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第3章 身代わり
第127話 この世界は美しい
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テンから受け取った魔力を異空間内に閉じ込め、更に空間を広げる。できるだけ大きく、目の前の奴を全て取り込めるほどに。
本来であればもっと時間をかけて、確実に成功するという確証を得たい。しかしもうそんな余裕もない。
テンの体力はすでに限界、僕ももう限界が近い。これが正真正銘最初で最後のチャンス。
覚悟を決め駆ける。狙うはテンが全てを尽くしてつけた傷跡。
奴との距離が近づく事で奴の大きさを改めて実感する。こんなに大きな化物を、奴からしたら虫ほどの大きさの僕たちが相手取っていたんだな。
奴の攻撃を躱しつつ、ようやく届いた。さあ、全てを吸い込め。これが僕とテンのありったけだ。
右の手のひらを奴へと伸ばし、呪いを吸い込む。
「grrrrrrrrrrrrrrrraaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
不快な奴の叫びが耳をつんざく。
奴が体にまといし呪いを、テンがつけた傷跡から吸い込む。でもこれじゃあ足りない。もっと、もっとだ。奴の全てを吸い込むんだ。
だから進む。吸い込んで出来たスペースから奴の体内へと。
不快感が全身を襲う。
前へ。
暗くて前が見えない。
それでも前へ。
右手の感覚が指先から消えていく。
それでも乗り越えて。
もう何も考えられない。
それでもこの呪いを乗り越え前へ。
もう…限界だ……
「――――――――――――、キュー!」
「…テンの声が………………っ!」
そうだ、僕一人で闘ってきたわけじゃない。
一人でなら無理でも…テンとなら限界を越えられる…!
呼吸を止める。
思考を止める。
もう感覚の無くなった右手にありったけの魔力を込める。
「――――――――――――――――――――――、アア。」
頭の血管が切れる音がする。
体の全身から魔力が、気力が、体力が無くなっていく。
自分の魔力が無いのなら大気の魔力を吸い込めば良い。
気力が無くても気合いで立ち続けろ。
体力は無くなったって良い。
全てをここに集約させる。
「これで、終わりだ。」
「――――――――――――――grrrrrrraaaaaaaa!」
瞬間、闇に覆われた世界から青へと変わる。
「――――――――キュ、キューーー!!!」
(ああ………………終わったのだな…………。)
化物は消えた。化物がいた場所には代わりに大きな蛇のようなモノがトグロを巻いて倒れている。
(君が…泣いていたんだね……良かった……君のような美しい命を持つモノを最期に見れて…………目的は果たせた……短い生だったが…後悔はないな……)
その蛇のようなモノは虹色に輝く魂を持ち合わせていた。
「キュ! キュキュ! キュイ!」
(……ああでも…………テンを一人残して去るのは心残りだなあ……)
「ごめんね…………テンを……一人にしてしまって…………」
「キュ…キューー!――――――――――――――――――――――――――――――――――」
この日、世界に知られる事なく英雄が生まれ、世界に知られる事なく英雄がこの世を去った。
本来であればもっと時間をかけて、確実に成功するという確証を得たい。しかしもうそんな余裕もない。
テンの体力はすでに限界、僕ももう限界が近い。これが正真正銘最初で最後のチャンス。
覚悟を決め駆ける。狙うはテンが全てを尽くしてつけた傷跡。
奴との距離が近づく事で奴の大きさを改めて実感する。こんなに大きな化物を、奴からしたら虫ほどの大きさの僕たちが相手取っていたんだな。
奴の攻撃を躱しつつ、ようやく届いた。さあ、全てを吸い込め。これが僕とテンのありったけだ。
右の手のひらを奴へと伸ばし、呪いを吸い込む。
「grrrrrrrrrrrrrrrraaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
不快な奴の叫びが耳をつんざく。
奴が体にまといし呪いを、テンがつけた傷跡から吸い込む。でもこれじゃあ足りない。もっと、もっとだ。奴の全てを吸い込むんだ。
だから進む。吸い込んで出来たスペースから奴の体内へと。
不快感が全身を襲う。
前へ。
暗くて前が見えない。
それでも前へ。
右手の感覚が指先から消えていく。
それでも乗り越えて。
もう何も考えられない。
それでもこの呪いを乗り越え前へ。
もう…限界だ……
「――――――――――――、キュー!」
「…テンの声が………………っ!」
そうだ、僕一人で闘ってきたわけじゃない。
一人でなら無理でも…テンとなら限界を越えられる…!
呼吸を止める。
思考を止める。
もう感覚の無くなった右手にありったけの魔力を込める。
「――――――――――――――――――――――、アア。」
頭の血管が切れる音がする。
体の全身から魔力が、気力が、体力が無くなっていく。
自分の魔力が無いのなら大気の魔力を吸い込めば良い。
気力が無くても気合いで立ち続けろ。
体力は無くなったって良い。
全てをここに集約させる。
「これで、終わりだ。」
「――――――――――――――grrrrrrraaaaaaaa!」
瞬間、闇に覆われた世界から青へと変わる。
「――――――――キュ、キューーー!!!」
(ああ………………終わったのだな…………。)
化物は消えた。化物がいた場所には代わりに大きな蛇のようなモノがトグロを巻いて倒れている。
(君が…泣いていたんだね……良かった……君のような美しい命を持つモノを最期に見れて…………目的は果たせた……短い生だったが…後悔はないな……)
その蛇のようなモノは虹色に輝く魂を持ち合わせていた。
「キュ! キュキュ! キュイ!」
(……ああでも…………テンを一人残して去るのは心残りだなあ……)
「ごめんね…………テンを……一人にしてしまって…………」
「キュ…キューー!――――――――――――――――――――――――――――――――――」
この日、世界に知られる事なく英雄が生まれ、世界に知られる事なく英雄がこの世を去った。
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ありがとうございます!修正いたしました。
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感想ありがとうございます!名前に関してはそれ用の話を入れる予定ですのでしばらくお待ちいただければと思います。
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