【完結】森の中の白雪姫

佐倉穂波

文字の大きさ
9 / 9

エピローグ

「そう言えば、お城を出る前にお母さまと鏡が話しているところをみてしまいました」
 ブランシュは、おそるおそる王妃さまに伝えます。

「ああ、アレをみてしまったのね……」
 王妃さまは、きまり悪そうに目を反らします。

「『鏡よ鏡、鏡さん。この国で一番可愛くて美しいのは誰?』そうしたら鏡は答えたわ__『この国で一番可愛くて美しいのは……ブランシュ姫です』って」

「ええ、聞こえました。そうしたら、お母さまが『やっぱり、何回聞いてもブランシュ!』と」
 その様子をみて、ブランシュはお城から出ていくことを決めたのです。

「……そうね、そう言ったわ。そして、その後こう言ったのよ。『そうよね!ブランシュが一番可愛いわ!!』って」

 王妃さまの頬が、恥ずかしそうに赤く染まります。

「あのあと……そうだったんですね。てっきり、私はお母さまに嫌われていると思って……ました」
 ランシュが最後まで王妃さまと鏡の会話を聞いていたら、少なくとも城から出ようという決意はしなかったでしょう。

「きちんとあなたと向かい合わなかった私が悪いの……嫁いですぐの頃の事とはいえ、あなたに嫉妬していたのは事実だし、どうあなたと接したら良いか分からなかったのよ。だから、あなたが森の中に逃げたとわかった時、少しホッとしたの」

 その言葉に、ブランシュはわずかに目を見開きました。

「だけど、陛下はすぐにあなたがいなくなったことに気がついて、探し始めたわ。私は鏡の力でで、あなたが森の中に居るのを知っていたから、森の入口でこの方に、あなたを国外へ逃がしてもらおうと思って『この森の中に、ものすごく可愛い女の子がいるはずだから、探して追い出して』とお願いしたの」

 王妃さまが、チラリとライに目を向けます。

 けれど、ブランシュは森から出て行くことはありませんでした。そのままライと小人たちと穏やかな生活を続けていたのです。

「貴方でしたら、連れて逃げてくれると思ったのに……」

 王妃さまの言葉に、ブランシュは首をかしげました。まるでライの人柄を知っているような口ぶりだったのです。

「もしかして、ブランシュは知らなかったのですか?」
 ブランシュの様子をみて、王妃さまは逆に驚いた顔をしました。

「え?」

「この方は……」

「待って下さい、自分で説明します」

 王妃さまの言葉を遮ったのはライでした。
 ライは、ブランシュに真面目な顔で向き直ります。

「ごめん、ブランシュ。僕の本当の名前はライハルト。この森の向こう側にある国の王子なんだ」

「えっ……!?」

 驚きでブランシュは目を見開きます。

 言われてみれば、ライは狩人にしてはどこか気品を感じさせる雰囲気を持っています。
 それに、狩人なのにお肉のさばき方も分からなかったり、火を起こせなかったりしたのも納得がつきます。

「僕は第三王子で、王位継承には全く興味がなかったんだけど、兄たちの争いに巻き込まれそうになってさ。それが嫌で、森に逃げてきてたんだ」

「そうだったんだ……」

「ブランシュを国に連れていけば、きっとまた面倒なことになると思ったし……それに、森での暮らしが楽しかった。小人たちと一緒に、君と穏やかに過ごす毎日が好きだったんだ。このままずっと続けばいいって、心から思ってた」

 そして、小人たちがライを守護する精霊たちだったということです。

「ボクたちはライを守るために、一緒に住んでいたんだ!」




 その日、王妃さまは城へと戻っていきました。

「陛下には、ブランシュは毒にあたって亡くなったと伝えます」

 そう言った王妃さまの顔は、どこかスッキリとしたものでした。

「いまさら、こんなお願いをするのは間違っていると思っているのだけど……」

 王妃さまは一息ついてから、静かに続けました。

「陛下の心は壊れてしまって、もう国を導く力はないわ。このままでは、国が傾いてしまうのも時間の問題……私は陛下を離宮に移す計画を進めているの。だから、ほとぼりが冷めたら……あなたに、またお城に戻ってきてほしいの」

「お母さま……はい。よろこんで」
 ブランシュは笑顔でうなづきました。



 それから数年後。

 城には、ブランシュの姿がありました。
 そこにはライや小人たちの姿もあります。
 ブランシュはライ__ライハルトと結婚したのです。

 ブランシュとライと小人、そして王妃さまは、にぎやかだけど、穏やかな日々を送ったのでした。
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

金木犀
2025.08.28 金木犀

城出するのに植物図鑑(・Д・)と思い、毒キノコ欲しがるとは危ない子かと思いましたが、1番危ないのは登場しない父だった(笑)
先が読めなくてドキドキ楽しみに読みました。
ありがとうございます😊面白かったです。

解除
penpen
2025.08.20 penpen

児童書大賞に投票させて頂きましたm(_ _)m

2025.08.25 佐倉穂波

ありがとうございます!

解除
マイマイン
2025.08.13 マイマイン

 『森の中の白雪姫』を全部読ませていただきました。白雪姫をいい感じにアレンジしましたね、最後はみんな幸せになれてよかったです。また、新作が出来たら読ませていただきますね。
 私が、今回のきずな児童書大賞に載せた小説も、近いうちに完結しますので、どうかよろしくお願いします。

2025.08.25 佐倉穂波

いつも、ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ふしぎなえんぴつ

八神真哉
児童書・童話
テストが返ってきた。40点だった。 お父さんに見つかったらげんこつだ。 ぼくは、神さまにお願いした。 おさいせんをふんぱつして、「100点取らせてください」と。