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第1章 安住の地を求めて

第35話 運命

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ゾンとルアがこの拠点に来てからもうすぐ1年が経とうかというころ。今日もテンとの狩りを終え拠点へともどって来ると、驚くべき光景があった。

「「うー! だー!」」

 なんとゾンとルアが手を握り合って、なんとか踏ん張りながら立っていたのだ!雪フクロウと羊もソワソワしながら見守り、やがて2人がバランスを崩して倒れるが急いでそれを受け止めにいく。

「「ホホー!」」

「メエ~!」

「よく頑張った!凄いぞ!」

「キュイ!」

 ☆

いつものルーティンと化した、手のひらに魔力を纏ってゾンとルアをマッサージしているとテンが自分もと強請ってきたのでテンにもやってやる。

「テンはどこらへんが凝っているのかなー?」

「「てんー」」

 !?

「キュイ!?」

 思わずテンをマッサージしている手を止めゾンとルアを見やる。今までも「えん」などおぼつかない感じで発音する事はあった。ただ今回は間違いなくはっきりとテンと発音していた。

 テンもゾンとルアの元へと駆け寄ってぺろぺろと舐めている。僕も名前を呼ばれたい。

「ゾン、ルア、僕の名前はウカノだよ。ウ•カ•ノ」

「「うーあー?」」

「う•か•の」

「「うあおー?」」

「かはまだ発音が難しかったか。」

 今までテンの名前を何度も口に出して呼びかけていたから覚えたのだろう。それに対して僕の名前を口に出すことなんて無かったからな。今後は意識して呼びかけよう。いつまでも僕の名前を覚えてくれないなんて悲しいからな。

 ☆

「ウカノ、これは薬草?」

「これは普通の草だね。ルアは薬草に興味があるのかい?」

「錬金術がしたいの。」

「そうかそうか。それじゃあ薬草を集めて後で錬金術で調合してみようか。」
 

「テンまてー!」

「キュイー!」

 ゾンとルアがこの拠点に来て3度目の春が来た。3歳にもなるとそれぞれの特徴がではじめてきた。

 ルアは大人しめな性格で錬金術や回復魔法といった、非攻撃的な魔法を好む。反対に、ゾンは活発で身体強化や火属性の魔法といった狩りに使えるような魔法を好む。流石にまだ狩りに同行させはしないが、テンと一緒に遊びで魔法を放っている。テンがいれば万が一にも対応できるからな。

 成長したのはゾンとルアだけではない。テンも3度の進化を経た。今は尻尾が5本にまで増え、体の半分までが白く染まった。既に体より尻尾の方がでかくなっている。可愛らしい見た目なのだがこの辺では敵なしなのだ。それでも強くなっても僕の前ではお腹を見せて撫でられるのを待ってる姿は変わらない可愛さだ。ゾンとルアもテンの尻尾のもふもふを良く堪能している。

 ☆

 そうして日々を過ごしている内にゾンとルアがウカノの元に来てから5度目の春を迎えた。忌み子として森に捨てられた双子。その寿命は3年~5年。そして周りを巻き込みながら破滅していく。そうされていたのにその運命が訪れる事は無かった。そんな運命など元から無かったのだろうか。それとも、その運命はどこかで変わったのだろうか。
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