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後編
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ガーネット王子の、突然の婚約破棄宣言に、周りがまたザワザワと騒がしくなりました。
ガーネット王子はそれを制するように片手をあげると、厳しい表情で口を開きます。
「フェリス、君はモモカが僕と親しいからって、嫉妬していじめていたそうじゃないか。そんな心の汚い者は、僕の婚約者にふさわしくない! モモカはとても優しくて思いやりのある子なんだ。そんなモモカが僕の婚約者にふさわしい!!」
ピンク色の髪の女の子は、モモカと言う名前のようです。
「まぁ……」
フェリス、両手を口に当て、言葉に詰まります。
「何か申し開きでも、してみたらどうなんだ?」
言葉に詰まったフェリスに、ガーネット王子は、フンッ鼻を鳴らして言います。その声でフェリスは我に返りました。
「まぁっ、まぁっ、これが噂の『婚約破棄』というものですのね!!」
フェリスは、声を弾ませてガーネット王子にキラキラと輝く瞳を向けました。
「なっ!?」
今度はガーネット王子が、言葉に詰まる番でした。まさか、フェリスがこんな反応をするとは思っていなかったのでしょう。
「今、『婚約破棄』を題材にした物語が流行っていますのよ。わたしも何冊か読んでみましたが、とても面白かったです。まさか自分が、物語みたいな経験をするだなんて……とても面白いですわ!!」
城下で流行り始めた『婚約破棄』を題材にした物語は、貴族の令嬢たちにも人気となり、フェリスの通う学園でも流行っていたのです。
「ところで、ガーネットさま、知っていますか?」
フェリスがガーネット王子ににっこりと笑顔で尋ねます。
「な、何をだ?」
フェリスの反応に戸惑っていたガーネット王子は、どもりながら聞き返しました。
「物語では、婚約破棄された側に非がなかった場合、婚約破棄した方がだいたい自滅してしまうのですが……大丈夫ですか?」
フェリスの言葉にガーネット王子はゴクリとのどを鳴らします。
「ふ、ふんっ。何を言っているんだ。モモカが僕に嘘を言うわけがないだろう?」
ということは、フェリスがモモカをいじめたと言うのは、彼女の言葉を鵜呑みしたということです。
「でも、ガーネットさま」
「なんだ!」
ガーネット王子は、苛立たしげに大きな声を出しました。でも、フェリスは動じず笑顔を崩しません。
「わたし、その子……モモカさんと会ったのは今日が初めてなのですが、どうやっていじめたのでしょう?」
そう、フェリスがモモカに会うのは、今が初めてなのです。名前もさっき知ったばかりです。
「そんな、バカな!!」
「疑うのでしたら、聞いてみましょう。『影』」
フェリスが『影』と呼ぶと、スッと音もなく真っ黒い服を着た青年がフェリスの後ろに現れました。
「わたし、モモカさんとやらをいじめていたのかしら?」
「いいえ。フェリスさまと彼女が接触したのは、今が初めてでございます」
影はキッパリとした口調で断言しました。
「そんな言葉、信じられるか!」
ガーネット王子は、フェリスと影をキッと睨み付けます。
「あら、ガーネットさまは、王家直属の『影』の言葉よりも、その子の言葉を信じると言うことですのね?」
「ぐっ……」
ガーネット王子は再び言葉に詰まりました。王家直属の『影』は、その名の通り王家の人間を影ながら守る者です。王さまはガーネット王子の婚約者であるフェリスにも『影』を付けてくれていたのです。
影は、真実しか口に出来ない誓約を掛けられています。なので、今の影の言葉は嘘偽りない真実なのです。
「ふふふっ、ガーネットさま。わたし、これからのことは王さまと王妃さまの判断に従いますわ。それでは、ご機嫌よう」
ガクリと膝を落とすガーネット王子を尻目に、フェリスは広間を後にしました。
広間から出ると、ガーネット王子の側近が走って近づいて来ました。
「フェリスさま、大丈夫ですか?」
心配そうな表情をした彼に、フェリスは微笑みます。
「ええ、わたし婚約を破棄されてしまいましたの」
「それは……」
ガーネット王子の側近の表情が曇ります。
「きっと、お父様はすぐに次の婚約者を決めようとなさると思うの……それで、わたし、貴方を推そうと思っているのよ。ロズベル」
ロズベルと呼ばれたガーネット王子の側近は目を丸くしました。
「ガーネットさまに蔑ろにされていても、周りはみんな見てみぬフリをしていたのに、貴方だけが、わたしを気遣ってくれたもの。だから、貴方となら幸せになれる気がするの。どうかしら?」
目をパチパチと瞬かせたロズベルは、フェリスの言葉を理解すると「光栄です。必ず、幸せにしてみせます」と微笑んだのでした。
ガーネット王子はそれを制するように片手をあげると、厳しい表情で口を開きます。
「フェリス、君はモモカが僕と親しいからって、嫉妬していじめていたそうじゃないか。そんな心の汚い者は、僕の婚約者にふさわしくない! モモカはとても優しくて思いやりのある子なんだ。そんなモモカが僕の婚約者にふさわしい!!」
ピンク色の髪の女の子は、モモカと言う名前のようです。
「まぁ……」
フェリス、両手を口に当て、言葉に詰まります。
「何か申し開きでも、してみたらどうなんだ?」
言葉に詰まったフェリスに、ガーネット王子は、フンッ鼻を鳴らして言います。その声でフェリスは我に返りました。
「まぁっ、まぁっ、これが噂の『婚約破棄』というものですのね!!」
フェリスは、声を弾ませてガーネット王子にキラキラと輝く瞳を向けました。
「なっ!?」
今度はガーネット王子が、言葉に詰まる番でした。まさか、フェリスがこんな反応をするとは思っていなかったのでしょう。
「今、『婚約破棄』を題材にした物語が流行っていますのよ。わたしも何冊か読んでみましたが、とても面白かったです。まさか自分が、物語みたいな経験をするだなんて……とても面白いですわ!!」
城下で流行り始めた『婚約破棄』を題材にした物語は、貴族の令嬢たちにも人気となり、フェリスの通う学園でも流行っていたのです。
「ところで、ガーネットさま、知っていますか?」
フェリスがガーネット王子ににっこりと笑顔で尋ねます。
「な、何をだ?」
フェリスの反応に戸惑っていたガーネット王子は、どもりながら聞き返しました。
「物語では、婚約破棄された側に非がなかった場合、婚約破棄した方がだいたい自滅してしまうのですが……大丈夫ですか?」
フェリスの言葉にガーネット王子はゴクリとのどを鳴らします。
「ふ、ふんっ。何を言っているんだ。モモカが僕に嘘を言うわけがないだろう?」
ということは、フェリスがモモカをいじめたと言うのは、彼女の言葉を鵜呑みしたということです。
「でも、ガーネットさま」
「なんだ!」
ガーネット王子は、苛立たしげに大きな声を出しました。でも、フェリスは動じず笑顔を崩しません。
「わたし、その子……モモカさんと会ったのは今日が初めてなのですが、どうやっていじめたのでしょう?」
そう、フェリスがモモカに会うのは、今が初めてなのです。名前もさっき知ったばかりです。
「そんな、バカな!!」
「疑うのでしたら、聞いてみましょう。『影』」
フェリスが『影』と呼ぶと、スッと音もなく真っ黒い服を着た青年がフェリスの後ろに現れました。
「わたし、モモカさんとやらをいじめていたのかしら?」
「いいえ。フェリスさまと彼女が接触したのは、今が初めてでございます」
影はキッパリとした口調で断言しました。
「そんな言葉、信じられるか!」
ガーネット王子は、フェリスと影をキッと睨み付けます。
「あら、ガーネットさまは、王家直属の『影』の言葉よりも、その子の言葉を信じると言うことですのね?」
「ぐっ……」
ガーネット王子は再び言葉に詰まりました。王家直属の『影』は、その名の通り王家の人間を影ながら守る者です。王さまはガーネット王子の婚約者であるフェリスにも『影』を付けてくれていたのです。
影は、真実しか口に出来ない誓約を掛けられています。なので、今の影の言葉は嘘偽りない真実なのです。
「ふふふっ、ガーネットさま。わたし、これからのことは王さまと王妃さまの判断に従いますわ。それでは、ご機嫌よう」
ガクリと膝を落とすガーネット王子を尻目に、フェリスは広間を後にしました。
広間から出ると、ガーネット王子の側近が走って近づいて来ました。
「フェリスさま、大丈夫ですか?」
心配そうな表情をした彼に、フェリスは微笑みます。
「ええ、わたし婚約を破棄されてしまいましたの」
「それは……」
ガーネット王子の側近の表情が曇ります。
「きっと、お父様はすぐに次の婚約者を決めようとなさると思うの……それで、わたし、貴方を推そうと思っているのよ。ロズベル」
ロズベルと呼ばれたガーネット王子の側近は目を丸くしました。
「ガーネットさまに蔑ろにされていても、周りはみんな見てみぬフリをしていたのに、貴方だけが、わたしを気遣ってくれたもの。だから、貴方となら幸せになれる気がするの。どうかしら?」
目をパチパチと瞬かせたロズベルは、フェリスの言葉を理解すると「光栄です。必ず、幸せにしてみせます」と微笑んだのでした。
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