上 下
17 / 27

募集中! 笑顔が絶えないステキな職場です!

しおりを挟む
「殿下! 殿下! しっかりしてください! 泣くのはまだ早いです!」

 あたたかい腕がボクを抱きしめてくれた。

「だってボクはボクはぁ……」

 ああっ……テレーズのやわらかいおっぱいがおしつけられる!

 しあわせ。

「ゲルドリング伯爵令嬢様がここまで話してくださったは、まだなにか打つ手があるということです!」
「え、そうなの?」
「ですから殿下、話を最後まで聞かないと」

 ボクがすがるような目で見上げると。
 灰色メガネ……いや。
 マリアンヌは溜息をついた。

「先程、私は言いましたよね。ローゼンクランツ殿下が嫌いだと。
 その理由は既に述べました。
 ですから、あんなのと結婚する気はありません」
「でも、ボクが王太子じゃなくなったら、あいつが――」
「そもそも、あのバカは大いに勘違いしております。
 私が、王太子妃の位ほしさに、あの鼻持ちならない小才子と結婚する?
 はっ。ばかばかしい。おとといきやがれです!」

 怒ってる。
 あのマリアンヌが怒っている!
 おとといきやがれとか言ってる!

 あ・り・え・な・い!

「で、ですが、王太子の求婚をそでにするなんて出来るはずが」

 マリアンヌはビシッと言い放った。

「私は決めました。オットー殿下。貴方を王にすると」

 ボクは、ポカンとした顔でメガネを見上げた。


 コノメガネハナニヲイッテイルンダ?


 ボクは絶賛『ざまぁ』の最中ですよ?

「私には出来るのです。なぜなら今、この国のまつりごとを仕切っているのは私なのですから」
「どゆこと?」「どういうことなんですか?」

 マリアンヌは咳払いをすると

「自分で言うのもなんですが、私は凄く有能なのです。
 殿下だけでなく、国王陛下も王妃殿下も全ての政務を私に丸投げしてるくらいなのですよ」
「ええええええっっ、ボクだけじゃないのっっ!?」

 びっくり。

 ボクのとこに来た書類の山だけでも目が回りそうなのに。
 父上や母上の分まで……きっとすごい書類の山なんだろう!
 どれくらいすごいかはわからんが、とにかくすいごい!
 書類の洪水だ。いや大洪水だ。
 それじゃ学園に通えるわけがない。

「私が処理する方が万事速く正確で優れているので、いつのまにかこうなっていました。
 大臣達や役人達も私に聞いたほうが話が早いので、私に相談して万事を決めております」
「すごいっ!」

 なんだか灰色メガネの背後から光が差して見える!

「もちろん、いくら私が有能でも一人では無理なので、抜擢した役人や軍人に手伝って貰っております。
 それでも人手が足りないので、庶民からもどしどし集めてます。
 国をよくする素敵な仕事! 笑顔が絶えない職場です!
 老若男女まったく区別しません! 給金よし! 残業代あり!
 休暇あり! 産休あり! 福利厚生完備!
 新年には特別手当も出します!」

 テレーズが感嘆した。

「ステキな職場ですね……」
「今や、私が与えられた離宮は王国の頭脳になっているのです。
 ですから正確さを重んじて申せば、この国の政を仕切っているのは私達です。
 今ここにいるのは、皆、私の同志と呼べる方々ばかりです」
しおりを挟む

処理中です...