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4.茶会・夜会にて
1.淑女教育
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ミアは淑女教育を受けるため、そしてエリザベスの話し相手をするために、眼帯を着けて王宮に来ていた。ルークと一緒にジョンの書斎へ転移して、ルークと一緒に王宮に入って、エリザベスの執務室の前まで送ってもらった。
「迎えに来るから、それまではここにいて。エリザベスも居させてくれると思うから」
「うん、わかった」
ルークに立ち去る様子がなくて、ミアは背を向けると、目の前の扉をノックした。返事が聞こえて、ルークの視線を感じながら中へ入ると、中央の机にエリザベス本人が座っていた。王妃がいる前で、振り返ってルークを見るほど、ミアに余裕はなかった。
「いらっしゃい。ミア、そちらへ掛けて」
「はい、失礼します」
エリザベスが、見るからにふかふかで上等な応接用のソファを勧めてくれた。浅く座ると、紅茶と焼菓子が運ばれてくる。
「まずはじめに、謝らせてほしいの」
そう言いながらエリザベスが対面に腰掛け、驚いたミアはティーカップを鳴らしてしまう。
「ああ、びっくりするわよね。私、貴女が文字を読めると思っていなくて。ルークから日頃小説を楽しんでいると聞いて、それこそ驚いたの。あの環境で、どうやって覚えたの? 読み聞かせてもらったわけではないでしょう?」
エリザベスの口調から察するに、ルークから話が通っているのか、ミアの今までの暮らしぶりも知られていて、何も隠す必要はなさそうだった。小説の中では、王家に尋ねられた内容に答えないだけでも不敬になっていたし、正直に答えた。
「弟妹に読み聞かせていたのを、盗み聞いていました」
「詳しく聞いても?」
エリザベスは王妃だ。きっと、何をどう話しても動じないのだろう。そうは思っても、言葉は選びたい。
「乳母が弟妹に話すのを、廊下や外の生垣に隠れて聞きました。ずっと頭の中で繰り返して覚えて、少し時間が経ってから、焼却炉の近くで絵本を見つけたんです」
「焼却炉? ミア、貴女幼かったんでしょう?」
「あ、はい。でも大丈夫です。十歳くらいにはなっていましたし、実際の炉には近付いていないので…、その手前の、これから燃やすものが集まっているところに」
説明が難しいと省略したことで、エリザベスが尋ねてきた。男女どちらなのかは聞いていないけど、未来の王太子を身籠っているエリザベスは、子どもの動きに敏感なのかもしれない。確かに弟妹も、焼却炉には近付かないようにと、使用人や執事に見張られていた。
「ごめんなさい、それで?」
「自分の部屋に絵本を持って帰って、ページを捲りました。なんとなく、挿絵でどのお話かは分かって、覚えていた乳母の声を頼りに文字を追っているうちに、読めるようになりました」
「本を与えられたわけではなかったのね?」
「はい。焼却炉から拾ってきて読んでいました」
エリザベスが紅茶を啜って、静かに置いた。その仕草は優美で、まさに王妃だった。ミアが暮らしていた場所とは、違う世界を生きてきた人だ。ミアが見惚れているうちに、エリザベスは待機させていた使用人を呼び、本を運ばせた。
「ミア、まずはこれを勧めるわ」
「これは…」
「読んだことがあるかしら、セントレ王国の伝説であり開国の歴史とされているものよ」
「いえ、初めてです」
あの屋敷にあったのは、いわゆる大衆小説で流行り物だったのは、なんとなく感じていた。後世に残るような壮大なものではなく、日々の疲れを忘れさせる、軽い読み物だ。だからこそ、ミアも読める程度の難易度だった。
「少し、今ここで読んでみて。勧める理由が分かるから」
勧められたとおり、ミアは初めの数枚をめくり、一文に目をやった。
《偉大なミア女王とセントレ王国建国の記録に基づき構成されています》
(えっ?)
息を呑んだことは、目の前に座るエリザベスには伝わってしまう。
「気付いた? ルークはきっとここから取ったのよ。学校へ行っていれば、この本が文字を読む最初の一歩なの。だからこそ、みんなが知っていて、偉大すぎて、あまり使われない名前なの」
「…『なんとなく』だと」
「そう言うでしょうね、あの性格だもの。誤魔化すのも下手ね、全く誰に似たのでしょう」
そう言って笑うエリザベスが思い浮かべているのは、きっとチャールズだ。そして、チャールズはルークの幼馴染。微笑ましくて、エリザベスにつられて口角を上げてしまう。
「ミアは、もう本名でも『ミア』だけど…、元の名の意味を、知っている?」
「いいえ、でもあまりいい意味ではないのは分かります。そうでなければ、ルークが『ミア』と呼ぶこともなかったと思うので」
エリザベスはこくこくと数回頷いてから、また口を開いた。
「正直に言うわ。教養がある人が聞けば、古語で、暗くてどんよりする雰囲気を表す単語なのは分かるのよ…、生まれてきてほしくなかったと、宣言するような名前。だから、ルークは貴女をミアと呼ぶの。魔術師の番で、ルークにとっては貴女がミア女王だから」
ミアは、反応を返せなかった。ルークにとってのミア女王がどんなふうなのか、何も見えていなかった。
「この方は、一体…」
「伝説として美化されている部分ももちろんあるわ。でも、歴史を知る上でも大事な書物よ。騙されたと思って、読んでみて」
「はい」
持ち帰ることも許可され、全十五巻の伝説をルークに屋敷の私室へ運んでもらった。運ぶといっても、ひとつに括って一緒に転移するだけではあるけど。
伝説のミア女王は、エリザベスの言うとおり、確かに美化されているのだろう。でも、こんなふうに人を導いてきらきらと輝くような人を、ルークがミアと重ねたなんて、信じられなかった。ミアにとっては、ルークこそ光り輝く王子様で、余計に受け入れられなかった。ミアという響きは嫌いではないし、主人であるルークに合わせるのもひとつ、ミアが割り切ったほうがいいことかもしれない。
エリザベスの執務室で行われる淑女教育には、特別な先生がいるわけではなく、エリザベスがいない日もあった。エリザベスの使用人たちが代わる代わる先生となり、慣れないミアにカーテシーや茶会の作法、ドレスの着方を教えてくれた。使用人たちは元々貴族令嬢、仕事としてエリザベス付きの使用人をしている人たちで、その振る舞いに慣れている人が多かった。
確かに、この中だと気楽に話せないのも納得できる。貴族のいざこざは、小説の世界でつきものだ。エリザベスが命を狙われるようなことはないと思いたいけど、現実にも起こっているのかもしれない。文字が読めるだけで、ミアの世界は広がった。あの屋敷での暮らしを支えてくれたのは、小説だった。
身重なエリザベスが執務室に来ることは減ったものの、ドレスを持っていないミアのために、仕立て屋を呼んで何着か注文してくれた。王妃であるエリザベスに「結婚祝いとして受け取って」と言われ、到底断れず、ルークとミアが住む屋敷に届けられることになった。
使用人に着せてもらうことが基本のコルセットやドレスを、ミアはその手順を実際に着付けてもらって見せてもらい、屋敷に帰ってから魔術で練習した。執務室へ行くときは眼帯をしているのもあって、ミアが魔術を使えるのが明らかになるべきではないのは分かっていたから、王宮でひとりで着ることはなかった。
エリザベスはいつ出産となってもいいように、寝室から離れなくなった。それでも変わらず、エリザベスの使用人たちはミアに知識を分けてくれた。こぞってミアが優秀で、教えることが思いつかないと言うようになり、ミアは次第にエリザベスの居る寝室で過ごす時間が増えた。
「私はね、ゴードン家の出身なの。聞いたことはある?」
「いいえ」
「ミアのウェルスリー家と同じ、公爵家よ。貴族社会については?」
「ほぼ知らないです。ルークの家が貴族なことくらいしか…」
「ウィンダム家は魔術爵で、一代限りの貴族だから、貴族の中では一番低い爵位なの」
落ち着いた様子で話すエリザベスの言葉に、ミアは耳を傾けた。
ルークの爵位は一代限りで、当主である父親が亡くなると名乗れなくなる。エリザベスが言うには、もしウィンダム家の当主が亡くなって爵位が使えなくなっても、チャールズがルークに爵位を与えるらしい。「ミアとの婚姻前に永代爵位を与えて、ミアと地位をそろえられたらよかったんだけど」とも言っていた。
もしミアがきちんと学校へ行っていれば、貴族の上下関係を嫌でも目にしたはずだ。下の位である子爵や男爵の爵位を持つ令嬢は、公爵や侯爵の爵位を持つ令嬢の傘下に入ることで守ってもらうらしい。その関係で今もエリザベスの元に残っているのが現在の使用人たちで、エリザベスと学生時代に仲の良かった女性の妹や姪なのだそうだ。彼女たちは婚約するまでここにいるという。
年配の使用人は、婚約前まで王家に仕えていて、当主の不幸などで戻ってきた人で、爵位がなくても仲良くなれる人たちでもあり、信用はしているとのこと。「何かしてほしいことがあれば、伝えてみるといいわ」と言われたが、ルークにすらまだ希望を言い切れないミアには難しかった。
魔術師や騎士の世界でも、貴族の爵位はある程度重視される。もちろん能力も評価されるため、ルークのように貴族下位の爵位でも昇進することはあるが、オッドアイであるのに騎士として働いているルークは例外中の例外で、そもそも例がないらしい。基本的に爵位が高いほうが、潜在的な能力も高いとされ、昇進しやすい。だから、ルークは余計に、矢面に立ちやすい。
エリザベスの体調に配慮して、数日に分けていろんな話を聞いた。やはりミアには、ルークに関わる話が印象に残った。
知れば知るほど、ルークが王子様のように感じた、初日や出会いたてのころの自分が恥ずかしくなる。いろんな経験をしてそれを全て背負って、ルークはミアの前に現れたのだ。屋敷に閉じ込められていたミアは、いかに無知かを改めて思い知った。
ミアがエリザベスやその使用人たちに、勇気を出して頼めたことがひとつだけあった。王宮内図書室の利用許可である。
魔術関連の書物はジョンの書斎で見ることができるが、セントレ王国の歴史や一般学校の教科書など、あの書斎にない本も見たいと思ったのだ。いよいよ出産が近くなり、エリザベスと会えなくなったミアは、ルークと一緒に王宮に来ては、図書室に入り浸った。
「迎えに来るから、それまではここにいて。エリザベスも居させてくれると思うから」
「うん、わかった」
ルークに立ち去る様子がなくて、ミアは背を向けると、目の前の扉をノックした。返事が聞こえて、ルークの視線を感じながら中へ入ると、中央の机にエリザベス本人が座っていた。王妃がいる前で、振り返ってルークを見るほど、ミアに余裕はなかった。
「いらっしゃい。ミア、そちらへ掛けて」
「はい、失礼します」
エリザベスが、見るからにふかふかで上等な応接用のソファを勧めてくれた。浅く座ると、紅茶と焼菓子が運ばれてくる。
「まずはじめに、謝らせてほしいの」
そう言いながらエリザベスが対面に腰掛け、驚いたミアはティーカップを鳴らしてしまう。
「ああ、びっくりするわよね。私、貴女が文字を読めると思っていなくて。ルークから日頃小説を楽しんでいると聞いて、それこそ驚いたの。あの環境で、どうやって覚えたの? 読み聞かせてもらったわけではないでしょう?」
エリザベスの口調から察するに、ルークから話が通っているのか、ミアの今までの暮らしぶりも知られていて、何も隠す必要はなさそうだった。小説の中では、王家に尋ねられた内容に答えないだけでも不敬になっていたし、正直に答えた。
「弟妹に読み聞かせていたのを、盗み聞いていました」
「詳しく聞いても?」
エリザベスは王妃だ。きっと、何をどう話しても動じないのだろう。そうは思っても、言葉は選びたい。
「乳母が弟妹に話すのを、廊下や外の生垣に隠れて聞きました。ずっと頭の中で繰り返して覚えて、少し時間が経ってから、焼却炉の近くで絵本を見つけたんです」
「焼却炉? ミア、貴女幼かったんでしょう?」
「あ、はい。でも大丈夫です。十歳くらいにはなっていましたし、実際の炉には近付いていないので…、その手前の、これから燃やすものが集まっているところに」
説明が難しいと省略したことで、エリザベスが尋ねてきた。男女どちらなのかは聞いていないけど、未来の王太子を身籠っているエリザベスは、子どもの動きに敏感なのかもしれない。確かに弟妹も、焼却炉には近付かないようにと、使用人や執事に見張られていた。
「ごめんなさい、それで?」
「自分の部屋に絵本を持って帰って、ページを捲りました。なんとなく、挿絵でどのお話かは分かって、覚えていた乳母の声を頼りに文字を追っているうちに、読めるようになりました」
「本を与えられたわけではなかったのね?」
「はい。焼却炉から拾ってきて読んでいました」
エリザベスが紅茶を啜って、静かに置いた。その仕草は優美で、まさに王妃だった。ミアが暮らしていた場所とは、違う世界を生きてきた人だ。ミアが見惚れているうちに、エリザベスは待機させていた使用人を呼び、本を運ばせた。
「ミア、まずはこれを勧めるわ」
「これは…」
「読んだことがあるかしら、セントレ王国の伝説であり開国の歴史とされているものよ」
「いえ、初めてです」
あの屋敷にあったのは、いわゆる大衆小説で流行り物だったのは、なんとなく感じていた。後世に残るような壮大なものではなく、日々の疲れを忘れさせる、軽い読み物だ。だからこそ、ミアも読める程度の難易度だった。
「少し、今ここで読んでみて。勧める理由が分かるから」
勧められたとおり、ミアは初めの数枚をめくり、一文に目をやった。
《偉大なミア女王とセントレ王国建国の記録に基づき構成されています》
(えっ?)
息を呑んだことは、目の前に座るエリザベスには伝わってしまう。
「気付いた? ルークはきっとここから取ったのよ。学校へ行っていれば、この本が文字を読む最初の一歩なの。だからこそ、みんなが知っていて、偉大すぎて、あまり使われない名前なの」
「…『なんとなく』だと」
「そう言うでしょうね、あの性格だもの。誤魔化すのも下手ね、全く誰に似たのでしょう」
そう言って笑うエリザベスが思い浮かべているのは、きっとチャールズだ。そして、チャールズはルークの幼馴染。微笑ましくて、エリザベスにつられて口角を上げてしまう。
「ミアは、もう本名でも『ミア』だけど…、元の名の意味を、知っている?」
「いいえ、でもあまりいい意味ではないのは分かります。そうでなければ、ルークが『ミア』と呼ぶこともなかったと思うので」
エリザベスはこくこくと数回頷いてから、また口を開いた。
「正直に言うわ。教養がある人が聞けば、古語で、暗くてどんよりする雰囲気を表す単語なのは分かるのよ…、生まれてきてほしくなかったと、宣言するような名前。だから、ルークは貴女をミアと呼ぶの。魔術師の番で、ルークにとっては貴女がミア女王だから」
ミアは、反応を返せなかった。ルークにとってのミア女王がどんなふうなのか、何も見えていなかった。
「この方は、一体…」
「伝説として美化されている部分ももちろんあるわ。でも、歴史を知る上でも大事な書物よ。騙されたと思って、読んでみて」
「はい」
持ち帰ることも許可され、全十五巻の伝説をルークに屋敷の私室へ運んでもらった。運ぶといっても、ひとつに括って一緒に転移するだけではあるけど。
伝説のミア女王は、エリザベスの言うとおり、確かに美化されているのだろう。でも、こんなふうに人を導いてきらきらと輝くような人を、ルークがミアと重ねたなんて、信じられなかった。ミアにとっては、ルークこそ光り輝く王子様で、余計に受け入れられなかった。ミアという響きは嫌いではないし、主人であるルークに合わせるのもひとつ、ミアが割り切ったほうがいいことかもしれない。
エリザベスの執務室で行われる淑女教育には、特別な先生がいるわけではなく、エリザベスがいない日もあった。エリザベスの使用人たちが代わる代わる先生となり、慣れないミアにカーテシーや茶会の作法、ドレスの着方を教えてくれた。使用人たちは元々貴族令嬢、仕事としてエリザベス付きの使用人をしている人たちで、その振る舞いに慣れている人が多かった。
確かに、この中だと気楽に話せないのも納得できる。貴族のいざこざは、小説の世界でつきものだ。エリザベスが命を狙われるようなことはないと思いたいけど、現実にも起こっているのかもしれない。文字が読めるだけで、ミアの世界は広がった。あの屋敷での暮らしを支えてくれたのは、小説だった。
身重なエリザベスが執務室に来ることは減ったものの、ドレスを持っていないミアのために、仕立て屋を呼んで何着か注文してくれた。王妃であるエリザベスに「結婚祝いとして受け取って」と言われ、到底断れず、ルークとミアが住む屋敷に届けられることになった。
使用人に着せてもらうことが基本のコルセットやドレスを、ミアはその手順を実際に着付けてもらって見せてもらい、屋敷に帰ってから魔術で練習した。執務室へ行くときは眼帯をしているのもあって、ミアが魔術を使えるのが明らかになるべきではないのは分かっていたから、王宮でひとりで着ることはなかった。
エリザベスはいつ出産となってもいいように、寝室から離れなくなった。それでも変わらず、エリザベスの使用人たちはミアに知識を分けてくれた。こぞってミアが優秀で、教えることが思いつかないと言うようになり、ミアは次第にエリザベスの居る寝室で過ごす時間が増えた。
「私はね、ゴードン家の出身なの。聞いたことはある?」
「いいえ」
「ミアのウェルスリー家と同じ、公爵家よ。貴族社会については?」
「ほぼ知らないです。ルークの家が貴族なことくらいしか…」
「ウィンダム家は魔術爵で、一代限りの貴族だから、貴族の中では一番低い爵位なの」
落ち着いた様子で話すエリザベスの言葉に、ミアは耳を傾けた。
ルークの爵位は一代限りで、当主である父親が亡くなると名乗れなくなる。エリザベスが言うには、もしウィンダム家の当主が亡くなって爵位が使えなくなっても、チャールズがルークに爵位を与えるらしい。「ミアとの婚姻前に永代爵位を与えて、ミアと地位をそろえられたらよかったんだけど」とも言っていた。
もしミアがきちんと学校へ行っていれば、貴族の上下関係を嫌でも目にしたはずだ。下の位である子爵や男爵の爵位を持つ令嬢は、公爵や侯爵の爵位を持つ令嬢の傘下に入ることで守ってもらうらしい。その関係で今もエリザベスの元に残っているのが現在の使用人たちで、エリザベスと学生時代に仲の良かった女性の妹や姪なのだそうだ。彼女たちは婚約するまでここにいるという。
年配の使用人は、婚約前まで王家に仕えていて、当主の不幸などで戻ってきた人で、爵位がなくても仲良くなれる人たちでもあり、信用はしているとのこと。「何かしてほしいことがあれば、伝えてみるといいわ」と言われたが、ルークにすらまだ希望を言い切れないミアには難しかった。
魔術師や騎士の世界でも、貴族の爵位はある程度重視される。もちろん能力も評価されるため、ルークのように貴族下位の爵位でも昇進することはあるが、オッドアイであるのに騎士として働いているルークは例外中の例外で、そもそも例がないらしい。基本的に爵位が高いほうが、潜在的な能力も高いとされ、昇進しやすい。だから、ルークは余計に、矢面に立ちやすい。
エリザベスの体調に配慮して、数日に分けていろんな話を聞いた。やはりミアには、ルークに関わる話が印象に残った。
知れば知るほど、ルークが王子様のように感じた、初日や出会いたてのころの自分が恥ずかしくなる。いろんな経験をしてそれを全て背負って、ルークはミアの前に現れたのだ。屋敷に閉じ込められていたミアは、いかに無知かを改めて思い知った。
ミアがエリザベスやその使用人たちに、勇気を出して頼めたことがひとつだけあった。王宮内図書室の利用許可である。
魔術関連の書物はジョンの書斎で見ることができるが、セントレ王国の歴史や一般学校の教科書など、あの書斎にない本も見たいと思ったのだ。いよいよ出産が近くなり、エリザベスと会えなくなったミアは、ルークと一緒に王宮に来ては、図書室に入り浸った。
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