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<5-2>シャマシュの衝撃
無事魔物の核を潰し、陽が昇った頃、シャマシュを抱えて居室に戻った。
荒らされた空気はなく、シャマシュを誘い出した医官はさすがに、将軍職のエンリルに手を出すほどの馬鹿ではないらしい。担当医官のシャマシュを陥れようとする時点で、職と地位を廃する以上の罰となるのだが。
身体がべたついているため、シャマシュを寝台に寝かせることができず、一旦床の敷物へ下ろした。
エンリルは上官の中でも薬の扱いに長けている自負がある。上官は担当医官との信頼関係の中で、薬の知識も自然とついていくが、エンリルはハッティから様々教わっていた。
先の報告から解毒薬に目星をつけ、シャマシュの口を親指でこじ開けた後、ゆっくりと口移しで流し込む。担当医官が持ち歩く薬は基本的に、上官が使える分量しかない。小瓶のほとんどをシャマシュに飲ませ、エンリルは口に残った分を水で流し込み、手拭を絞った。
シャマシュの身体に異常は見られない。眠ったままのシャマシュを寝台へそっと移し、医官着を着せる。エンリルもそれなりに身体を拭き、シャマシュを腕に抱えながら隣で眠った。
◇
昼になってもシャマシュが目覚めず、エンリルは食事を食べ損ねたまま野営基地を発った。当然、シャマシュを抱きかかえ馬に乗り、王都へ帰還した。
今回の野営には隊長職がおらず、将軍のエンリルが無所属の武官と医官を数十人率いていた。上官と担当医官の対がエンリルとシャマシュの他におらず、どの医官も、エンリルにもたれかかるシャマシュへの目線は鋭かった。
治療者一覧に名を連ねたエンリルは、しばらく野営には出向かない。大将や隊長との打ち合わせや報告以外はずっと、シャマシュが寝たままの寝台の側で過ごした。
シャマシュは三日経っても、未だ目を覚まさない。シャマシュとエンリルを診た大将の担当医官によれば、衝撃が強すぎたため、脳が休むための期間を欲しているらしい。呼吸や脈に問題はなく、ただ待つしかないと言われた。
ハッティの時と異なるのは、側にいてやれることだ。当然、失いたくはないが、側にいられるだけでも心持ちは落ち着いた。
その間、担当医官に昇格していない医官を調べた。特に、前回の野営で行動を共にした医官の素性を調べ、将軍の地位を使って配置転換をした。シャマシュと関わりが薄くなるよう、別の任務に異動させたのだ。
上官や担当医官は軍部の施設で育つが、両親の顔を知らず孤児として扱われる。国の政策として、上官と担当医官には女が宛てがわれ、強制的な子作りが待っている。
エンリルとハッティも当然、経験済みだ。シャマシュは上官の子ではなく、通常は担当医官にはなれない。エンリルが権力を振るいすぎて、悪目立ちしすぎるのもよくないと分かっていても、守ってやりたい。
出自と年齢を満たしていても担当医官になれない者など、その程度の人間なのだ。軍部にとって大事なのは、担当医官に昇格できる素質を持った医官かどうかで、シャマシュはその血を持たないために、昔から虐げられた。ハッティが気に掛けることで、何とかやっていたのだろう。
「シャマシュ……」
「……エンリル、さま?」
青白い頬に触れながら名を呼ぶと、シャマシュの瞼が動いた。
「っ、シャマシュ、気分はどうだ」
ゆっくりと目を開けたシャマシュは、一番にエンリルを認識してくれたようだ。精神的な衝撃で寝込んでいたため、記憶の錯誤には懸念があった。ゆっくり息を吐き、シャマシュの頬を撫でる。
「エンリル様、ここは……」
「いつもの寝室だ。戻ってきた」
「エンリル様、あれは、魔物はどうなったのです! 僕は……!」
「大丈夫、ちゃんと倒して戻ってきた。まだ動くな、大将の担当医官を呼ぶ」
急に起き上がろうとするシャマシュを、身体でそっと押さえる。ちゅっと音を立てて唇を合わせると、シャマシュは目を大きく開いてから、おとなしく寝台に戻った。
大将の担当医官からの診察を受けたのは、シャマシュだけではない。シャマシュが治療者一覧に載っているため、エンリルを診る医官がいないのだ。
「ふむ、エンリル様も問題なさそうです。このまま普段の生活に戻られて構いません」
「そうか、ご苦労だった。大将にもよろしく伝えてくれ」
「かしこまりました」
担当医官を失礼のないよう見送り、その足でシャマシュの元へ戻る。診察を終え、寝起きではなくしっかりと覚醒したシャマシュが、エンリルを伏し目で見てくる。
「エンリル様、申し訳ありません」
「何? シャマシュを守れなかったのは俺だが?」
「っ……、担当医官なのに、治療することができず……」
「今回はあいこだろう? 気に病むな、復帰が遅れるぞ」
「……僕は、どれくらい眠って?」
「……三日だ」
「三日?」
「シャマシュ、返そうとしなくていいが……、擦ってもいいか? 普段の生活に戻っていいと言われたところだが」
「エンリル様のお好きに。負荷が掛かっても構いません」
「負荷は掛けたくないが、久々、感じさせてくれ」
シャマシュが断ることはないと知って、頼んだ。そうした方が、シャマシュが自責に駆られないとも思った。
シャマシュの白い肌をひたすら舐った。息を途切れさせるシャマシュを見ると、滾って止まらなくなる。シャマシュはエンリルの反応を見て、にっこり微笑む。赤く勃った可愛い陰茎もぴくぴくと動きながら先走りを垂らし、刺激を待ち望んでいた。
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