デスゲーム開拓記~デスゲームは日常ですか？~

とある国の開拓者

国と罪とデスゲーム

西暦2152年。この世界の辺境の国で、とある法律が適応された。
「デスゲーム製作推進法」
この法律が製作される以前、その国は高い犯罪率に悩まされていた。毎日どこかで人が殺されたり、テロが起きたり、まるで地獄のような国だったという。そんな中、当時大統領だった戸嶋が、この法律を製作した。
もともと、世界一の読書家であった戸嶋は、世界中の本を収集していた。屋敷の自室には大量の本と本棚が置かれ、生活スペースはほんの二畳程しか存在しなかった。さらに、自室だけではスペースが足りず、本専用の別荘を購入し、しまいには大統領専用地下シェルターに本を貯め始め、シェルターが主に戸嶋専用の図書館として使用される程であった。そこまで本を愛していた戸嶋は、自身も本を出版し、大きくヒットした。
本のジャンルは問わず、「恋愛」「コメディ」「ミステリー」など、様々な物を読んでいた戸嶋であったが、その中でも特に好きなのは日本の漫画やライトノベルであった。日本の漫画の深いストーリーにハマり、戸嶋は日本の漫画を即座に買い集めていった。
戸嶋が一番好きなジャンルは「デスゲーム物」であった。人間同士の心理的な戦い、ハラハラする展開など、多くの要素が詰め込まれていて、オリジナリティ溢れるデスゲーム作品を愛していた。
戸嶋はとあるデスゲーム作品を読んだときに、「このゲームを元にしてこの国の政策を進めれば犯罪率は格段に下がる...！」と力強く感じた。
その作品の内容は、『学生達がいくつかの武器を配られ、最後の一人になるまで殺し合いをする』というものだった。このゲームを実際に国内で行えば、殺人願望のある者の願いが叶い、殺人の数が減ると戸嶋は踏んだのだ。
そこで提案されたのがこの法律である。
実際に効果は大きく、犯罪率は大きく下がり、いつのまにか世界一の平和な国として名を馳せることになった。最初は国が開催していたデスゲームも、いくつかの企業が賞金付きで行い、デスゲームに参加する人口の増加に拍車をかけ、経済を大きく回していったのである。
『人の死が国を救う』
おかしな話ではあるが、それは紛れもない事実であった。最初は世間から大きな批判を受けていたこの法律だったが、犯罪率の低下が進むにつれ、そんな批判も無くなっていった。そんな背景から、デスゲームはこの国の文化として発展していった。
これから描かれるのは、そんな国のデスゲーム運営会社で働く男の物語である。