とあるオッドアイ魔術師と魔の紋章を持つ少女の、定められた運命

垣崎 奏

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4.茶会・夜会にて

12.夜会への招待

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 チャールズの執務室でいつものように東方についての記録を見直していくが、ウィンダム家に関わることがないかどうかも合わせて確認していく。これからも、何か出てくることはないと思いたい。

「ひさびさの実家はどうだったんだ、ルーク」

 一応、王家公認の茶会だったため、当日のうちにジョンに通信魔術を飛ばし、ウィンダム家の魔術師から攻撃魔術を仕掛けられ反撃して忘却魔術を使ったと話してある。チャールズが聞きたいのはそこではないのだろうと、腹を括る。

「…母親から、兄二人とは異母兄弟、三人とも母親は別の魔術師だと聞きました」
「まあ、予想どおりだな」

 ルークですら予想がついていたことだ。国王であるチャールズと師匠であるジョンが、気付いていないわけがない。

「父親含め、兄二人も任務にはついていないと、母親が言っていました」
「ほう?」
「性格に難があるのは、チャールズへの絡みで察しが付くんですが、生活資金などのルートが謎なんですよね」
「一代爵だから、潤沢な貴族生活は難しいはずだが…、少し、確認しておこう」
「ありがとうございます」

 チャールズは騎士や魔術師の配置に関われる立場だ。普段は隊長格の任命程度だが、王家の権限でたまに隊長格より下の兵の配置も確認するため、特別不自然なことには思われない。重用するルークがウィンダム家である以上、東方との関わりがないことを願うのは、チャールズも同じだ。


 ☆


 ルークとチャールズが危機感を強めるなか、国民はジェームズの誕生に沸いていた。今まで、国王夫妻に子どもが生まれた場合、例外なく国王夫妻がそろって主催となり、夜会が開かれてきたらしい。永代貴族は全員参加、一代貴族は招待制だ。

 今回は、国王夫妻の強い希望もあり、夜会といいつつ昼間に行われる。茶会よりは豪華だが、チェアやテーブルのないホールを使い、軽食と飲み物を楽しむ交流が中心の会にしたいそうだ。

「ふたりにも出てもらうわ」
「え」

 ルークとミアは揃って、王の間に呼び出されていた。対面に座っているのはチャールズとエリザベス、それからエリザベスの腕に抱かれたジェームズだ。衛兵や乳母、使用人はおらず、この夜会には警備として参加するのだろうジョンが、扉のそばに立っている。

「ダンスの訓練も受けてもらうわよ」
「え?」
「当然だ。必ず踊らないといけないわけではないが、夜会に出ずに結婚相手が見つかっている貴族は珍しい。魔術師は番の関係で別といえば別だが、ふたりは公表されていない。親が一代爵でルーク自身は爵位を持たない例外とも言えるが、褒賞を贈った王の顔を立ててほしい」

 ルークが隣を見ると、ミアもルークを見ていて目が合った。互いに困惑を隠せていないが、チャールズにそう言われてしまうと断れない。ルークは騎士学校時代に多少習っているが、ミアは全く初めてだ。週に二回の王宮での業務に、ダンスの訓練が入ったのは言うまでもない。


 ☆


 チャールズとエリザベスは、この会を絶対に主催したいというわけではなかった。やはり、東方の脅威のことを考えると、子どもを公に祝ってほしい気分にはなれない。だが、王子が生まれたのに夜会を開催しないことは、何か懸念があると国民に知られてしまうことにもなる。やらざるを得ないのだ。

 結婚したのは、もう五年も前になる。それでも、第一子をここまで待ったのは、やはり予知に関わる部分である。それを逆算して、タイミングを図った。


 セントレ王国の王家は、予知の結果で子どもの人数を決める。人数を儲けることも可能だが、制限がある。

 王子や王女は基本、公爵として叙されるが、少しでも予知ができると叙すことはできず、予知の遺伝を制限するために独身で、愛人なども持てず、孤独を強いられる。例外は、国王夫妻に予知のできる子が生まれない予知があった場合のみだ。

 そのため、ジョージにもチャールズにも兄弟はいない。ジョージは隠居し人との関わりを最低限減らすことで、予知能力を不意に使うことを避けている。老化とともに見えにくくはなっているが、未だに目の前に立つ人の未来が見えるときがあるらしい。


 今回の王子誕生を祝う会に、ルークとミアを招待したのにも理由がある。ふたりがああいった会を嫌うのは予想がついていたし、実際に反応を見てもそのとおりだった。それでも、国王夫妻はルークとミアに出席してほしかった。

 若くして結婚したルークとミアが、プライベートでは仲良くゆったりとした、手本のように良い雰囲気を持つ夫婦だと、貴族社会に知られてほしいのだ。新聞などにいろいろと書き立てられてしまい、このふたりの世間でのイメージは、現実とはかけ離れてしまっている。

 夜会で見知った関係になっていたとしても、政略結婚も多い貴族社会の婚姻では、夫妻となったあと、仲良く過ごせることは珍しい。

 結婚後の理想像として、ある意味崇められてしまうほうがふたりには都合がいい。オッドアイで人目から離れた穏やかな生活を送るふたりへ、周囲から余計な詮索をしてほしくない。チャールズとエリザベスの意見は一致していて、今回の会の準備にも力が入った。
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