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<2>野営基地にて
将軍エンリルと隊長、その部下が数十人で向かう、大型の討伐だ。エンリルが野営に出るのは、ハッティを亡くして以来初で、前回からは半年が経っていた。
平の武官と医官は数組に分かれ、それぞれ食料や道具と共に馬車で移動するが、上官は単騎での移動が許可されている。エンリルは、訓練以外の野営が初だと言うシャマシュを同じ馬に上げ、野営基地へ入った。
上官と担当医官が一頭に乗ること自体は珍しくないが、久々現場に出るエンリルが新しい担当医官を連れていたことに、驚いた者も多いだろう。むしろ、担当医官がいなければ、上官は戦闘の許可が下りないのだが、平の立場では聞かされない話だ。
「この居室から出ず、待っていてくれればいい。他の者と関わる必要はない」
「かしこまりました。ありがとうございます」
エンリルが武官棟で囲っているため、シャマシュは他の医官と合わせる顔が余計にないだろう。こうでも声を掛けなければ、エンリルのためにと無理をする気がした。
エンリルにとってはふたりめの、もう失いたくない担当医官なのだ。そんなこと、させるわけがない。
野営基地の奥に位置する上官用の居室にシャマシュを残し、エンリルは魔物の目撃情報があった場所へと、部下を引き連れて向かった。
◇
討伐後のエンリルは、下穿きを膨らませて帰った。上官は皆、これが普通だろう。他の隊長も、挨拶すらなくそそくさと居室に散る。
シャマシュの姿を見るなり引き寄せ、抱き締めた。無事でここに居てくれるだけで、どれだけ安らぐか、シャマシュにはきっと分からない。
「え、エンリル様……」
「ん、すまない。大した出血はない。着替えを頼む」
「かしこまりました」
エンリルの身体を拭き終えたシャマシュに、先に武具や手拭の片付けを頼んだ。エンリルが着替える前に抱き着いてしまったため、シャマシュの医官着も替える必要がある。
今回は大型討伐で、処分する物は外に集められる。遅れるとシャマシュが咎を受ける。最終的にはこの野営基地で最上位にいるエンリルの裁量だが、雑念はできるだけ排除しておきたかった。
エンリルは、夜着を身につけずに寝台へ腰掛けた。服を外へ持ち出したついでに水を汲んできたシャマシュが、戻るなりエンリルの足の間に迷わずしゃがみ込む。
「誰かに会ったか?」
「いいえ、置くだけで済みました」
「そうか」
シャマシュは、医官棟で虐げられていたことを隠さなくなった。そこに関しての遠慮がなくなったのが、言葉選びから伝わってくる。
これもひとつ、シャマシュとの信頼関係が築けている証拠だ。エンリルは目を細め、その頭をくしゃくしゃと撫でた。
シャマシュが陰茎をゆっくり確認するように、下から上へと舐め始める。始めから咥えてほしいのは本音だが、シャマシュの顎や首がもたないのも見えていた。
せっかく担当医官を許される立場なのだから、精神的にも身体的にも、互いに無理のない関係を持っていたい。
シャマシュに高められる間、頭を撫でてやると心地良さそうな吐息を漏らす。小さな口に埋まる陰茎に、より熱がこもる。
「……シャマシュ」
名を呼ぶと、シャマシュはゆっくりと、名残惜しいとでも言うように口を離す。足を広げながら、器用にエンリルの太腿へ乗ってくる。その細い腕を首へと案内し背中を支え、重なったエンリルとシャマシュの陰茎を握る。
「んっ……」
「痛くはないか」
「へいき、です」
シャマシュの腰が跳ねるのを、片腕で支える。シャマシュはエンリルの頭を抱えるように、しがみついてくる。まだまだ不慣れでその刺激を上手くいなせず、先に達することも多いが、エンリルにしがみつくと幾分か楽らしい。
「あっ、エンリル、さまっ」
「ん、いいぞ」
「あっ、……っあ!」
シャマシュが射精する間、エンリルは刺激を止めなかった。残念ながら、エンリルの吐精はもう少し先だ。若さもあり、射精後のシャマシュはすぐには落ち着かないため、時間を置いて焦らすと自ら腰を揺らしてくる。
「あ、あっ、エンリルさまっ」
「感じすぎて苦しいか?」
首を横に振るシャマシュが、本心なのか気遣ったのか、エンリルには読めなかった。かといって、今の興奮状態を鎮めるには、出すしかない。止める選択はなかった。
「んんっ……、あ、ああっ」
「ふう……、そろそろだ」
勃ったままのシャマシュを逃さず、ぐっと二本の陰茎を握り扱いていく。エンリルにしがみつくシャマシュが、より密着してくる。武官の太い腕で、細い身体を支えてやる。
「っ……」
エンリルが精液でシャマシュの腹部を汚す間、シャマシュは意識を混濁させながらも潮を吹いた。朦朧としているシャマシュは、自らの状態に気付いていないだろう。ぐったりと身体をエンリルに預けてくる。
「……シャマシュ?」
呼吸音は聞こえてくる。どうやら、意識を飛ばしてしまったらしい。担当医官に無理をさせたため、上官としては戒めなければならないが、それほどまでシャマシュが快感を得ていたことに喜んだのも、また事実だった。
◇
翌朝、エンリルはシャマシュよりも先に起きた。通常であれば、担当医官が諸々の準備を済ませてから上官を起こす。疲れさせてしまったのだから仕方ない。
シャマシュが昨晩、おそらくエンリルが討伐から戻る前に用意してくれた衣類を纏い、そっと幕を開け外を見た。まだ太陽は昇り始めたところで、動き出している者はいない。
もう少しだけ、寝かせておける時間はある。幼い寝顔を眺めるために、ゆっくりと寝台に腰掛けた。
エンリルの世話や手当をするシャマシュの手際は、何も心配するところがなかった。野営の実践は初だったというのに、見事だ。
シャマシュはまだ二十だが、ハッティに認められていたのなら、もっと野営経験を積んでいてもおかしくはない。ただ、出生で周囲と馴染めず、野営に向かう医官には選ばれなかったのだろう。
医官は、軍部の施設の子どもたちの手当から実務を始める。それから王都警備など、難易度の決して高くない任務に就いた武官の手当や所見をし、正しい判断や手当ができると認められた者が、野営へと駆り出される。医官としては十分な出世である。
更に上位の担当医官になろうとすれば血統も関わるが、この事実は明かされておらず、上官と担当医官しか知らないものだ。その常識を覆すほど、医官としての能力が優秀だと評価されたのが、シャマシュだ。
エンリルも、他の上官に宛がう担当医官を選ぶ打ち合わせに参加したことがある。他人が決めた者が、一生を共に過ごす相手となるのだ。施設での日常や訓練での様子など、対の見極めにはその都度慎重になる。
シャマシュが過ごしやすいようにエンリルが整えられることとすれば、野営にできるだけ出ず、執務室での報告や打ち合わせに徹することだろうか。そうは言っても、今回のように、何体も魔物の目撃情報がある場合、将軍職であるエンリルも向かわざるを得ない。
シャマシュが実践経験を積みたいのなら、野営には積極的に参加する方がいい。本来は、担当医官になる前に十二分な手当を野営で経験する。
担当医官が居る上官は、他の医官に身体を見せることはない。担当医官が手当を間違えば、最悪の場合もある。エンリルが諭す必要もなく、シャマシュが自覚していそうなことは救いだ。
幕を閉じるのが甘かったらしく、光が差し込み寝台を照らした。眩しさに顔を顰めたシャマシュは、きっと目を覚ますだろう。すっと、目元に手をかざしてやる。
「シャマシュ」
「……おはようございます、エンリル様。すみません、すぐにご準備を」
「まだ皆は起きていないし、急ぐことはない。身体はどうだ?」
「挿れたわけではありませんし、この程度で音を上げていては担当医官が務まりません」
「そうか」
寝起きの割に、受け答えはしっかりしている。普段と変わらない様子で、ほっとした。身体を起こして寝台から降り、服を着たシャマシュが膝をついて礼を取った。
「人がいないうちに、朝食をもらってきます」
「ああ、頼んだ」
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