1 / 1
王様に転生したので、一番美しいひとを妻にしたい!
しおりを挟む高校生だったおれは、いわゆる異世界転生をした。
しかも、ラッキーなことに王様だ(笑)
笑いが止まらない。。
そうなったら、高校生男子の夢はひとつ。
ハーレムだ!と、思うだろう。
ちがう。
おれは、小さな頃から、美しいものが大好きだった。
そして、美しいものを手元において、ながめるのが好きだった。
それは、美しい宝石だったり、美しい花だったり、美しい鳥の羽だったり、
美しい細工箱だったりした。
あるとき、ふと、思った。世界で一番美しいひとがみたいと。
そうして、その人を妻にするのだ。
平凡な男子高校生には、かなわぬ夢だが、今俺は、王様だ。
最高権力者だ。
もう、王様に転生したなら、叶えるきゃないでしょ?
国中におふれを出し、美しい者を召し出した。
国中から、美しい男女が集められたが、俺を満足させる者はいなかった。
それぞれ美しいのだが、あるものは、瞳はうつくしいが、髪はいまひとつだったり、
唇は愛らしいが、鼻の形がもうひとつだったり、
顔立ちは良いのだが、肌があれていたり、体型が今ひとつだったり、
優雅さがかけていたり、俺を満足させる完璧な者は、一人もいなかった。
俺は、美しい者がいなければ、作ればよいのだとおもった。
花の品種改良のように、掛け合わせよと。
後宮に美しい男女を住まわせ、衣食をあたえ囲った。
あとは、勝手に恋をし、子供ができた。
もちろん、俺は手をつけてない。
世界で一番美しいひとが、誕生したとき、それが俺の子だったら、どうする。
さすがの俺も、我が子を妻にするわけにはいかない。
そこまで、鬼畜ではない。変態ではない。
美しい子が次々生まれたが、そうでないものもいた。
それぞれに、きちんとした教育と礼儀作法を教えた。
宰相が、小言を言う。
「こんなに後宮の人数増やして、どうするんですか?
国庫の無駄遣いです。」
なるほど、そうだろう。
後宮の者達の希望を聞いて、働くことを希望する者は、城のメイドや下働きに、
働かずにだらだらと過ごしたいという見目麗しい者は、他国の貢ぎ物に、
特別に美しい者は、王の庶子として、政略結婚の駒にした。
もちろん、本人達の希望は尊重した。
美しい者たちは、結構役に立った。
臣下に褒美を与えるとき、金貨や宝石、領土でなく後宮で生まれた美しい姫を望む者が少なからずいたのだ。
国庫に優しい政策だ。
ざまあみろ、宰相!
ひとは、見目麗しいものに弱い。
かの者達は、国の外交や、国政に大いに役に立った。
***
俺は、いわゆる結婚適齢期となり、王妃を娶ることになった。
いまだ、後宮に俺を満足させるうつくしいひとはあらわれないが、しかたない。
王の責務だ。
王にふさわしい王妃を娶った。
外交的にも、戦略的にも、人柄的にもふさわしい人物だった。
小さい頃からの幼なじみである伯爵家の令嬢だ。
俺が国中から美しい者を集めたとき、
「あんた馬鹿じゃないの?」と、俺を罵った人物だ。
小さい頃からの幼なじみというのは、王である俺にも容赦ない。
俺は、必死に、美しいものが見たいという男のロマンを力説した。
なぜ王がここまで、力説しないといけないか分からないが、がんばった。
深酒もしないし、女遊びもしないし、賭け事もしない、仕事も頑張る。
まるで、サラリーマンの夫が妻に謝るようではないか。
お小遣いも少しで良い。
美しいひとが見たいんだ。ブリーダー魂だ。
邪心なんてないんだ。
(実際は、邪心だらけだが。)
「しょうがないわねえ。」
彼女は、しぶしぶうなづいた。
絶対権力者じゃないのか、俺?
幾年の月日が流れ、たくさんの美しい子供が生まれたが、俺を満足させる者はいなかった。
俺も、晩年といわれる年になった。
「貴方を満足させるものは、この世にはいないのじゃないかしら? もうお諦めになったら?」
と、王妃はいった。
ちょっと、うれしそうだ。
にくたらしい。
彼女は、俺と同じで凡庸な容姿だったが、穏やかで賢い人物だった。
恋愛で始まった結婚ではなかったが、穏やかで温かい愛情が育った。
王という者のならいとして、俺の人生もなだらかなものではなかった。
貴族の策略、暗殺未遂、他国の謀略、天災、いろいろな危機があった。
それを一つ一つ、彼女と乗り越えてきた。
凡庸な容姿の王妃であったが、はしばみ色の瞳は美しかった。
困難に巡り会うたび、
「貴方ならできるわ! さあ、二人で、目にもの見せてあげましょう。」
はしばみ色の瞳をきらりと輝かせた。黒く笑った。
そのたびに、こいつを心底、怒らせてはいかんと、心に誓った。
彼女の勇敢な横顔を見るたびに、この世で一番
『 うつくしいひと 』というのは、このひとのことかもしれないと、
不本意ながら、俺は思うのだった。
俺の望みはとっくにかなっていたのかもしれないと。
24
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。
王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。
教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。
惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。
簡単に裏切る人になんてもう未練はない。
むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる