惚れ薬をつくってみたよ。

こうじゃん

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1 惚れ薬をつくってみたよ。

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私には好きな人がいる。

アンドレ様だ。

金髪、碧眼、むちゃむちゃかっこいいのだ。



対して私は、茶色の髪、茶色の目、平凡。モブだ。



普通にしてては、恋は叶わない。

私は、薬学科。

こっそり、惚れ薬をつくってみたよ。



惚れ薬を作るのは、少々大変だった。

まず、文献が古代パラグリア語で書かれている。解読するのが大変だった。

だが、アンドレ様とイチャイチャするため、頑張った。

人は、欲望にかられて進化するのだ。

ついでに、文献を読み解く過程で、ハゲに効く薬が載っているのを発見し、一部の頭髪の不足しがちな方々に大絶賛を得た。



惚れ薬の材料は、以下の3つ。

薔薇の花びら

妖精の涙

マンドレイクの根



薔薇は学園の花壇から、ちぎってきた。用務員のおじさんにみつかると怒られるので、いないときにちぎるのがコツだ。



妖精は、裏庭によくふよふよしてる。あまり人には見えないらしい。

「心のきれいな人には、見えるのかしら?」とつぶやいたら、妖精が「いやいや、物好きには見えるんだよ。」と、失礼なことを言ったので、ちょっと説経したら、泣いたので、涙をもらっておいた。



マンドレイクは、薬学科の温室に栽培されてる。

マンドレイクは、引き抜くと悲鳴を上げて聞いた人間は発狂して死んでしまう。

犬を茎に繋いでマンドレイクを抜かせるという方法があるが、動物愛護の観点から好ましくない。

しょうがないので、完全音遮断耳当てという魔道具を開発した。

ちなみに、マンドレイク愛好会と犬愛好家から、絶賛された。



材料をぐつぐつ煮て、惚れ薬をつくる。

満月に一晩さらすのを忘れてはいけない。

それをアンドレ様にこっそり盛るため、無味無臭にするのに時間がかかった。



中休みに惚れ薬の入った水筒をもって、アンドレ様がいる演習場へ走った。

クマみたいな男と対戦して汗をかいたアンドレ様に、「差し入れです。」と水筒を差し出すと、横から、

「お、気が利くなあ」と、クマのような男がぐびっと飲んだ。



うわあ、飲んじゃった。飲んじゃったよ、この人。



私の作った惚れ薬は、胃で吸収され、飲んで30分後から効く。

つまり、飲んで30分後に見た者に、恋をする。

効果は1時間だ。

効果を永久にすることも出来るのだが、私も鬼ではない。

アンドレ様と1時間ほど、イチャイチャできれば、その思い出を胸に、一生、生きていこうと思うのだ。

我が家は、男爵家、しかも私は三女。ろくな縁談は来ないだろう。

良くてどっかの貴族のヒヒじじいの後添えとかだ。

お母様は、「あら、学園で自力で探しても良いのよ」と言うが、平凡な容姿で男爵家の三女に、引っかかるアホなど、いるはずもない。



私は、惚れ薬を飲んだクマから水筒を引ったくると、ダッシュで逃げた。



ちなみにクマは、次の時間が馬術だったそうで、30分後に見た栗毛の馬に、

「ああ、なんて素晴らしい栗毛だ!」「豊かなたてがみ、毛づやもいい。目の輝きも良い」

「両足の筋肉がしっかり張っている! つなぎが柔らかい!」と馬をべた褒めしたあと、

「尻の筋肉も丸みを帯びていて良い感じだ!」と、馬の尻をなで回し、イラッとした馬に蹴られて、気絶したそうだ。



少々、良心が痛んだので保健室で寝てるクマに、自作のポーションを差し入れておいた。

妖精の涙入りポーションはよく効いたらしく、非常に感謝された。



第1回。アンドレ様アタック大作戦は失敗したが、クマ男による人体実験により効果があることが証明された。

クマの協力と貴重な犠牲に、感謝する。



**





第2回、アンドレ様アタック大作戦を実施する。



実施に当たって、再度、惚れ薬を作成する。

薔薇とマンドレイクは、前回と同じく入手した。

妖精の涙は、裏庭でふよふよしている妖精達に、『ハーピーの恩返し』の昔話をした。

ハーピーが羽を抜いて機を織るところで、妖精達が羽を押さえてプルプル震えて泣き出したので、大量入手した。

いやいや、羽むしったりしないって。



飲み物は失敗したので、今度は惚れ薬をクッキーに混ぜた。



惚れ薬入りクッキーを、アンドレ様に差し入れしようと持っていたが、またクマが食った。

クマの次の時間は、また馬術だった。また、馬に蹴られたらしい。

クマは、とんでもない馬好きとして、有名になった。



しょうがないので、またポーションを持って保健室へ行った。

クマが遠い目をして、「最近、馬に対する情熱が抑えられない」という。

かわいそうなので、「いやいや、騎士たるもの、馬が無くては戦えません。馬を大事に思う貴方様は、ご立派です」と、なぐさめておいた。



第2回、アンドレ様アタック大作戦は、クマ男の多大な食欲により失敗した。

次回は、クマのいないところで実施したいと思う。





**





第3回、アンドレ様アタック大作戦を実施する。

今回は、クマのいないところで作戦を実施することを、厳守する。



実施に当たって、再度、惚れ薬を作成する。

薔薇とマンドレイクは、前回と同じく入手した。

花壇に、『 薔薇をむしるな 』と立て札が出来ていたのが、心に重くのしかかった。

妖精の涙は、前回、大量入手したので、必要ない。



今度は、学園のダンスパーティーで、盛ろうと思う。

クマがいないところで、惚れ薬が入ったグラスを、アンドレ様に手渡しし、30分後にダンスを申し込むのだ。

女性からのダンスの申し込みを、断わるのは失礼に当たる。

ダンス中は、女性の目を見ながら踊る。

我ながら、完璧な作戦だ。



私は、クマが周囲にいないのを確かめ、アンドレ様に惚れ薬入りのグラスを手渡した。

アンドレ様は、「ありがとう」と微笑むと、皇太子殿下の元へ向かわれた。

何やらお二人で話されている。



**



「殿下、やはり、婚約破棄は実行されるのですか?」

「ああ、パトリシアの横暴は目に余る。我慢できないのだ。緊張したせいか、のどが渇くな」

「よかったら、これを」と、例のグラスが皇太子殿下に差し出された。

皇太子殿下は、惚れ薬入りのグラスを飲み干した。



**



うわあ、アンドレ様、皇太子殿下に、惚れ薬飲ませちゃったよお!!!!!



いかんいかん、30分後に、うっかりした者を見てしまったら、政治問題だ。

何か良い物が無いか、周りを見渡す。

会場の真ん中に、巨匠ミケ・ダビンチ作「踊るバッカス像」がある。

でっぷりしたバッカス神が、浮かれて踊ってる像だ。コレだ!!!!

30分したら、大声をあげて、バッカス神像を指さそう!

殿下もつられて、ご覧になるだろう。

バッカス神像を褒め称えるなら、問題ナッシングだ。



皇太子殿下の動向を見守る。

皇太子殿下の後ろに、最近話題の平民の女の子がそっと寄り添っている。

婚約者のいる男性にも、ベタベタするので評判の悪い子だ。

先日も、殿下の婚約者であるパトリシア様が見るに見かねて、優しく注意しておられたが、今日見た感じでは、効果が無かったようだ。

あんなに優しく気高く見目麗し婚約者がいるのに、殿下ったら、何やってるの?ってかんじ。



パトリシア様が、殿下に呼ばれていらっしゃった。

殿下はパトリシア様に何かお話があるようだ。



そろそろ30分だ。

大声をあげて、バッカス神像を指ささねば!と、思ったとき、殿下がパトリシア様をにらみつけて、声を荒げた。

「パトリシア、お前とのこん、?」

パトリシア様を憎々しげに見つめていた目に、違う熱がこもる。

パトリシア様、婚約者だもんね。見つめてオッケー!



「お前とのこん、?」パトリシア様が、かわいく首をかしげる。

皇太子殿下が情熱的に見つめながら、

「パトリシア、こん、こほん、今夜も貴女は、気高く美しいな。夜の女神のようだ。貴女とダンスを踊る栄誉を私に許してくれるかい?」と、甘くささやかれた。

「まあ、殿下ったら、お上手ですわ」真っ赤になったパトリシア様が、殿下の手をとった。



お二人はうっとりと見つめ合いながら、ダンスへ向かわれた。



あとには、ポッカリと口を開けた平民の女の子が残された。



お二人はその後、続けて2回ダンスを踊り、「今宵は、月がきれいだよ。貴女と月をながめたい」と殿下が、パトリシア様を誘って庭園に出られた。

帰ってきたパトリシア様の紅が少しずれていて、顔を真っ赤にされていたので、何があったかは、一目瞭然だった。

リア充爆発しろ!だ。



お二人の動向を見つめていたら、背後にクマが忍び寄っていた。人生至る所に、危険ありだ。



私をじっとみつめると、クマはこう言った。

「よかったら、俺と踊って頂けませんか?」と。

せっかくのダンスパーティに立ってるだけも何なので、クマの手を取った。



ダンスをしながら、クマは真っ赤な顔をして、しどろもどろに話し始めた。

「貴女の栗毛の豊かな髪、毛づやもいい。貴女の目の輝きも素敵だ。」

「両足の筋肉がしっかりしている! 手が柔らかい!」と淑女ではなく馬を褒めるようなことを言う。

どさくさに紛れて、「尻の筋肉も丸みを帯びていて良い感じだ!」と、尻を触ろうとしたので、キッと睨んでおいた。足も踏んでやった。

「気が強いところも良い」「優しいところも良い」

どうやら、私を口説いているらしい。



平凡な容姿で男爵家の三女に、引っかかるアホがいるようだ。



その後、クマから正式な交際の申し込みがあった。

よく見ると誠実で、いい男だ。



しばらく、惚れ薬を作るのは、やめようかなと思う今日この頃である。







 *end*

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