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同業者に嫌がらせをしようとした結果(『黒』side)
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「よし、次回配信分の編集終了っと」
長時間のパソコン作業で凝った体を、グッと腕を伸ばしたり、首を回して解す。
趣味で始めた動画配信。
顔出しは恥ずかしいしいからVtuberになったんだけど、割と人気が出て、配信を楽しみにしてくれている人も結構居るから嬉しいものだ。
「おっと、もうこんな時間か」
そろそろ出掛ける準備をするかと、椅子から立ち上がる。
「再録集出すって投稿してたからな。絶対手にいれたい」
前々から推している絵師が、今日のイベントに参加するのだ。尚且つ再録集を出すのなら、ファンとして買わねばならんだろう。
過去作で、運悪く変えなかった本も再録されているから、絶対に手に入れねば。
そう意気込んで、俺は家を出た。
イベント会場に向かう途中。
ある女の姿を見かけた。
有馬由加理。
本業で何かと因縁のある女だ。
何やら友人と重そうな段ボールを運んでいる。
(開場まで時間あるし、ちょっと困らせるてやるか)
普段から、嫌がらせに近い小競り合いをしている間柄──所謂、犬猿の仲だ。
俺は、有馬を困らせてやりたい衝動に駆られた。多分、徹夜明けの謎テンションだったんだと思う。衝動のまま、有馬が玄関に入った隙をついて、彼女の友人が運んでいた段ボールを奪って逃走した。
奪った段ボールはズシッと重たい。
(一体何が入ってるんだ?)
必死に追いかけて来る有馬を、持ち前の身体能力で撒いて、公園の遊具の中に隠れた俺は、段ボールの中身が気になった。
(すごい必死だったし……)
俺は、躊躇うことなくガムテープを剥がして、段ボールを開ける。
中には、ぎっちりと本が入っていた。
そして、その本は見覚えのあるものだった。
「こ、これは──『リマ』の再録集!?」
SNSでチェックしていた同人誌の再録集。
「まさか、あいつが『リマ』なのか……?」
いや、もしかしたら友人の方なのか?
どちらにせよ、俺は推し絵師と遭遇したということだ。
その後、有馬に見付かった俺は、『リマ』=有馬だと確認し、思わずファンであることをカミングアウトしてしまっていた。
そしたら、有馬も俺がフォロワーだと言うことに気が付いた。まさかアカウント名を呼ばれるとは思ってなかった。
同業の嫌な女だと思っていたのに、推しだと分かると、急激に好感度が上がった。
そのまま流れでイベント会場まで荷物を運び、設営・販売・撤収まで手伝っていた。
「あ、俺『リマ』の再録集買う予定だったんだ」
気が付いたのは再録集は完売した後だった。
テンションがズーンと下がった俺にの横で、有馬は鞄をごそごそとしている。
「良かったら、あげるわ……手伝って貰ったし」
目の前に差し出されたのは、完売したはずの再録集。
「いいのか!?帰ってじっくり読む!」
下がったテンションは、一気に回復した。
それから、次のイベントでも手伝って欲しいと言われ、即答で「もちろん!」と応えていた。いや、だって推し絵師の頼みだしな。
その後、何度かイベントを手伝ううちに、イベントだけでなく原稿作業も手伝うようになった。
「最近、推してるVtuberがいるんだけどさ」
そう雑談する有馬が勧めてきたのは、ものすごい見覚えがある動画だった。というか、俺が配信した動画だ。
そのVtuberの正体が俺である事は、恥ずかしいので内緒にしておいたが、お互いに推しているってスゴくないか?
長時間のパソコン作業で凝った体を、グッと腕を伸ばしたり、首を回して解す。
趣味で始めた動画配信。
顔出しは恥ずかしいしいからVtuberになったんだけど、割と人気が出て、配信を楽しみにしてくれている人も結構居るから嬉しいものだ。
「おっと、もうこんな時間か」
そろそろ出掛ける準備をするかと、椅子から立ち上がる。
「再録集出すって投稿してたからな。絶対手にいれたい」
前々から推している絵師が、今日のイベントに参加するのだ。尚且つ再録集を出すのなら、ファンとして買わねばならんだろう。
過去作で、運悪く変えなかった本も再録されているから、絶対に手に入れねば。
そう意気込んで、俺は家を出た。
イベント会場に向かう途中。
ある女の姿を見かけた。
有馬由加理。
本業で何かと因縁のある女だ。
何やら友人と重そうな段ボールを運んでいる。
(開場まで時間あるし、ちょっと困らせるてやるか)
普段から、嫌がらせに近い小競り合いをしている間柄──所謂、犬猿の仲だ。
俺は、有馬を困らせてやりたい衝動に駆られた。多分、徹夜明けの謎テンションだったんだと思う。衝動のまま、有馬が玄関に入った隙をついて、彼女の友人が運んでいた段ボールを奪って逃走した。
奪った段ボールはズシッと重たい。
(一体何が入ってるんだ?)
必死に追いかけて来る有馬を、持ち前の身体能力で撒いて、公園の遊具の中に隠れた俺は、段ボールの中身が気になった。
(すごい必死だったし……)
俺は、躊躇うことなくガムテープを剥がして、段ボールを開ける。
中には、ぎっちりと本が入っていた。
そして、その本は見覚えのあるものだった。
「こ、これは──『リマ』の再録集!?」
SNSでチェックしていた同人誌の再録集。
「まさか、あいつが『リマ』なのか……?」
いや、もしかしたら友人の方なのか?
どちらにせよ、俺は推し絵師と遭遇したということだ。
その後、有馬に見付かった俺は、『リマ』=有馬だと確認し、思わずファンであることをカミングアウトしてしまっていた。
そしたら、有馬も俺がフォロワーだと言うことに気が付いた。まさかアカウント名を呼ばれるとは思ってなかった。
同業の嫌な女だと思っていたのに、推しだと分かると、急激に好感度が上がった。
そのまま流れでイベント会場まで荷物を運び、設営・販売・撤収まで手伝っていた。
「あ、俺『リマ』の再録集買う予定だったんだ」
気が付いたのは再録集は完売した後だった。
テンションがズーンと下がった俺にの横で、有馬は鞄をごそごそとしている。
「良かったら、あげるわ……手伝って貰ったし」
目の前に差し出されたのは、完売したはずの再録集。
「いいのか!?帰ってじっくり読む!」
下がったテンションは、一気に回復した。
それから、次のイベントでも手伝って欲しいと言われ、即答で「もちろん!」と応えていた。いや、だって推し絵師の頼みだしな。
その後、何度かイベントを手伝ううちに、イベントだけでなく原稿作業も手伝うようになった。
「最近、推してるVtuberがいるんだけどさ」
そう雑談する有馬が勧めてきたのは、ものすごい見覚えがある動画だった。というか、俺が配信した動画だ。
そのVtuberの正体が俺である事は、恥ずかしいので内緒にしておいたが、お互いに推しているってスゴくないか?
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