【完結】前世ハイスペックブサメンの俺、今世ではイージーモードを歩みたい

影清

文字の大きさ
214 / 311

210. 新たな仲間を迎えた俺2

しおりを挟む
 いち早く立ち直ったのはミカエルだったが、なんと言うべきか考えてしまった。
 シャリエルの妹のことを知っているのは、ここではシャリエルとミカエルだけのはずである。
 
 なのに、ご友人の口からその言葉が出てくるなんて。

 シャリエルから視線を向けられたが、ミカエルは視線で否定した。
 
 言うわけがない。

 そして、言ったとするならば、ご友人の発言はおかしかった。

 彼女は、「妹の死体はどこにあるか」と問うたのだ。

 それが意味する所は、一つ。
 やはりご友人は、「逆ハールート」でゲームをプレイしていて、シャリエルを仲間に入れる過程で、「妹の死」は必要な条件だということを、知っているということだ。
 シャリエルは無言を通し、ミカエルも沈黙した。
 そうすると意味がわからないバージル達が、困惑した様子でシャリエルを見て、ご友人へと視線を移す。
「シャリエル王子の妹君の死体…とは?」
 質問されても答えることなく、ご友人は周辺を見回して、がっかりしたようにため息をついた。
「ないねー。なんでだろー?」
「…どういうこと?」
 続けて問われ、ご友人がバージルのそばへ歩み寄り、両手を胸の前で組んで、上目遣いに見上げた。
「あっバージル、えっとねぇ。神様のお告げがあってぇ!ホントは前回来た時にそうなるはずだったんだけどぉ、…あっあれあれ。前に見つけた、あの領主の死体が魔族でね」
「は?そんなこと、聞いてないけど」
「だってぇ、魔石もアイテムも手に入らなかったしぃ。めっちゃ高く売れるはずだったのに!」
「……それで?」
 バージルの声が一段低くなったが、ご友人は気づかず続けた。
「あの魔族がぁ、シャリエルの妹を誘拐してぇ、シャリエルが妹を取り返そうとしたんだけどぉ、…あっこれ以上はシャリエルがかわいそうだから…」
「……」
 バージル達の視線がシャリエルへと向かったが、シャリエルは無表情のまま立っていた。
 また視線を戻し、ご友人に先を促す。
「それで?」
「魔族と妹は、一緒にいるはずなんだよねぇ。でもいなかったからぁ、どうしたのかなぁって」
「なるほど…。…シャリエル王子、ご友人殿の話は本当でしょうか?」
 三度シャリエルへと視線が集中し、シャリエルは仕方なく頷いた。
「妹はすでに国へ連れて帰り、世界樹へと還った」
「…そう…だったのですか」
「えっもしかして魔族、シャリエルが殺したの?妹ごと?」
「…ご友人殿。もう少し言葉を選んで」
「それだと話が変わっちゃうじゃん!自分では殺せないから、聖女達に殺してくれってお願いする流れでしょ?」
「……」
 ミカエルは、苦々しい思いでご友人を見ていた。
 
 ゲームの流れでは、そうなのだろう。

 実際、ミカエルが手出しをしなければ、そうなっていたのだろう。
 勇者の聖剣…神器と呼ばれる武器達には、呪詛や瘴気など、致死性のあるデバフを無効化出来る祝福がかかっていた。
 魔族の呪詛を気にすることなく、倒すことが出来ただろう。
 そうしたら、流れでシャリエルに感謝され、エルフの国へ招かれていたのは、アベル達だったはずだ。
 知らなかったとはいえ、ミカエルが先に解決をしてしまった。

 でも。
 人を人とも思わない言い方をするご友人に、シャリエルが感謝することにならなくて、良かったと思う。

「……何を言っているのかわからないが」 
 シャリエルは眉を寄せ、不快とも困惑とも取れる微妙な表情を浮かべたものの、口調は淡々としていた。
「魔族は私が倒したし、妹を連れ帰ったのも私だが」
「…えっ?シャリエルが?」
 ご友人が目を瞠り、意外と言いたげに口を開けた。
「戦利品は、倒した者に占有権がある。まさか寄越せとは言わないだろうな?」
「…えっ…あのアイテム、めっちゃいいヤツなんだけど…。うーん…まぁ、シャリエルが持ってるならいっかぁ。…でもそしたら、どうやって仲間になるの?」
「……」
 
 この流れでよく言えたな。

 一斉に気まずい空気が流れたが、シャリエルは気にすることなくミカエルへと顔を向けた。
「仲間になって欲しいのか?」
「…え、あ」
 いい意味で空気を読まず、強引に話を戻してくれたシャリエルに感謝しつつ、ミカエルは頷いた。

 せっかくの機会を、逃してはいけない。

「はい。さっき言おうとしていたんですが、良かったら僕達と一緒に、魔王討伐に参加して頂けないかと」
「そうか。わかった、参加しよう」
「早っ」
「え?あー…。…私とミカエルの仲だから…?」
「う、うーん。…そう、…そうですね?ありがとう、ございますシャリエルさん!」 
 台本は、あらかじめ作っていた。
 予定調和ではあるものの、違和感なく仲間に入ってもらえるような筋書きは、あったのだ。
 
 シャリエルさん、台詞忘れたな?

 エルフの国で一緒に過ごし、ミカエルの人となりを理解してくれて、魔王自体も世界の脅威になり得る存在であるから、協力することもやぶさかではない、というようなことを、言うはずだった。

 省略しすぎ!
 まぁ意味は通じたので、良しとしよう。

「えっやったぁ!シャリエル、仲間に入ったぁ!これからよろしくねっ」
 なぜかご友人が、自分の手柄かのようにシャリエルにすり寄っていたが、シャリエルは視線を向けなかった。
「シャリエルさん、バージルがパーティーリーダーです」
「よろしくお願いします、シャリエル王子」
「よろしく。王子は不要だ」
「…では、俺のこともバージルと」
「わかった」
 固く握手を交わし、アベルとロベルト、ジーンもそこに加わっていた。
 ミカエルが「さん」付けで呼んでいるので、皆からも「さん」付けで呼ばれるようになるシャリエルだったが、嫌な顔はしなかった。
 アベルもロベルトも名前で呼んで欲しいということで、勇者一行は聖女とご友人を除いて、皆名前で呼び合うことになるのだが、ご友人だけは不満そうだった。
「姫も、姫って呼んでよぉ!」
「聖女殿とご友人殿は、異世界からのお客人だから。魔王討伐まではね」
 バージルにあしらわれ、「まだ好感度がマックスじゃないってことぉ!?」と一人で考え込んでいた。

 聖女だけは騎士団員に囲まれて、ずっと部屋の端で椅子に座って菓子を食べ、昼寝をして寛いでいた。





 シャリエルは週末に行われている、アベル達のダンジョン攻略に参加することになり、冬期休暇には魔族領でSランクの魔獣を本格的に狩れるよう、レベル上げを頑張ることになった。
 村長に任務完了を報告してから皇城に戻ったが、予定より二日早かったにも関わらず、ジルはニーズヘッグの魔石の売買契約書を、作成してくれていた。
 ヴェルンドの紹介で、ドワーフ族の鑑定士が、正確な鑑定をしてくれたらしい。
 冒険者ギルドのギルドマスターが、喜んでいた。
 やはり百年前の魔王の魔石よりも価値が遙かに高いということで、白金貨千枚の値がついていた。
 金貨百枚で、白金貨一枚の価値である。
 金貨一枚で平民家族が一ヶ月生活出来るのだから、ニーズヘッグの魔石の価値は恐ろしいものだった。
 契約書を交わしながら、立会人のギルドマスターが呟いた言葉が、忘れられない。

「ミカエル王子殿下は、すでに魔王より強いということでは…?」
「…いやぁ…どうでしょう…」

 ニーズヘッグより魔王が弱いのなら、妥協せずレベル上げを頑張っている皆なら、確実に倒せるだろう。

 ありがたいことだった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

処理中です...