【完結】前世ハイスペックブサメンの俺、今世ではイージーモードを歩みたい

影清

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209. 新たな仲間を迎えた俺

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 廃屋敷周辺、広範囲に張られた結界が解かれた後も、魔獣はその場から動こうとはせず、ダンジョン内の魔獣の挙動のように、近場をうろつくだけだった。
「…廃屋敷を拠点にした、というだけで、魔獣達に動きがないというのは、本当だったんですね」
 廃屋敷の手前でアベルが困惑気味に呟き、シャリエルが頷いた。
「結界は不要と言ったんだが、村人が安心するからとミカエルが、…」
 ミカエルがすかさず視線を送ると、シャリエルがあからさまに視線を逸らした。
「え?ミカエル王子殿下ですか?」
「いや、…間違えた。皇帝に、依頼された」
「?そうですか。確かに、あるとないとでは安心感が違いますよね!それにしても、帝国の皇帝陛下は、エルフ族の王子殿下とも親しくていらっしゃるんですね…!」
「親しくはないが、まぁ」
「ご迷惑でなければ、エルフ族のことをもっと教えて頂けませんか?」
「答えられる範囲であれば」
 
 うっかりさんは健在でした。
 気をつけて!
 シャリエルさん!

 珍しいエルフ族に興味津々のアベルとロベルトがシャリエルに話しかけ、嫌がることなくシャリエルは真面目に返していた。
 ご友人は、村長宅からずっとシャリエルにベタベタとくっついて回っていたが、我慢の限界を超えたシャリエルに明確に拒否されていた。
 にも関わらず、気にした様子はなく、それどころか聖女の隣でにやにやしながら、「うんうん、ヤンデレるまでは、そうだよねー」と呟いていて、ミカエルが意外な思いでシャリエルを二度見してしまったのは、ついさっきの出来事である。
 
 シャリエルさん、ヤンデレなの?
 どの辺が?
 
 ミカエルは内心とても気にはなりつつ、だが追求する事も出来ないので諦めて、前を歩くバージルに並んで話しかけた。
「見える範囲の魔獣は、それ程強くなさそうですね」
「うん。今回はアベル殿とロベルト王太子を鍛えようと思うんだけど、どう思う?」
「いいと思います」
「あと…シャリエル王子は、仲間になってくれないかな」
「それは僕も思ってました。討伐が完了したら、お願いしてみましょうか」
「そうしよう」
 リーダーとしてメンバーの育成状況を常に考えてくれているバージルは、涼やかな目元を笑みの形に細めた。
「ミカエルは暇だと思うけど」
「ゆっくり見学させてもらいますね」
「そうして」
「…バージルは、いつも最前線で盾役ですね。代われたらいいんですけど」
「俺も強くなりたいから。…でも気持ちは嬉しい。ありがと」
「はい」
 キラキラした格好良いナイト様のバージルは、落ち着いた雰囲気で頼りになった。
 ロベルト王太子と二人で今後の方針を話し合っている時など、すでに王の風格さえ感じられる。
 ロベルト王太子もミカエルと同い年で若いのに、とてもしっかりしていた。
 そんな中にいるからか、アベルがとても可愛く初々しく見えてしまって、ついつい優しく接してしまうのはもう、仕方がない。
 自分に弟がいればきっと、…と考えて、ミカエルは現実に弟がいることを思い出した。

 アルヴィスもデューイも、弟感、ゼロだった。

 おまけにアルヴィスとはすでに一線も超えていて、将来を誓った仲、というやつである。
 昨夜もアルヴィスの宮に転移してすぐ、ベッドに連れ込まれてあれやこれやと…うん、若いって、元気だね。
 なので、勇者殿に弟みを感じてしまうのかもしれない。
 ご友人は本気で「逆ハー」を目指すつもりらしく、皆に平等に(本人はそう思っている)絡みに行っては、遠回しにあしらわれていた。
 今はジーンの腕を取り、ぴったりとくっついてカップルかのように振る舞っていた。
 ジーンは笑みの形に口角は上がっているが、目は一切笑っていない。
 丁寧な口調で、聖教の教義を口に出してはご友人に遮られ、「姫のこと守ってね!」とゴリ押しされていた。
 ご友人は、アベルは好みではないらしく近づかないので、アベルとは今の所大きな軋轢は生じていないことは、救いと言っていいのかどうか。
 魔獣に感知される手前で止まり、バージルから戦闘方針を聞かされてアベルとロベルトは頷き、今回はシャリエルも戦闘に参加してもらって、一緒に戦う。
 パーティーとしての相性を見つつ、強さも確認することが目的だった。
 シャリエルは元から承知しているので、文句を言うはずもなく頷く。
 ジーンとミカエルは後衛だが、ミカエルは戦況を見て参加する。
 それまでは不本意ながら、聖女とご友人の護衛、という役回りだった。
「まずは魔獣がリポップするのかと、リポップまでにどれくらいの時間がかかるかの確認をする。屋敷の外周の魔獣を掃討し、時間を計る」
「はい!」
「今日はそれで終わるかもしれないが、リポップ確認が最重要だ。質問はあるか?」
「ありません!」
 アベルの元気な返答に、バージルも笑った。
「いい返事」
「はい!ありがとうございます!」
 良い師弟関係が出来ているようだった。
 本来はロベルトが師匠の役目だったのだが、アベルの実力はいつのまにか、ロベルトを追い抜いていた。
 実直で真面目な性質のロベルトは、拗ねたり病んだりすることはなかった。
 素直に実力不足を認め、さらなる努力を己に課していた。
 素晴らしい人だと、ミカエルは思う。
 折れることなく努力し続けることが出来るのは、才能だった。
 見習いたいと思っている。
 本当に、良いチームなのだ。

 聖女とご友人以外は。

 ため息をつきたくなるのを堪え、ミカエルは外周の魔獣討伐を始めた彼らを見守りながら、安全地帯で天幕を張り、聖女がくつろいでいるのを横目に、いつでも戦闘に参加出来るよう外で待機していた。
 聖騎士団員と王国騎士団員がついているので、聖女達は安全である。
 ご友人はミカエルのそばにぴったりとくっついて、一緒に天幕でお茶しよう、だとか、周辺を散歩デートしようだとか話しかけて来るが、アベル達に何かあってはいけないから、と角が立たないように断った。 
 不満そうに頬を膨らませたものの、天幕に入って聖女と共にお茶を飲んだり大声で話して笑ったりと、自由にしていた。
 聖女は相変わらず小説を読んで、寝ていた。
 
 ある意味、異世界人の正しい姿なのかもしれない、とミカエルは思う。

 この世界の出来事に、聖女達は関係がない。
 必死に頑張るのはこの世界の者達の仕事であって、彼らには必要な時に、必要なスキルを使ってもらうだけでいい。
 それ以上を、期待する方が間違っているのだ。
 歴代の聖女が献身的に戦ってくれたから、それが当たり前だと錯覚してしまったことは、反省すべきことだろう。

 …だからこそ。
 元の世界に帰ってもらうことも、良心が痛まずに済む。
 
 本当に、ありがたいことだった。 

 一日かけて外周の魔獣を倒し、リポップするかを確認したが、撤収時間になってもリポップはせず、翌朝再びやって来ても、リポップはしていなかった。
「フィールドの魔獣は半日でリポップするのが定説なので、ここの魔獣は、おそらくリポップしないのだろう。今日から、屋敷内の掃討に入る」
「はい!」
 屋敷内のエントランスをまずは駆除し、臨時の休憩地点として聖女とご友人の待機場所を確保している間に、バージル達は少しずつ進んで行った。
 全部屋を確認しながらなので時間はかかったものの、順調だった。
 トラップとして以前来た時に仕掛けられていた宝箱は、撤去されていた。
 罠もなく、いるのは魔獣だけだった。
 魔術師のシャリエルが入ったことで、狭い場所でも魔術で攻撃することが出来、効率が上がった。
 シャリエルの強さは、バージルと同じくらいと思われた。
 アベルより強く、ミカエルよりは弱い。
 …おそらく強者に挑む、というようなチャレンジを、今まで積極的にやって来ていないからだろう、と想像した。
 元からそれだけ強ければ、そうそう苦戦する敵に出会うことはない。
 
 彼はメイン攻略対象者なので、きっとすぐに強くなる。

 ミカエルはアルヴィスと一緒だからこそ、魔族領でレベル上げが出来るし強くなれている。
 ミカエルの実力は、自分一人の手柄では、ないのだ。
 本当に、アルヴィスには感謝していたし、自分がメイン攻略対象者で良かったと思っていた。
 
 屋敷内の魔獣も順調に数を減らしていき、ついに三日目、屋敷の地下に作られた巨大な倉庫に辿り着き、Aランク上位と思しき巨鳥を発見した。

 いや、地下に鳥て。

 ミカエルだけでなく皆がツッコミを入れたが、鳥が入り込んだと思しき天井部分に大きな穴が開いており、陽光が差し込んでいた。
 外周を回った限りでは穴はなかったようなので、少し離れた、屋敷外の地面に開いた穴から侵入したものと思われる。
「ミカエルは待機してて。まずは俺達だけで戦う」
「はい」
 巨鳥は頭から尾にかけて鮮やかな黄色だった。
 翼は黒く、嘴は赤い。
 ウグイスの仲間のようだと思っていたら、天井部分に無数の草で出来た巨大な吊り巣が見えた。

 もしかして、雛がいる…?

 予想通り、巨鳥は母鳥だったようで、体力が減ると悲鳴のような鳴き声を上げ、雛が五羽程一斉に巣から飛んで来て、襲いかかった。
 魔獣なので雛も全て、目が紅い。

 …魔獣の生態系って、どうなってるんだろ。

 見学しながらミカエルがそんなことを考えている間にも、バージル達は雛を倒し、巨鳥も倒していた。
 倒したはずの雛の姿はいつの間にか、消えていた。
「…雛は、ギミックの一部ってこと?」
「そうかも。良かったホントに雛じゃなくて…」
 ミカエルの呟きに答えたバージルは、後味悪そうにため息をついた。
「…確かに」
 ロベルトも重々しく頷き、アベルも疲れたように肩で息をしていた。
「魔獣の死骸は全て回収致しましたし、これで任務は完了でしょうか」
 ジーンの一言に、皆安堵の息を吐いた。
「みなさん、お疲れさまでした」
 ミカエルが声をかけながら合流し、バージルが代表して答える。
「ありがと。ミカエル見ているだけだったね。暇だったでしょ」
「いえ、全く。ちゃんと応援してましたよ」
「そっか」
 そこでバージルと視線を交わし、ミカエルがシャリエルへと向き直る。
「シャリエルさん。良かったら僕達の…」
 だが、最後まで言えなかった。
 ご友人が駆け寄って来て、周囲を見回しながら、爆弾発言を投げ込んだからだった。

「ねぇねぇ、シャリエルの妹の死体はー?」
「……は?」

 いくらなんでも、言い方ってもんがあるでしょ。





 ミカエルだけでなく、その場の空気が凍り付いた。
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