35 / 103
4.茶会・夜会にて
1.淑女教育
しおりを挟む
ミアは淑女教育を受けるため、そしてエリザベスの話し相手をするために、眼帯を着けて王宮に来ていた。ルークと一緒にジョンの書斎へ転移して、ルークと一緒に王宮に入って、エリザベスの執務室の前まで送ってもらった。
「迎えに来るから、それまではここにいて。エリザベスも居させてくれると思うから」
「うん、わかった」
ルークに立ち去る様子がなくて、ミアは背を向けると、目の前の扉をノックした。返事が聞こえて、ルークの視線を感じながら中へ入ると、中央の机にエリザベス本人が座っていた。王妃がいる前で、振り返ってルークを見るほど、ミアに余裕はなかった。
「いらっしゃい。ミア、そちらへ掛けて」
「はい、失礼します」
エリザベスが、見るからにふかふかで上等な応接用のソファを勧めてくれた。浅く座ると、紅茶と焼菓子が運ばれてくる。
「まずはじめに、謝らせてほしいの」
そう言いながらエリザベスが対面に腰掛け、驚いたミアはティーカップを鳴らしてしまう。
「ああ、びっくりするわよね。私、貴女が文字を読めると思っていなくて。ルークから日頃小説を楽しんでいると聞いて、それこそ驚いたの。あの環境で、どうやって覚えたの? 読み聞かせてもらったわけではないでしょう?」
エリザベスの口調から察するに、ルークから話が通っているのか、ミアの今までの暮らしぶりも知られていて、何も隠す必要はなさそうだった。小説の中では、王家に尋ねられた内容に答えないだけでも不敬になっていたし、正直に答えた。
「弟妹に読み聞かせていたのを、盗み聞いていました」
「詳しく聞いても?」
エリザベスは王妃だ。きっと、何をどう話しても動じないのだろう。そうは思っても、言葉は選びたい。
「乳母が弟妹に話すのを、廊下や外の生垣に隠れて聞きました。ずっと頭の中で繰り返して覚えて、少し時間が経ってから、焼却炉の近くで絵本を見つけたんです」
「焼却炉? ミア、貴女幼かったんでしょう?」
「あ、はい。でも大丈夫です。十歳くらいにはなっていましたし、実際の炉には近付いていないので…、その手前の、これから燃やすものが集まっているところに」
説明が難しいと省略したことで、エリザベスが尋ねてきた。男女どちらなのかは聞いていないけど、未来の王太子を身籠っているエリザベスは、子どもの動きに敏感なのかもしれない。確かに弟妹も、焼却炉には近付かないようにと、使用人や執事に見張られていた。
「ごめんなさい、それで?」
「自分の部屋に絵本を持って帰って、ページを捲りました。なんとなく、挿絵でどのお話かは分かって、覚えていた乳母の声を頼りに文字を追っているうちに、読めるようになりました」
「本を与えられたわけではなかったのね?」
「はい。焼却炉から拾ってきて読んでいました」
エリザベスが紅茶を啜って、静かに置いた。その仕草は優美で、まさに王妃だった。ミアが暮らしていた場所とは、違う世界を生きてきた人だ。ミアが見惚れているうちに、エリザベスは待機させていた使用人を呼び、本を運ばせた。
「ミア、まずはこれを勧めるわ」
「これは…」
「読んだことがあるかしら、セントレ王国の伝説であり開国の歴史とされているものよ」
「いえ、初めてです」
あの屋敷にあったのは、いわゆる大衆小説で流行り物だったのは、なんとなく感じていた。後世に残るような壮大なものではなく、日々の疲れを忘れさせる、軽い読み物だ。だからこそ、ミアも読める程度の難易度だった。
「少し、今ここで読んでみて。勧める理由が分かるから」
勧められたとおり、ミアは初めの数枚をめくり、一文に目をやった。
《偉大なミア女王とセントレ王国建国の記録に基づき構成されています》
(えっ?)
息を呑んだことは、目の前に座るエリザベスには伝わってしまう。
「気付いた? ルークはきっとここから取ったのよ。学校へ行っていれば、この本が文字を読む最初の一歩なの。だからこそ、みんなが知っていて、偉大すぎて、あまり使われない名前なの」
「…『なんとなく』だと」
「そう言うでしょうね、あの性格だもの。誤魔化すのも下手ね、全く誰に似たのでしょう」
そう言って笑うエリザベスが思い浮かべているのは、きっとチャールズだ。そして、チャールズはルークの幼馴染。微笑ましくて、エリザベスにつられて口角を上げてしまう。
「ミアは、もう本名でも『ミア』だけど…、元の名の意味を、知っている?」
「いいえ、でもあまりいい意味ではないのは分かります。そうでなければ、ルークが『ミア』と呼ぶこともなかったと思うので」
エリザベスはこくこくと数回頷いてから、また口を開いた。
「正直に言うわ。教養がある人が聞けば、古語で、暗くてどんよりする雰囲気を表す単語なのは分かるのよ…、生まれてきてほしくなかったと、宣言するような名前。だから、ルークは貴女をミアと呼ぶの。魔術師の番で、ルークにとっては貴女がミア女王だから」
ミアは、反応を返せなかった。ルークにとってのミア女王がどんなふうなのか、何も見えていなかった。
「この方は、一体…」
「伝説として美化されている部分ももちろんあるわ。でも、歴史を知る上でも大事な書物よ。騙されたと思って、読んでみて」
「はい」
持ち帰ることも許可され、全十五巻の伝説をルークに屋敷の私室へ運んでもらった。運ぶといっても、ひとつに括って一緒に転移するだけではあるけど。
伝説のミア女王は、エリザベスの言うとおり、確かに美化されているのだろう。でも、こんなふうに人を導いてきらきらと輝くような人を、ルークがミアと重ねたなんて、信じられなかった。ミアにとっては、ルークこそ光り輝く王子様で、余計に受け入れられなかった。ミアという響きは嫌いではないし、主人であるルークに合わせるのもひとつ、ミアが割り切ったほうがいいことかもしれない。
エリザベスの執務室で行われる淑女教育には、特別な先生がいるわけではなく、エリザベスがいない日もあった。エリザベスの使用人たちが代わる代わる先生となり、慣れないミアにカーテシーや茶会の作法、ドレスの着方を教えてくれた。使用人たちは元々貴族令嬢、仕事としてエリザベス付きの使用人をしている人たちで、その振る舞いに慣れている人が多かった。
確かに、この中だと気楽に話せないのも納得できる。貴族のいざこざは、小説の世界でつきものだ。エリザベスが命を狙われるようなことはないと思いたいけど、現実にも起こっているのかもしれない。文字が読めるだけで、ミアの世界は広がった。あの屋敷での暮らしを支えてくれたのは、小説だった。
身重なエリザベスが執務室に来ることは減ったものの、ドレスを持っていないミアのために、仕立て屋を呼んで何着か注文してくれた。王妃であるエリザベスに「結婚祝いとして受け取って」と言われ、到底断れず、ルークとミアが住む屋敷に届けられることになった。
使用人に着せてもらうことが基本のコルセットやドレスを、ミアはその手順を実際に着付けてもらって見せてもらい、屋敷に帰ってから魔術で練習した。執務室へ行くときは眼帯をしているのもあって、ミアが魔術を使えるのが明らかになるべきではないのは分かっていたから、王宮でひとりで着ることはなかった。
エリザベスはいつ出産となってもいいように、寝室から離れなくなった。それでも変わらず、エリザベスの使用人たちはミアに知識を分けてくれた。こぞってミアが優秀で、教えることが思いつかないと言うようになり、ミアは次第にエリザベスの居る寝室で過ごす時間が増えた。
「私はね、ゴードン家の出身なの。聞いたことはある?」
「いいえ」
「ミアのウェルスリー家と同じ、公爵家よ。貴族社会については?」
「ほぼ知らないです。ルークの家が貴族なことくらいしか…」
「ウィンダム家は魔術爵で、一代限りの貴族だから、貴族の中では一番低い爵位なの」
落ち着いた様子で話すエリザベスの言葉に、ミアは耳を傾けた。
ルークの爵位は一代限りで、当主である父親が亡くなると名乗れなくなる。エリザベスが言うには、もしウィンダム家の当主が亡くなって爵位が使えなくなっても、チャールズがルークに爵位を与えるらしい。「ミアとの婚姻前に永代爵位を与えて、ミアと地位をそろえられたらよかったんだけど」とも言っていた。
もしミアがきちんと学校へ行っていれば、貴族の上下関係を嫌でも目にしたはずだ。下の位である子爵や男爵の爵位を持つ令嬢は、公爵や侯爵の爵位を持つ令嬢の傘下に入ることで守ってもらうらしい。その関係で今もエリザベスの元に残っているのが現在の使用人たちで、エリザベスと学生時代に仲の良かった女性の妹や姪なのだそうだ。彼女たちは婚約するまでここにいるという。
年配の使用人は、婚約前まで王家に仕えていて、当主の不幸などで戻ってきた人で、爵位がなくても仲良くなれる人たちでもあり、信用はしているとのこと。「何かしてほしいことがあれば、伝えてみるといいわ」と言われたが、ルークにすらまだ希望を言い切れないミアには難しかった。
魔術師や騎士の世界でも、貴族の爵位はある程度重視される。もちろん能力も評価されるため、ルークのように貴族下位の爵位でも昇進することはあるが、オッドアイであるのに騎士として働いているルークは例外中の例外で、そもそも例がないらしい。基本的に爵位が高いほうが、潜在的な能力も高いとされ、昇進しやすい。だから、ルークは余計に、矢面に立ちやすい。
エリザベスの体調に配慮して、数日に分けていろんな話を聞いた。やはりミアには、ルークに関わる話が印象に残った。
知れば知るほど、ルークが王子様のように感じた、初日や出会いたてのころの自分が恥ずかしくなる。いろんな経験をしてそれを全て背負って、ルークはミアの前に現れたのだ。屋敷に閉じ込められていたミアは、いかに無知かを改めて思い知った。
ミアがエリザベスやその使用人たちに、勇気を出して頼めたことがひとつだけあった。王宮内図書室の利用許可である。
魔術関連の書物はジョンの書斎で見ることができるが、セントレ王国の歴史や一般学校の教科書など、あの書斎にない本も見たいと思ったのだ。いよいよ出産が近くなり、エリザベスと会えなくなったミアは、ルークと一緒に王宮に来ては、図書室に入り浸った。
「迎えに来るから、それまではここにいて。エリザベスも居させてくれると思うから」
「うん、わかった」
ルークに立ち去る様子がなくて、ミアは背を向けると、目の前の扉をノックした。返事が聞こえて、ルークの視線を感じながら中へ入ると、中央の机にエリザベス本人が座っていた。王妃がいる前で、振り返ってルークを見るほど、ミアに余裕はなかった。
「いらっしゃい。ミア、そちらへ掛けて」
「はい、失礼します」
エリザベスが、見るからにふかふかで上等な応接用のソファを勧めてくれた。浅く座ると、紅茶と焼菓子が運ばれてくる。
「まずはじめに、謝らせてほしいの」
そう言いながらエリザベスが対面に腰掛け、驚いたミアはティーカップを鳴らしてしまう。
「ああ、びっくりするわよね。私、貴女が文字を読めると思っていなくて。ルークから日頃小説を楽しんでいると聞いて、それこそ驚いたの。あの環境で、どうやって覚えたの? 読み聞かせてもらったわけではないでしょう?」
エリザベスの口調から察するに、ルークから話が通っているのか、ミアの今までの暮らしぶりも知られていて、何も隠す必要はなさそうだった。小説の中では、王家に尋ねられた内容に答えないだけでも不敬になっていたし、正直に答えた。
「弟妹に読み聞かせていたのを、盗み聞いていました」
「詳しく聞いても?」
エリザベスは王妃だ。きっと、何をどう話しても動じないのだろう。そうは思っても、言葉は選びたい。
「乳母が弟妹に話すのを、廊下や外の生垣に隠れて聞きました。ずっと頭の中で繰り返して覚えて、少し時間が経ってから、焼却炉の近くで絵本を見つけたんです」
「焼却炉? ミア、貴女幼かったんでしょう?」
「あ、はい。でも大丈夫です。十歳くらいにはなっていましたし、実際の炉には近付いていないので…、その手前の、これから燃やすものが集まっているところに」
説明が難しいと省略したことで、エリザベスが尋ねてきた。男女どちらなのかは聞いていないけど、未来の王太子を身籠っているエリザベスは、子どもの動きに敏感なのかもしれない。確かに弟妹も、焼却炉には近付かないようにと、使用人や執事に見張られていた。
「ごめんなさい、それで?」
「自分の部屋に絵本を持って帰って、ページを捲りました。なんとなく、挿絵でどのお話かは分かって、覚えていた乳母の声を頼りに文字を追っているうちに、読めるようになりました」
「本を与えられたわけではなかったのね?」
「はい。焼却炉から拾ってきて読んでいました」
エリザベスが紅茶を啜って、静かに置いた。その仕草は優美で、まさに王妃だった。ミアが暮らしていた場所とは、違う世界を生きてきた人だ。ミアが見惚れているうちに、エリザベスは待機させていた使用人を呼び、本を運ばせた。
「ミア、まずはこれを勧めるわ」
「これは…」
「読んだことがあるかしら、セントレ王国の伝説であり開国の歴史とされているものよ」
「いえ、初めてです」
あの屋敷にあったのは、いわゆる大衆小説で流行り物だったのは、なんとなく感じていた。後世に残るような壮大なものではなく、日々の疲れを忘れさせる、軽い読み物だ。だからこそ、ミアも読める程度の難易度だった。
「少し、今ここで読んでみて。勧める理由が分かるから」
勧められたとおり、ミアは初めの数枚をめくり、一文に目をやった。
《偉大なミア女王とセントレ王国建国の記録に基づき構成されています》
(えっ?)
息を呑んだことは、目の前に座るエリザベスには伝わってしまう。
「気付いた? ルークはきっとここから取ったのよ。学校へ行っていれば、この本が文字を読む最初の一歩なの。だからこそ、みんなが知っていて、偉大すぎて、あまり使われない名前なの」
「…『なんとなく』だと」
「そう言うでしょうね、あの性格だもの。誤魔化すのも下手ね、全く誰に似たのでしょう」
そう言って笑うエリザベスが思い浮かべているのは、きっとチャールズだ。そして、チャールズはルークの幼馴染。微笑ましくて、エリザベスにつられて口角を上げてしまう。
「ミアは、もう本名でも『ミア』だけど…、元の名の意味を、知っている?」
「いいえ、でもあまりいい意味ではないのは分かります。そうでなければ、ルークが『ミア』と呼ぶこともなかったと思うので」
エリザベスはこくこくと数回頷いてから、また口を開いた。
「正直に言うわ。教養がある人が聞けば、古語で、暗くてどんよりする雰囲気を表す単語なのは分かるのよ…、生まれてきてほしくなかったと、宣言するような名前。だから、ルークは貴女をミアと呼ぶの。魔術師の番で、ルークにとっては貴女がミア女王だから」
ミアは、反応を返せなかった。ルークにとってのミア女王がどんなふうなのか、何も見えていなかった。
「この方は、一体…」
「伝説として美化されている部分ももちろんあるわ。でも、歴史を知る上でも大事な書物よ。騙されたと思って、読んでみて」
「はい」
持ち帰ることも許可され、全十五巻の伝説をルークに屋敷の私室へ運んでもらった。運ぶといっても、ひとつに括って一緒に転移するだけではあるけど。
伝説のミア女王は、エリザベスの言うとおり、確かに美化されているのだろう。でも、こんなふうに人を導いてきらきらと輝くような人を、ルークがミアと重ねたなんて、信じられなかった。ミアにとっては、ルークこそ光り輝く王子様で、余計に受け入れられなかった。ミアという響きは嫌いではないし、主人であるルークに合わせるのもひとつ、ミアが割り切ったほうがいいことかもしれない。
エリザベスの執務室で行われる淑女教育には、特別な先生がいるわけではなく、エリザベスがいない日もあった。エリザベスの使用人たちが代わる代わる先生となり、慣れないミアにカーテシーや茶会の作法、ドレスの着方を教えてくれた。使用人たちは元々貴族令嬢、仕事としてエリザベス付きの使用人をしている人たちで、その振る舞いに慣れている人が多かった。
確かに、この中だと気楽に話せないのも納得できる。貴族のいざこざは、小説の世界でつきものだ。エリザベスが命を狙われるようなことはないと思いたいけど、現実にも起こっているのかもしれない。文字が読めるだけで、ミアの世界は広がった。あの屋敷での暮らしを支えてくれたのは、小説だった。
身重なエリザベスが執務室に来ることは減ったものの、ドレスを持っていないミアのために、仕立て屋を呼んで何着か注文してくれた。王妃であるエリザベスに「結婚祝いとして受け取って」と言われ、到底断れず、ルークとミアが住む屋敷に届けられることになった。
使用人に着せてもらうことが基本のコルセットやドレスを、ミアはその手順を実際に着付けてもらって見せてもらい、屋敷に帰ってから魔術で練習した。執務室へ行くときは眼帯をしているのもあって、ミアが魔術を使えるのが明らかになるべきではないのは分かっていたから、王宮でひとりで着ることはなかった。
エリザベスはいつ出産となってもいいように、寝室から離れなくなった。それでも変わらず、エリザベスの使用人たちはミアに知識を分けてくれた。こぞってミアが優秀で、教えることが思いつかないと言うようになり、ミアは次第にエリザベスの居る寝室で過ごす時間が増えた。
「私はね、ゴードン家の出身なの。聞いたことはある?」
「いいえ」
「ミアのウェルスリー家と同じ、公爵家よ。貴族社会については?」
「ほぼ知らないです。ルークの家が貴族なことくらいしか…」
「ウィンダム家は魔術爵で、一代限りの貴族だから、貴族の中では一番低い爵位なの」
落ち着いた様子で話すエリザベスの言葉に、ミアは耳を傾けた。
ルークの爵位は一代限りで、当主である父親が亡くなると名乗れなくなる。エリザベスが言うには、もしウィンダム家の当主が亡くなって爵位が使えなくなっても、チャールズがルークに爵位を与えるらしい。「ミアとの婚姻前に永代爵位を与えて、ミアと地位をそろえられたらよかったんだけど」とも言っていた。
もしミアがきちんと学校へ行っていれば、貴族の上下関係を嫌でも目にしたはずだ。下の位である子爵や男爵の爵位を持つ令嬢は、公爵や侯爵の爵位を持つ令嬢の傘下に入ることで守ってもらうらしい。その関係で今もエリザベスの元に残っているのが現在の使用人たちで、エリザベスと学生時代に仲の良かった女性の妹や姪なのだそうだ。彼女たちは婚約するまでここにいるという。
年配の使用人は、婚約前まで王家に仕えていて、当主の不幸などで戻ってきた人で、爵位がなくても仲良くなれる人たちでもあり、信用はしているとのこと。「何かしてほしいことがあれば、伝えてみるといいわ」と言われたが、ルークにすらまだ希望を言い切れないミアには難しかった。
魔術師や騎士の世界でも、貴族の爵位はある程度重視される。もちろん能力も評価されるため、ルークのように貴族下位の爵位でも昇進することはあるが、オッドアイであるのに騎士として働いているルークは例外中の例外で、そもそも例がないらしい。基本的に爵位が高いほうが、潜在的な能力も高いとされ、昇進しやすい。だから、ルークは余計に、矢面に立ちやすい。
エリザベスの体調に配慮して、数日に分けていろんな話を聞いた。やはりミアには、ルークに関わる話が印象に残った。
知れば知るほど、ルークが王子様のように感じた、初日や出会いたてのころの自分が恥ずかしくなる。いろんな経験をしてそれを全て背負って、ルークはミアの前に現れたのだ。屋敷に閉じ込められていたミアは、いかに無知かを改めて思い知った。
ミアがエリザベスやその使用人たちに、勇気を出して頼めたことがひとつだけあった。王宮内図書室の利用許可である。
魔術関連の書物はジョンの書斎で見ることができるが、セントレ王国の歴史や一般学校の教科書など、あの書斎にない本も見たいと思ったのだ。いよいよ出産が近くなり、エリザベスと会えなくなったミアは、ルークと一緒に王宮に来ては、図書室に入り浸った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる