族の誰もが通ってきた道だったから、それが当たり前だと思って育った。
ニコルが五歳の時、母が再婚した。
生まれた弟と妹は、ブサイクだった。
父親に似てしまったのだろう、可哀想に。
父親はいくつかの町で商売をしている、金持ちだった。
この町でも商売をしたいからと、宿に泊まり、母に一目惚れした。
多額の金を貢いでくれて、宿はさらに大きくなり、豪華になった。
母もそろそろ楽をしたいといい、プロポーズを受け入れた。
ブサイクな弟妹は、贈り物などしてもらえない可哀想な子達だった。
家族は皆、可愛がってもらえるのが当たり前で、贈り物ももらえるのが当たり前だったから、可哀想にね、と言っていた。
実の父親でさえ、自分に似てしまった弟妹を可哀想に、と言っていた。
弟妹は、年が近い兄であるニコルを敵視するようになっていった。
ニコルは可愛がられ、たくさん贈り物をもらっているのに、自分達にはない。
突っかかられ、泣かれても、ニコルは可哀想に、としか思わなかった。
ブサイクだから、愛されなくて、可哀想に。
俺は可愛いから、男にも女にもモテてしまう。
十五になる頃には、小柄で可愛いニコルは、男達から姫のような扱いをされるのが当たり前になっていて、年頃を迎えた女達からは敬遠されるようになっていたが、ニコルは気づかなかった。
話しかけたらすぐにどこかへ行ってしまう、貧乏でブサイクな彼女達、可哀想だな、と思っていた。
男爵から、男爵家の跡継ぎになれと言われて、嬉しかった。
やっぱり俺は、特別なんだ。
家族皆、喜んでくれた。
弟妹は顔を歪めてとてつもなく醜い顔になっていたが、元からだから、可哀想だな、としか思わなかった。
「おまえもここの連中も、おかしい。おかしいって、思わないのかよ!」
「どうして?愛されないからって、卑屈になっちゃ駄目。もっと可愛くしなきゃ。皆も、可愛い子が好きなんだよ。わかるでしょ?」
それが、弟と交わした最後の言葉だった。
弟は十六で妹を連れて、他国へ出て行った。
それきり音信不通になったらしいが、家族は誰も気にしなかった。
家族との別れは、寂しくなかった。
だって、俺はもっともっと、幸せになるんだから。
学園に入って、たくさん男友達が出来た。
皆に囲まれて、姫のように扱ってもらえた。
貴族で金持ちの子息が相手でも、ニコルの可愛さは通用した。
親切にしてもらえ、贈り物をもらえ、大切にしてもらえた。
第二王子にまで見初められて、嬉しかった。
セフレ扱いだったけど、王子様だよ?十分幸せだった。
俺は、特別なんだ。
平民の頃と同じように振る舞っても、誰も怒らなかったし、可愛いと言ってくれた。
付け焼き刃で身につけさせられた貴族の礼儀だなんだは、あっという間に忘れてしまった。
学園卒業の時には、第二王子は愛人として呼んでくれなかったけど、しばらくしたら呼んでくれた。
俺は可愛いから。
愛されちゃうんだ。
ダミアンとは二年の愛人契約だったけど、やっぱり一年しかもたなかった。
すぐ飽きちゃうんだから。
しょうがない人。
次を見つけようと思っていたら、第一王子の婚約披露の日、学園時代のセフレの一人、オースティン・ガーランドに再会した。
ニコルは招待されていなかったが、こっそり見に行ったのだ。
会場には入れなかったし、第一王子もどんな顔か確認できなかったけど、庭園をうろうろしていたら声をかけてくれたんだ。
黄蘭宮から庭園は、人目に付かずに移動出来るから。
運命だって、思ったよね。
向こうも会いたかった、会いに行こうと思ってたって、言ってくれたんだ。
黄蘭宮は、さすがに入れなかったと思うけどね。
でも、気持ちが嬉しいじゃない。
それから街へ買い物に行くたび、手紙をもらった。
王族が第一王子を気に入ったから、って書いていたけど、本当はオースティンが気に入ったんだろうなって、思ってる。
王族が第一王子を見初める機会なんて、ないもんね?
王族が、って言っておけば、箔がつく。
特別感出ちゃう。
大事な友達のオースティンのお願いは、聞いてあげなきゃなって、思ったんだ。
王族を紹介してくれることで、おあいこだよね。
だからその手紙だけは、破って捨てちゃった。
バレたらその王族の人に、失礼になっちゃうからね。
それくらいの配慮は、俺にもできるんだ。
ミカクンと一緒に出かける時、俺も一緒に誘拐してもらって、途中で下ろしてもらって、全然違う所に逃げました!って言えば、ごまかせるんじゃない?って言ったら、採用された。
まだ愛人契約が残っているし、しっかりお金も貯めておきたかったから、ミカクンと一緒に王国へ行くのはやめたんだ。
必死に敵から逃げてきた俺、健気で可愛くない?
絶対、ダミアンも優しくしてくれると思うんだ。
カノラド連邦で街に下りた時にメモを渡されたから、あっこれか!って、わかった。
一生懸命計画を立てて、ミカクンと一緒に誘拐してもらった。
そこまでは、とても上手く行っていた。
冷たい牢の壁につけた背中から、全身が冷えていく。
王宮内はいつも室温調整の魔道具が動いていて、快適だったというのに。
冬の寒さに、震えが止まらなかった。
ひどいよ。
俺が何をしたっていうのさ。
オースティンがミカクンを気に入って、会いたいって言うから、会わせてあげようと思っただけじゃん。
王子様って、行きたい所に自由に行けないんだよ?
いっつも事前に許可、擦り合わせ、調整が必要とか言って、大変なんだ。
オシウィアド王国ってすっごく遠いし、ミカクン、一生行けないかもしれないでしょ。
可哀想じゃん。
いい機会だ!って思ったのに。
誰も褒めてくれないの。
俺、ダミアンの為にも一生懸命頑張ったのに。
ミカクンと仲良くなれるように、お酒も買ってきてあげたのに。
あーあ、俺ばっかり、損してる。
しかも明日処刑なんだって。
ひどいよ。
俺、こんなに可愛く健気に頑張ってきたのに。
首につけられたチョーカーも、可愛くない。
俺の趣味じゃない。
魔法が使えなくなるって言われたけど、元から俺、まともに魔法使えない。
魔力はあるけど、生活魔法も攻撃魔法も、友達がやってくれた。
授業の時には、友達が代わりにやってくれることを、先生におねだりしたら許してもらえた。
第二王子だった、ダミアンの名前を出したらすぐだった。
ダミアンも友達にやってもらって、ギリギリだけど留年せずに済んだんだ。
こんなダサイチョーカー、やめて欲しい。
俺に似合わないんだから。
やだよぉ。
死にたくないよぉ。
「ウッフフ」
笑い声が聞こえた。
女のような、男のような、不思議な声音だった。
「…だれ…?」
顔を上げると、目の前の床に笑う首が落ちていた。
「…ヒッ…!?」
思わず仰け反るが、壁に阻まれ後ろには下がれなかった。
「あぁン、落ち着いて。ここから出してあげに来たのよ」
「……え……!」
ずるずると、床から生えるように、身体の上半身が見えてきた。
呆然と見ているうちに、つま先まで露わになった。
十歳から十五歳くらいの、少女に見えた。
華奢な身体には凹凸がなく、すとんとしていた。
服は軍服のような詰襟で、体型はよくわからない。
ヒールの高いブーツを履いているようだった。
顔は、とても美しい。
薄いピンクのような色をした髪が、複雑に編み込まれ、ツインテールにされていた。
毛先に行くに従って黒くなっており、染めているのかと思ったが、違和感は覚えなかった。
腰ほどある長さの髪を後ろへと払いのけ、嫣然と微笑む姿は、少女というよりは娼婦のようにも見える。
「どうする?オースティンだっけ?アイツに会いたいなら、連れて行ってあげるけど?」
オシウィアド王国にいる男の名前を、少女は言った。
紅い瞳が細められ、口紅を塗ったような赤い唇が弧を描く。
迷うことなど、微塵もなかった。
「行く。連れて行って!」
「ウッフフ。イイ返事。それでこそ、人間よね」
これだけの会話をしていても牢番の反応がないことに、ニコルは気づかない。
防音魔術の上に目くらましがかけられているのだが、ニコルが知る必要もないことだった。
「アタシはとっても親切なの」
オースティンの下僕で、俺を助けに来てくれたのだと、ニコルは解釈した。
「ありがとう。俺のこと、ニコルって呼んでいいよ!アンタの名前何?」
ネイルの施された華奢な手を差し出され、ニコルは素直に手を乗せた。
瞬間、力を込めて握りしめられ、ニコルは悲鳴を上げる。
「いっ…いたい、痛い、いたいよぉ!!なに、何するの!!」
潰されるかと思うような力に涙が溢れ、思わず叫ぶ。
少女は、ふと力を抜いた。
「あらぁ、力が入っちゃった?いっけない、虫にイラついちゃったわ!」
「…や、やめてよぉ。俺の手、潰れちゃうとこだったんだから」
「そうねぇ。じゃ、行きましょうか」
どうやってここから出るんだろう、なんて、思う暇もなかった。
気づけばニコルは、知らない屋敷の中にいた。
698
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる