【完結】前世ハイスペックブサメンの俺、今世ではイージーモードを歩みたい

影清

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178. 北方都市で頑張る俺8

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 勇者パーティーとは別行動を取り、魔獣の少ないルートを選んで進んでいる、聖女とご友人を護衛する役目を引き受けた、Aランク冒険者の臨時リーダー、ヒョウ獣人のヤシュバルは、聖女達の行動に内心頭を抱えていた。
 当初の依頼は、「勇者パーティーが魔族領でレベル上げをする際に、聖女とご友人の護衛をする」だった。
 その依頼自体が首を傾げるものであったが、護衛ならば、楽な仕事だと思った。
 魔族領でレベル上げが出来る程に強いパーティー、ということは、ヤシュバル達と同レベルの強さを持つ、ということだ。
 聖女のご友人は、何のスキルも持たない一般人、ということで、聖女にくっついている彼女を護衛すればいいのだろう、と、思っていた。
 
 最初は。

 もう一人、Aランク冒険者の蛇の亜人族、アショクがちょうど育児休業から復帰したタイミングだったので、勘を取り戻すにもちょうどいいかと声をかけた。
 蓋を開けてみればご友人は、弱い人族を連れて大結界を真っ先に越えようとする問題児で、聖女自身も戦わずに傍観しているだけの人物だった。
 勇者パーティーがレベリングを開始しても、聖女とご友人は動かない。
 それどころか、マジックバッグからタープを出し、日除けを設置しろと命令された。
 護衛が任務なので、と断ると、「世話をするのもおまえらの仕事だろ」と、叱責された。
 
 そんな依頼内容ではなかったが、放置すると機嫌を損ねて、チェンジを言い渡されかねない。
 
 Aランク冒険者にとって、依頼の失敗は、イコール信頼の失墜だった。
 後で依頼者に文句を言おうと思いつつ、渋々天幕を張ると、二人はソファに腰掛け、テーブルの上にはジュースと菓子を並べ、冷風の魔道具を設置しながら、ヤシュバル達に暑いから扇げだの、氷を出せだのとさらに要求してくる。

 聖女とは、世界を救ってくれる聖なる存在ではなかったのか。

 便宜上「聖女」と呼ばれてはいるが、召喚されたのは男性の人族である。
 ヤシュバルとアショクに比べれば小さいが、人族にあっては別に小柄、というわけではない。
 幼い子どもでもなく、戦う為に召喚されたはずなのに、一切戦闘には加わらなかった。
 食って寝て、本を読み、軽いストレッチをしているくらいで、聖女とご友人は、何もしていなかった。
 真面目に戦っている勇者達に促されても、動こうとはしなかった。
 翌朝には聖女とご友人は寝坊するようになり、勇者パーティーに置いて行かれるようになったが、慌てることもなく、都市を観光し始めた。
 ヤシュバル達は護衛であるので、それに付き合う。
 
 自分達は、何をやっているのだろう。
  
 魔王討伐は、別に人族のみがやらねばならない、という決まりはなかった。
 過去には獣人族や亜人族も参加したことはある。
 その時最も強い者、才能のある者、が選ばれるとされる。
 Aランク冒険者になって二十年になるヤシュバルは、自分がメンバーに選ばれてもおかしくない、と思っていた。
 Aランク冒険者は、未だに十人しかいない。
 一人引退し、一人が死に、二人がAランク入りして十年程。
 自分達以上に強い存在はいないと思っていた。

 が、勇者パーティーを見て、考えを改めざるを得なかった。

 勇者は聖剣に選ばれて数年で、Aランクの魔獣を倒す程に成長した。
 共に戦う公子は、ヤシュバルよりも強かった。
 最高司祭は、持っている武器がとんでもない化け物で、彼自身も戦うごとに強くなっていた。
 王太子も同じく、最初は危なっかしい動きもあったものの、すぐに順応して成長していた。
 そして、この国の第一王子。
 人族の美醜にはこだわりのない獣人族や亜人族でさえも、この王子は特別なのだと思わせる、圧倒的な雰囲気があった。

 魔性か、祝福か。

 そんな単語が浮かぶほど、毛色の変わった存在だった。
 このパーティーの中で、最も強かった。
 勇者パーティーは、才能に恵まれた者達の集まりだと即座に理解した。
 だからこそ、思う。

 この聖女は、何なのか。

 一般人と変わらぬ弱さで、そのご友人もただの足手まといでしかない。
 こんなのを連れて魔王討伐に赴くのかと思えば、勇者達に心から同情した。
 
 しばらくして、冒険者ギルドから追加依頼が来た。
 迷ったが、報酬は莫大だった。

 聖女のレベル上げのお手伝い。

 さらにAランク冒険者二名を追加しての、破格な待遇に、嫌気がさしていたものの、心が揺れた。
 アショクが金が必要というから、引き受けた。
 そして今。

「お~!さっすがAランクぅ。結構つええじゃん」

 馬鹿にされながら、Aランク下位の魔獣と戦っていた。
 …弱い魔術師と、司祭のレベル上げの、お手伝いの為に。

 自分達のペースで狩ることは出来ず、Aランクの四名は盾役としてのみ存在し、弱くレジストされまくりの魔術師と司祭達が、延々と時間をかけ魔力が尽きるまで攻撃するのを見ながら、ひたすらに攻撃を受けつつ耐える役だった。

 何を、やっているのだろう。

 聖女とご友人は、戦闘中に歩き回ってどこかへ行こうとするので、Aランク二名を護衛に回し、残り二名で魔獣の相手をする、というおかしな状況にもなっていた。
 「聖女様のご意向の通りに」という、冒険者ギルドの依頼を、受けてしまった自分達を呪った。

 なんて馬鹿馬鹿しい依頼。

 莫大な報酬がなければ、こんな依頼は絶対に受けない。
 …いや、それでも、割に合わない。
 ダンジョンに籠もれば、ストレスなく金を稼ぐことが出来るのだから。
 金の為、と言っていたアショクも、元から無口ではあったが、全く喋らなくなっていた。

 Aランク冒険者は、特別扱いをされる存在だった。

 それを望んで、Aランクになった者達である。
 プライドが高く、能力に絶対の自信を持った者達だった。
 
 だからこそ、現状にうんざりし、聖女からの扱いに不満を覚えていた。
 今まで誰も、王族でさえ、Aランク冒険者に対して、無礼な扱いをする者はいなかったのだ。
 憤懣やるかたない思いを飲み込み、嫌々依頼をこなしていた。 

 だから、気づかなかった。
 
 魔術師と司祭の中に、同じローブを着ているだけで、全く戦闘に参加していない者達が混じっている、ということに。





 スルガザキ・ヒメノは、聖女であるカグラザカ・ユズルと共に森の中を歩き回りながら、デートスポットにふさわしい場所を探して、地図を確認していた。
「はぁー…もー、温度調整の魔道具がなかったら、こんなクッソ暑い中、歩いてらんなかったよねぇ」
「…つか、考えてみたら、何で俺まで歩き回らなきゃならんの。おまえだけで良くね?」
 聖女達は情報ギルド長がくれた地図をもとに、印のつけられた場所を一つずつ、歩き回って探していた。
 魔術師達のレベル上げは、別行動する為の口実だった。
 次の休日にはミカエルを落とすと決めたから、協力して欲しいとヒメノが頼み、それなら、と作戦を考えたのがユズルだった。

 護衛としてついている、Aランク冒険者をメインで戦わせるとして、俺らの護衛どうする?

 という問いに対し、「王様に追加をお願いすればいいよ!」と、ソウェイサズ王に魔封書で連絡したのはヒメノだった。
 そこから直接の雇用主であるカノラド王に連絡が行き、冒険者ギルドを通して追加人員を派遣されたのが今朝。
 
 順調にいっていた。

 矢印で書かれた魔獣の少ないルートを通って、一つ目の場所へ。
 都市から最も近い地点で、魔獣も二体しか遭遇しない。
 森の真ん中にぽかりと開いた空間は、小さな池だった。
 水は濁っておらず透明であり、中央に行くに従って底が見えなくなっていく。
 水草がゆらゆらと揺れている様子すら目視でき、爽やかな風の吹き抜ける、休憩場所としては最適な、落ち着いた場所だった。
「おっ涼しいじゃんここ」
 池の畔に腰掛けたユズルが、あぐらをかいて満足げな息を吐いたが、ヒメノは唇を尖らせ首を振った。
「…でも違う」
「あ?」
「ここじゃない」
「…どこ目指してんの?」
「うーん、崖があって、洞窟があるとこ」
 ユズルが手を差し出し、地図を寄越せとジェスチャーするのに従い、素直に地図を渡したが、すぐにユズルは舌打ちした。
「…そんなとこ、地図にチェックねーじゃん」
「でもそこがいいの!ゲームで出てきたイチャポイントなの!」
「…はぁ…だるー。一人で探せばぁ?」
「冷たいこと言うなし。ゆずるんだって、早く逆ハールートに入れって、言ってたじゃん!」
「そうだけどよぉ…」
 正直に言えば、ユズルはヒメノの逆ハーなんてものは、どうでも良かった。
 男同士も当たり前の世界だとは聞いていたが、実際に目の当たりにすると、気色悪い、以外の感想は出なかった。

 ガイジン顔でも、無理なもんは無理ー!

 その気色悪いのが、すぐ近くにいるのがもう、生理的に無理だった。
 
 どんな美人でも、野郎は論外。
 キモイわ。
 滅べばいいのに。

 野郎同士でイチャコラしているまさにそいつらを、ヒメノが狙っているというのだから、笑ってしまう。

 まぁ、見なくて済むようになるなら、そっちの方がいいし。

「じゃー次、とっとと行こうぜ」
「おー!」

 一週間かけて三か所と、崖付近も足を伸ばして場所を探した。
  
「あ、あったー!!ここだよぉ!!」

 ヒメノが嬉しそうに声を上げた場所は、三か所目の印から、さらに北上した場所にあった。
 森の切れ目、目の前に突然のそそり立つ崖。
 雑草の生い茂る地面、崖の前には苔むした罅だらけの石碑があり、周囲には木々しかない。
「…崖つっても、ここでいいんか?」
 ユズルの疑問は最もだったが、ヒメノはスキップしながら石碑を無視して、左の森へと入ろうとした。
「おいおい」
「ここ、すぐそこが、崖なの!下を見るとね、足場があるんだよ!」
「へー…」
 デートスポット、には見えないが、ヒメノがここだ、というのなら、そうなのだろう。
 預かった地図に迷わないよう印を追加し、ユズルもヒメノを追って森へと入ろうとした。
「…ん?」
 石碑の周辺には、雑草がなかった。
 ごつごつとした土と石。
 なんとなく、円形をしていた。
 不思議に思って顔を上げ、石碑に刻まれた文字を読んだ。
 風化して崩れかけてはいたものの、ユズルには馴染みのある言語だった。
「…日本語じゃん」

「ちょっとゆずるん!早く見てよぉ!」

「…今行くって!」
 ヒメノに大声で呼ばれ、視線は石碑から外れたものの、ユズルは思わず笑った。

 おっとぉ、これはイイモノではぁ?

 木々はすぐに途絶え、風の吹き上げる崖の上にヒメノは立って、下を見ていた。
「…そこ?」
「ここ!」
 見下ろすと、そこそこ離れた距離に、足場があった。
「結構ヤバくね?」
「ミカエルなら、これくらい大丈夫だよぉ!」
「…そうかぁ?おまえも落ちるんだよな?…死なん?」
「…あっ」
「あ、じゃねーわ」
 今気づいた、と言わんばかりに顔を青ざめさせたヒメノに、ユズルはため息で返した。
「ゲームならまぁ、死なねーんだろうけどよ、けどこれ、事故らん?俺さすがにおまえが墜落死とか、笑える気がしねんだけど」
「……う、うーん…」
 身震いし、自身の体を抱きしめるようにして腕をさする彼女に、ユズルは一つの提案をした。

「さっき、おもろいもん見っけたから、そっちにしねぇ?」
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