王様に転生したので、一番美しいひとを妻にしたい!

こうじゃん

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王様に転生したので、一番美しいひとを妻にしたい!

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高校生だったおれは、いわゆる異世界転生をした。



しかも、ラッキーなことに王様だ(笑)


笑いが止まらない。。



そうなったら、高校生男子の夢はひとつ。

ハーレムだ!と、思うだろう。



ちがう。



おれは、小さな頃から、美しいものが大好きだった。

そして、美しいものを手元において、ながめるのが好きだった。



それは、美しい宝石だったり、美しい花だったり、美しい鳥の羽だったり、

美しい細工箱だったりした。





あるとき、ふと、思った。世界で一番美しいひとがみたいと。

そうして、その人を妻にするのだ。



平凡な男子高校生には、かなわぬ夢だが、今俺は、王様だ。

最高権力者だ。



もう、王様に転生したなら、叶えるきゃないでしょ?





国中におふれを出し、美しい者を召し出した。



国中から、美しい男女が集められたが、俺を満足させる者はいなかった。





それぞれ美しいのだが、あるものは、瞳はうつくしいが、髪はいまひとつだったり、



唇は愛らしいが、鼻の形がもうひとつだったり、



顔立ちは良いのだが、肌があれていたり、体型が今ひとつだったり、



優雅さがかけていたり、俺を満足させる完璧な者は、一人もいなかった。





俺は、美しい者がいなければ、作ればよいのだとおもった。



花の品種改良のように、掛け合わせよと。



後宮に美しい男女を住まわせ、衣食をあたえ囲った。

あとは、勝手に恋をし、子供ができた。



もちろん、俺は手をつけてない。

世界で一番美しいひとが、誕生したとき、それが俺の子だったら、どうする。

さすがの俺も、我が子を妻にするわけにはいかない。

そこまで、鬼畜ではない。変態ではない。



美しい子が次々生まれたが、そうでないものもいた。

それぞれに、きちんとした教育と礼儀作法を教えた。



宰相が、小言を言う。

「こんなに後宮の人数増やして、どうするんですか?

 国庫の無駄遣いです。」



なるほど、そうだろう。



後宮の者達の希望を聞いて、働くことを希望する者は、城のメイドや下働きに、

働かずにだらだらと過ごしたいという見目麗しい者は、他国の貢ぎ物に、

特別に美しい者は、王の庶子として、政略結婚の駒にした。



もちろん、本人達の希望は尊重した。



美しい者たちは、結構役に立った。



臣下に褒美を与えるとき、金貨や宝石、領土でなく後宮で生まれた美しい姫を望む者が少なからずいたのだ。

国庫に優しい政策だ。

ざまあみろ、宰相!



ひとは、見目麗しいものに弱い。

かの者達は、国の外交や、国政に大いに役に立った。











***







俺は、いわゆる結婚適齢期となり、王妃を娶ることになった。

いまだ、後宮に俺を満足させるうつくしいひとはあらわれないが、しかたない。

王の責務だ。



王にふさわしい王妃を娶った。

外交的にも、戦略的にも、人柄的にもふさわしい人物だった。

小さい頃からの幼なじみである伯爵家の令嬢だ。



俺が国中から美しい者を集めたとき、

「あんた馬鹿じゃないの?」と、俺を罵った人物だ。



小さい頃からの幼なじみというのは、王である俺にも容赦ない。



俺は、必死に、美しいものが見たいという男のロマンを力説した。

なぜ王がここまで、力説しないといけないか分からないが、がんばった。



深酒もしないし、女遊びもしないし、賭け事もしない、仕事も頑張る。

まるで、サラリーマンの夫が妻に謝るようではないか。

お小遣いも少しで良い。



美しいひとが見たいんだ。ブリーダー魂だ。

邪心なんてないんだ。

(実際は、邪心だらけだが。)



「しょうがないわねえ。」

彼女は、しぶしぶうなづいた。



絶対権力者じゃないのか、俺?





幾年の月日が流れ、たくさんの美しい子供が生まれたが、俺を満足させる者はいなかった。

俺も、晩年といわれる年になった。



「貴方を満足させるものは、この世にはいないのじゃないかしら? もうお諦めになったら?」

と、王妃はいった。

ちょっと、うれしそうだ。

にくたらしい。



彼女は、俺と同じで凡庸な容姿だったが、穏やかで賢い人物だった。

恋愛で始まった結婚ではなかったが、穏やかで温かい愛情が育った。



王という者のならいとして、俺の人生もなだらかなものではなかった。



貴族の策略、暗殺未遂、他国の謀略、天災、いろいろな危機があった。



それを一つ一つ、彼女と乗り越えてきた。

凡庸な容姿の王妃であったが、はしばみ色の瞳は美しかった。



困難に巡り会うたび、



「貴方ならできるわ! さあ、二人で、目にもの見せてあげましょう。」



はしばみ色の瞳をきらりと輝かせた。黒く笑った。

そのたびに、こいつを心底、怒らせてはいかんと、心に誓った。



彼女の勇敢な横顔を見るたびに、この世で一番



『 うつくしいひと 』というのは、このひとのことかもしれないと、

不本意ながら、俺は思うのだった。

俺の望みはとっくにかなっていたのかもしれないと。









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