杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん

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第2章 拠点開発

第61話 学ぶもの

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「クァクァクァ」

「はいはいお疲れ様。獲物を仕舞えばいいんだな。」

 狩りを終えたヨタドリの中で1番大きな個体が僕の前までやってきて、あの獲物をどうにかしろとばかりに嘴でつついてくる。さすがに獲物を狩る時のように嘴を氷で覆ってという訳ではないが、あの光景を見た後だとやめてほしいな。

 このままつつかれ続けてもかなわないので早速ヨタドリたちが狩った獲物に近づき収納する。

「「「クァァァ!?」」」

「ただ別の空間にしまっただけだよ。ほれ、こうしてまたすぐに出せるよ。」

「「「クァァァ!」」」

 獲物を異空間にしまうと驚いたのでまたその場に出してやると更に驚いてしまった。まあこればっかりは慣れてもらうしかない。

「さて、用事は済んだし拠点に戻ろうか。」

 転移で拠点へと帰るが、ヨタドリたちは2度目の転移にまだ慣れておらず周りをキョロキョロと見渡し困惑している。ただすぐに川の近くで群れている仲間を見つけ鳴き声を上げながらヨタヨタと駆け出していく。あの腹ばいの高速な移動方法は普段は使わないんだな。仲間たちも狩りから帰ってきた同胞を見つけ、ヒレのような腕をパタパタさせて喜びを分かち合っている。狩りというものが毎回成功するものではないと分かっているからこそ、仲間が生きて帰ってきた事をあそこまで喜んでいるんだろうな。いい関係性だな。

「「ウカノ、テンおかえり!」」

「シャ!」

「ただいまゾンとルア。それに大蜘蛛も。」

「キュイ!」

 いい仲間がいるのはヨタドリだけではなかったな。僕にも出迎えてくれる可愛い存在がいるんだ。こんな可愛い存在が待っているのにそこら辺で野垂れ死ぬ訳にはいかないよな。2人の頭を撫でながらそんな事をしみじみ思う。

 そうならないためにも今よりもっと強くならないとな。テンが強くなった今、狩りでの僕の役割は相手の分析をし弱点を探る事がメインとなっている。ただ今回のヨタドリの狩りを見て新しく僕の出来る事を見つけた。

 体が群れの中でも1回り小さいあの個体がやっていた、相手の注意を引く事に専念する。あの動きを僕が出来るのであればテンは相手へと攻撃に集中出来る。そしてあの動きは空間魔法を扱える僕なら不可能ではないはずだ。

 空間魔法は僕の使える魔法の中でも最も扱うのが難しく、使用する魔力量も桁違いに多い。現状、空間魔法は日常の生活でしか使わないから問題はないが、戦闘で使うとなると課題が多い。

 連発して扱おうにも現状クールダウンが10秒ほど必要だ。さすがに敵の前に10秒間無策に現れるというのは無謀だ。それに連発できても10回が限界だろうか。まだまだ効率を上げていき、使用する魔力量を減らす工夫をしないと厳しいな。今はまだ課題が山積みだが、まだまだ成長の余地があるというのはワクワクするな。

「クァクァクァ!」

「はいはい、今から解体するから待っててな。」

 また突かれたらたまらないのでヨタドリの急かす雰囲気を早めにいなす。解体したら早めのご飯といくか。

 ☆

 解体と肉を焼き終え、ヨタドリたち全員を含めた賑やかな食事といく。ヨタドリたちも勢い良く食べているのだが、その中でも狩りをしてきた6頭に優先的に食べさせている。あれも戦闘するモノを万全の体調にさせるための習性なのだろう。生き残る種族には必ずその理由がある。これがヨタドリたちなりの生存競争を勝ち抜くための習性なのだろう。

 そして今回の食事は狩ってきた馬型の魔物の肉だけではなく、魚も含まれている。どうやら拠点に残っていたヨタドリたちが川で獲ったようだ。この拠点付近の陸の生き物は魔物しかいないのだが、水中の生き物は魔物以外もいるようだ。それだけ陸に比べて天敵が少ないのだろう。

「おさかなおいしいー!」

「おにくと全然ちがう。」

 さすがに僕たちは水中の生き物を狩る術を持たないので、普段魚を食べる機会などない。そんな魚に2人とも夢中だ。

 ヨタドリたちの思わぬ恩恵を預かれたな。
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