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いつつめ
進化_1
しおりを挟む「――どうだった?」
相変わらず、私は感想をカゲに聞いている。
「良いんじゃない?」
「ホント⁉︎」
嬉しかった。今までは何かしらダメ出しがあったのに、今日はなかったからだ。話としておかしいところもなく、かつ、怖いと思ってくれたのだろう。
「これ、最後僕が『これ以上話の続きがあるのか』みたいなところが話の終わる前にあるけど、この続きは考えてるの?」
「ううん、考えてなかった。……あったほうが良かった?」
「いいや。この続きを作るってなると、もう後はGさんが怨霊みたいになっちゃいそうだから。『サッカーの試合出たかったんだな』『チームメイトは大切だったんだな』『相手チームはどうしても許せなかったんだな』くらいで留めておいて良いんじゃないかな。嫌な話にするつもりはないんだろ?」
「うん、ない」
「じゃあこのままで。直すところはないんじゃない?」
「……やった‼︎」
改めて合格をもらった気分だ。今回の話は、何も手を加えないまま出すことにする。
「カゲが考えてる、私主人公の七不思議って進んでる?」
勿論自分で考えるのも楽しいが、人の話を聞くのも楽しい。ここのところ、考えることに頭を使っていたから、少しくらい休ませたいと思っていた。
「うーん、進んでいるような進んでいないような?」
「意味わかんない」
「難しいんだよ。大トリだから、しっかりした話にしたいんだ。しっかり怖くて、不思議も残って、聞いた人の記憶にずっと残るような……」
「じゃあ私も、五個目の不思議考えるかぁ……。……もう何か、ネタ切れ気味」
「範囲が狭いからね。都市伝説ならもっと色々考えられそうだけど、学校だと、校舎に校庭、文化棟と渡り廊下を渡って別棟、それからプールに……」
「トイレだとベタだよね、昔っから話はあるし」
「階段もそうだよね。『魔の十三階段』ってなかった?」
「あった! えーっと……夜中に階段を数えながらのぼると……あれ、くだると? 昼間は十二段しかない階段が、十三段に増えてるんだよね? その十三段目を踏み込んだ時グニャリと沈む。おかしいな? と思って足元を見ると、その正体は死体だった」
「それそれ。トイレも知ってるだろ?」
「トイレの話は、小学校でも中学校でもあったよね? ……女子だけ?」
「男子トイレにはなかったと思うよ。多分、女子のほうが個室多いからじゃない? 閉鎖空間にそういう話はつきものじゃないか?」
「作ってみる? 男子トイレの話」
「そのために男子トイレへ入るのか?」
「……やっぱやーめた」
話のためでも、男子トイレへは入りたくない。カゲが詳しく教えてくれたらそれで済みそうだが、多分それを言ったら『何事も経験』だとか『自分で見に行って』と言われる気がする。
「あー、鏡は?」
「鏡?」
「そう。鏡も昔から話があると思うけど、使い易いアイテムだよね」
「鏡……ねぇ。鏡はパス!」
「え、何で?」
「私、鏡って苦手なんだよね」
そう、私は鏡が苦手だ。誰もいない時と、夜には覗き込みたくない。私以外のナニカが映りそうで。きっとそれは一番見たくないモノで、見たら絶対に後悔すると思うから。
「苦手克服すれば良いじゃん? それに、ベタな話も面白いでしょ?」
「そうかなぁ……」
カゲに言われると、そうかもしれないと思ってしまう。これが友達の助言と言うものなのだろうか。
「じゃあ、次は鏡にしようかな」
「お、やる気になった?」
「ちょっとだけね。……よし、鏡について、何か学校新聞に載ってないかな」
「そういえば、一時期鏡がなかったって聞いたよ、女子トイレの」
「え、どうして?」
「表向きは悪戯で幾つか割られてたから、全部割られる前に回収したって話だったと思うけど」
「実際は?」
「多分、そこにファイリングされてる学校新聞の中だと思う。新聞部が記事にしてたよ、ちょっと前の話しだったかな、とりあえず探してみてくれる?」
「ありがと!」
私はファイルを漁り、学校新聞の中で校内の鏡に触れている記事を探した。
「あった! これだ!」
見つけたのは『衝撃! 順に割られていくトイレの鏡!!』という見出しの記事だった。トップ記事なのだろう、一面に写真とイラスト付きで書かれている。ご丁寧にどこの階のどこのトイレで何枚割られたか、表にしてあった。
第一発見者へのインタビューに、写真は割られたうえに汚れている鏡がいくつか。イラストは別棟や文化棟含む学校全体が描かれており、各階のトイレのある位置から、吹き出しや矢印が外向きに出ており、その先に鏡の写真が貼ってある。よくもこんなに詳しく調べたな……と思えるほど、しっかりした仕上がりだった。
読む限り、鏡の割られた順に規則はなさそうだった。枚数も一枚だったり二枚だったり、割られていないトイレもある。カゲの言う通りだ。
「あれ? 実際の内容については書かれてない……? ここに書いてあるから、教えてくれたんじゃないの?」
「いや、もっと中身を読んで。細かく。読むのを諦めそうなところ」
「……この、潰れそうなくらいちっちゃい文字?」
「うん。頑張れば読めるよ。一依にはどってことないんじゃない?」
「私、目は良いから」
「羨ましい」
私は物凄く細かい文字を、一生懸命目を凝らして読んだ。画数の多い漢字は自信が持てなかったが、大体は読めた。
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