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10.彼女から見た世界ー前編
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国立士官訓練学校、第36期生。私の、2期上の先輩達のことです。彼らの世代は、所謂『黄金世代』と言われます。あらゆる出身、思想、宗教、理想、趣味、目的、野望…まるで世界の全てを詰め込んだかのような、とても濃い世代であったとか。
卒業後も、彼らはそれぞれの分野でその才能を発揮しています。ですが、それは全てが国の為とはいかないようで……。
私はこの旅で、彼らと出会えて良かったと思っています。興味深い貴重な体験ができました。
ーー
「さあ、お兄さん、もう素寒貧だよ。あとはその立派な馬くらいしかないね」
「……良いだろう。だが俺とこの愛馬の絆、そう容易く千切れると思うな……」
ギアさんは、意外と早く見付かりました。先輩曰く、彼は馬の他に、賭け事が好きなようです。賭場の入り口に彼の馬が寂しそうに佇んでいました。
「ローヴィを賭けの対象にするんじゃない」
「!」
半裸のギアさんが得意気に賭けようとした時、ぎりぎりで先輩が入り、なんとか、お世話になった彼の愛馬を賭けることを止めさせました。
「フロウか!助けてくれ!」
ギアさんはあっけらかんとしていました。私はあのエルシャさんが何故彼に惹かれたのか、未だに分かりません。
「おうお兄さん。……お兄さん?なんだいアンタ、『半生』かい。まあ良いさ。そこの大柄のお兄さんと知り合いなら助けてやったらどうだい。もう自分の身体と馬しか残っちゃい無い」
仕切り役の女性が先輩を誘います。私なら怒りそうな差別用語を気にもせず、先輩はやれやれと手を広げてギアさんの隣に座りました。
「賽子は駄目だ。やるなら札だ」
「おっ。自信ありかい?」
「頼むフロウ!俺の剣を取り返してくれ!」
「……剣を手放したのか、この馬鹿は」
先輩は呆れていました。私も呆れています。
「このお兄さんの敗けを取り返すなら、これくらい必要だね」
女性はギアさんの敗け分の金額を提示しました。私の一月のお給料くらいですね。近衛秘書時代の。
「やろう。この男の『馬以外』を全て賭ける」
ーー
「ちっ。やだやだ、景気悪いねえ最近は」
「ありがとうフロウ!」
先輩が勝つと、女性はあからさまに機嫌を悪くしました。ギアさんはいそいそと取り返した服を着ます。というか、先輩すごい。
「盗賊か?」
そこへ、先輩が自然に訊ねます。
「知ってるのかい。ここ2、3日前かね。森から出てきたろう。困ってるんだよ」
「賭場の元締めというイメージだったが」
「そんな訳無いだろう。マナーも守らない、敗けるといちゃもんを付ける。奴等は悪さ。賭場は神聖なんだ。……さあ、もうやらないなら帰っとくれ。他にもお客は居るんだ」
ーー
「さてギア」
「……はい」
市街から少し離れた小高い丘。冷静になったギアさんは、先輩の前で崖を背に正座をしています。
「今のところ、私は再会したお前に対し、印象は悪くなるばかりなのだが」
「はい」
「いいか?人には向き不向きがある。それを見極めなければならない。好きだからといって、得意になるとは限らない」
「はい」
「だから、お前の得意分野で私達に協力しろ」
「はい。……はい?」
「お前の戦闘力とローヴィは、越境に必要だ」
「……俺も外国へ?」
「そうだ。[阿僧祇の国]で頭を冷やせ。あそこは傭兵も雇っている国だ。この国とは同盟を結んでいるが、他の隣国とは未だに戦争している。お前の馬鹿が治ったら、ここへ帰ってきてエルシャと話せ。復縁しろ」
「……フロウ」
「元はと言えばお前が浮気をしたせいなのだろう?きちんと謝って……」
先輩の説教を聞きながら、ギアさんの眼が見開かれていきます。
「フロウ!後ろだ!」
ついに叫ぶギアさん。ただならぬ様子を感じ取り、私も振り向くと……。
ーー
咄嗟に私は、ギアさんに借りたままだった脇差を抜き、その剣の軌道を逸らそうとします。同時にギアさんが先輩の胸ぐらを掴み、自分の方へ引き寄せます。
「……!」
先輩は無事。それを確認してからすぐ、どっと冷たい汗が出るのを感じました。一瞬でも遅れていたらと思うと、とても怖く思います。
「これに反応するか、『翡翠の一族』」
「……!」
それでもまだ、私の心臓は鳴りぱなしです。冷や汗が止まりません。完全なる奇襲、不意打ち。見晴らしの良いこの丘で。剣筋から見ても、達人であることは疑いようのありません。そして……この人は軍服を着て、紋章を付けています。
「フロウ下がれ!」
ギアさんが先輩を背後に投げ、取り返した剣を抜いてその人に飛び掛かります。
しかしそれはいなされ、私の追撃を躱しつつ距離を取りました。
ーー
「失敗か。戦うしかないようだな」
その人の眼はとても鋭く、また先輩のようにとても冷静な雰囲気を持っていました。
彼の言葉に、先輩が頭を押さえながら立ち上がります。
「……レット。やはりお前が追っ手か」
レット。『王の剣』騎士団の副団長補佐にして、先輩の同期で首席卒業の……。
私は先輩を隠すようにギアさんの隣に位置取り、今一度剣を強く握り直します。
「レット!嘘だよな、お前今……本気でフロウを殺そうとしてたぞ!」
ギアさんが叫びます。
「……ああそうだな。生け捕りが好ましいのだった。やれやれ結果を逸ってしまったな」
「なんだと!」
「怒るなよギア・ウルフロード。どうせ貴様にはバレていた奇襲だ」
「……ふざけんなよ、レット!」
「悪いが貴様と低レベルな言い合いに付き合っている暇は無い。フロウと『翡翠』の身柄を引き渡せ。貴様らにくれてやれるせめてもの温情はそれだ。それ以外は少なからずどちらかが血を見る」
「やるわけねえだろ!」
憤怒のギアさんが再び攻撃の姿勢を見せます。しかしそれは、背後にいた先輩の言葉で止まります。
「レット、話し合いだ」
「余地は無い」
「取り合えず剣を収めてくれ」
「大人しく捕まるならな」
「……ここにはいつ着いた?」
「情報は与えない」
取り付く島がありません。彼は先輩の言葉を全て一言で切ります。
「私が捕まれば、この子は見逃してくれるか」
「そこまで貴様に価値は無い」
「……だろうな」
押し黙った先輩に、私は小声で問い掛けました。
「先輩、何故強行突破しないのです。相手はひとりです。ギアさんと私なら切り抜けられます」
「あのな、レットに見付かったんだ。司令塔である奴が、ひとりで丘へ登ると思うか?」
「……しかし」
「騎士団とは戦ってはいけない。ギアは奴に勝った事がない」
「!」
先輩の口から語られるその男は、とにかく強い『力』を感じます。彼の強さ、非情さを経験として知っているです。
先輩はまた、軍服の騎士へ語り掛けます。
「ラシャはどうした?」
「情報は与えない」
「まあ鍛えてやってくれ。奴はお前に多少憧れている」
「……知らん」
「エルシャには会ったか?綺麗になってたろう」
「……貴様」
騎士の眉間に皺が寄ります。
「それから、ゼニスに会うと良い。まだ元気だったぞ」
「!」
それを言い切る前に、一陣の風が吹きました。彼が剣を振るい踏み込み、ギアさんの手から剣を叩き落としたのだと気付いたのは、その音が鳴ってからでした。
「ぐあっ!」
ギアさんの顔が苦悶を訴えます。
「どいつもこいつも昔の話をしやがって。進歩の無い馬鹿どもめ」
「人は過去があるから未来へ進める。お前のそういう所も変わらないな」
「どけでかぶつ。貴様は死罪で構わんのだぞ」
先輩の言葉に耳を傾けず、ギアさんを蹴り飛ばします。
「うおっ!」
「ギアさんっ!」
助けに入ろうとした所で、いつの間にか私の首元に軍刀が突き付けられていました。動けません。
「貴様は重要人物だが、多少傷付けても治るのだろう?」
「……っ!」
鋭い眼光が私を貫きます。まるで剣を複数向けられている感覚を覚えます。
「……ふん」
「?」
彼は私をじっと見てから口を開きました。
「剣を捨てろ」
「……」
万事休す。私は剣を地面に置こうとしました。
「フロウ!」
「!」
しかし、その前にギアさんが叫びました。彼は鋭い軍靴で蹴られた脇腹の痛みに堪えながら、何故か笑っていました。
「……ローヴィを頼んだぜ。お前になら、任せられる」
「?」
そして、ギアさんは指笛を思いきり吹き鳴らしました。
「!」
彼らには強い信頼関係がある。ギアさんは中退したらしいのですが、それでも彼らは、良き仲間だったのだろうと私は思います。
その音を聞いて何かを悟った先輩は、私の方へ突進してきます。
「貴様、動くな!」
騎士の彼は切っ先を先輩へ向けますが、先輩はお構い無しに私に辿り着き、手を握りました。
「飛べ!掴まれ!」
「えっ!」
咄嗟に手を伸ばすと、そこには勢いよく走ってきたローヴィの姿がありました。私は彼女の鞍に飛び付きます。先輩もうまく掴めたようです。
「ぐっ!」
そして騎士は、世界最大の『黒馬』ローヴィの勢いに負け、退がるしかありませんでした。
ーー
「先輩っ!この先崖ですよ!?」
「仕方無い。道は騎士が塞いでいるだろう。道なき道を行くしか無い」
「道なき道……」
どうにか体勢を立て直し、ローヴィに跨がると、先輩は既に手綱を引いていました。
その腕からは、鮮血が見えました。
「先輩っ!怪我をっ!」
「レットはそういう奴だ。遠慮を知らないし容赦も無い。振り返るな、飛べローヴィ!」
ローヴィが力強く嘶き、崖から急降下していきました。
卒業後も、彼らはそれぞれの分野でその才能を発揮しています。ですが、それは全てが国の為とはいかないようで……。
私はこの旅で、彼らと出会えて良かったと思っています。興味深い貴重な体験ができました。
ーー
「さあ、お兄さん、もう素寒貧だよ。あとはその立派な馬くらいしかないね」
「……良いだろう。だが俺とこの愛馬の絆、そう容易く千切れると思うな……」
ギアさんは、意外と早く見付かりました。先輩曰く、彼は馬の他に、賭け事が好きなようです。賭場の入り口に彼の馬が寂しそうに佇んでいました。
「ローヴィを賭けの対象にするんじゃない」
「!」
半裸のギアさんが得意気に賭けようとした時、ぎりぎりで先輩が入り、なんとか、お世話になった彼の愛馬を賭けることを止めさせました。
「フロウか!助けてくれ!」
ギアさんはあっけらかんとしていました。私はあのエルシャさんが何故彼に惹かれたのか、未だに分かりません。
「おうお兄さん。……お兄さん?なんだいアンタ、『半生』かい。まあ良いさ。そこの大柄のお兄さんと知り合いなら助けてやったらどうだい。もう自分の身体と馬しか残っちゃい無い」
仕切り役の女性が先輩を誘います。私なら怒りそうな差別用語を気にもせず、先輩はやれやれと手を広げてギアさんの隣に座りました。
「賽子は駄目だ。やるなら札だ」
「おっ。自信ありかい?」
「頼むフロウ!俺の剣を取り返してくれ!」
「……剣を手放したのか、この馬鹿は」
先輩は呆れていました。私も呆れています。
「このお兄さんの敗けを取り返すなら、これくらい必要だね」
女性はギアさんの敗け分の金額を提示しました。私の一月のお給料くらいですね。近衛秘書時代の。
「やろう。この男の『馬以外』を全て賭ける」
ーー
「ちっ。やだやだ、景気悪いねえ最近は」
「ありがとうフロウ!」
先輩が勝つと、女性はあからさまに機嫌を悪くしました。ギアさんはいそいそと取り返した服を着ます。というか、先輩すごい。
「盗賊か?」
そこへ、先輩が自然に訊ねます。
「知ってるのかい。ここ2、3日前かね。森から出てきたろう。困ってるんだよ」
「賭場の元締めというイメージだったが」
「そんな訳無いだろう。マナーも守らない、敗けるといちゃもんを付ける。奴等は悪さ。賭場は神聖なんだ。……さあ、もうやらないなら帰っとくれ。他にもお客は居るんだ」
ーー
「さてギア」
「……はい」
市街から少し離れた小高い丘。冷静になったギアさんは、先輩の前で崖を背に正座をしています。
「今のところ、私は再会したお前に対し、印象は悪くなるばかりなのだが」
「はい」
「いいか?人には向き不向きがある。それを見極めなければならない。好きだからといって、得意になるとは限らない」
「はい」
「だから、お前の得意分野で私達に協力しろ」
「はい。……はい?」
「お前の戦闘力とローヴィは、越境に必要だ」
「……俺も外国へ?」
「そうだ。[阿僧祇の国]で頭を冷やせ。あそこは傭兵も雇っている国だ。この国とは同盟を結んでいるが、他の隣国とは未だに戦争している。お前の馬鹿が治ったら、ここへ帰ってきてエルシャと話せ。復縁しろ」
「……フロウ」
「元はと言えばお前が浮気をしたせいなのだろう?きちんと謝って……」
先輩の説教を聞きながら、ギアさんの眼が見開かれていきます。
「フロウ!後ろだ!」
ついに叫ぶギアさん。ただならぬ様子を感じ取り、私も振り向くと……。
ーー
咄嗟に私は、ギアさんに借りたままだった脇差を抜き、その剣の軌道を逸らそうとします。同時にギアさんが先輩の胸ぐらを掴み、自分の方へ引き寄せます。
「……!」
先輩は無事。それを確認してからすぐ、どっと冷たい汗が出るのを感じました。一瞬でも遅れていたらと思うと、とても怖く思います。
「これに反応するか、『翡翠の一族』」
「……!」
それでもまだ、私の心臓は鳴りぱなしです。冷や汗が止まりません。完全なる奇襲、不意打ち。見晴らしの良いこの丘で。剣筋から見ても、達人であることは疑いようのありません。そして……この人は軍服を着て、紋章を付けています。
「フロウ下がれ!」
ギアさんが先輩を背後に投げ、取り返した剣を抜いてその人に飛び掛かります。
しかしそれはいなされ、私の追撃を躱しつつ距離を取りました。
ーー
「失敗か。戦うしかないようだな」
その人の眼はとても鋭く、また先輩のようにとても冷静な雰囲気を持っていました。
彼の言葉に、先輩が頭を押さえながら立ち上がります。
「……レット。やはりお前が追っ手か」
レット。『王の剣』騎士団の副団長補佐にして、先輩の同期で首席卒業の……。
私は先輩を隠すようにギアさんの隣に位置取り、今一度剣を強く握り直します。
「レット!嘘だよな、お前今……本気でフロウを殺そうとしてたぞ!」
ギアさんが叫びます。
「……ああそうだな。生け捕りが好ましいのだった。やれやれ結果を逸ってしまったな」
「なんだと!」
「怒るなよギア・ウルフロード。どうせ貴様にはバレていた奇襲だ」
「……ふざけんなよ、レット!」
「悪いが貴様と低レベルな言い合いに付き合っている暇は無い。フロウと『翡翠』の身柄を引き渡せ。貴様らにくれてやれるせめてもの温情はそれだ。それ以外は少なからずどちらかが血を見る」
「やるわけねえだろ!」
憤怒のギアさんが再び攻撃の姿勢を見せます。しかしそれは、背後にいた先輩の言葉で止まります。
「レット、話し合いだ」
「余地は無い」
「取り合えず剣を収めてくれ」
「大人しく捕まるならな」
「……ここにはいつ着いた?」
「情報は与えない」
取り付く島がありません。彼は先輩の言葉を全て一言で切ります。
「私が捕まれば、この子は見逃してくれるか」
「そこまで貴様に価値は無い」
「……だろうな」
押し黙った先輩に、私は小声で問い掛けました。
「先輩、何故強行突破しないのです。相手はひとりです。ギアさんと私なら切り抜けられます」
「あのな、レットに見付かったんだ。司令塔である奴が、ひとりで丘へ登ると思うか?」
「……しかし」
「騎士団とは戦ってはいけない。ギアは奴に勝った事がない」
「!」
先輩の口から語られるその男は、とにかく強い『力』を感じます。彼の強さ、非情さを経験として知っているです。
先輩はまた、軍服の騎士へ語り掛けます。
「ラシャはどうした?」
「情報は与えない」
「まあ鍛えてやってくれ。奴はお前に多少憧れている」
「……知らん」
「エルシャには会ったか?綺麗になってたろう」
「……貴様」
騎士の眉間に皺が寄ります。
「それから、ゼニスに会うと良い。まだ元気だったぞ」
「!」
それを言い切る前に、一陣の風が吹きました。彼が剣を振るい踏み込み、ギアさんの手から剣を叩き落としたのだと気付いたのは、その音が鳴ってからでした。
「ぐあっ!」
ギアさんの顔が苦悶を訴えます。
「どいつもこいつも昔の話をしやがって。進歩の無い馬鹿どもめ」
「人は過去があるから未来へ進める。お前のそういう所も変わらないな」
「どけでかぶつ。貴様は死罪で構わんのだぞ」
先輩の言葉に耳を傾けず、ギアさんを蹴り飛ばします。
「うおっ!」
「ギアさんっ!」
助けに入ろうとした所で、いつの間にか私の首元に軍刀が突き付けられていました。動けません。
「貴様は重要人物だが、多少傷付けても治るのだろう?」
「……っ!」
鋭い眼光が私を貫きます。まるで剣を複数向けられている感覚を覚えます。
「……ふん」
「?」
彼は私をじっと見てから口を開きました。
「剣を捨てろ」
「……」
万事休す。私は剣を地面に置こうとしました。
「フロウ!」
「!」
しかし、その前にギアさんが叫びました。彼は鋭い軍靴で蹴られた脇腹の痛みに堪えながら、何故か笑っていました。
「……ローヴィを頼んだぜ。お前になら、任せられる」
「?」
そして、ギアさんは指笛を思いきり吹き鳴らしました。
「!」
彼らには強い信頼関係がある。ギアさんは中退したらしいのですが、それでも彼らは、良き仲間だったのだろうと私は思います。
その音を聞いて何かを悟った先輩は、私の方へ突進してきます。
「貴様、動くな!」
騎士の彼は切っ先を先輩へ向けますが、先輩はお構い無しに私に辿り着き、手を握りました。
「飛べ!掴まれ!」
「えっ!」
咄嗟に手を伸ばすと、そこには勢いよく走ってきたローヴィの姿がありました。私は彼女の鞍に飛び付きます。先輩もうまく掴めたようです。
「ぐっ!」
そして騎士は、世界最大の『黒馬』ローヴィの勢いに負け、退がるしかありませんでした。
ーー
「先輩っ!この先崖ですよ!?」
「仕方無い。道は騎士が塞いでいるだろう。道なき道を行くしか無い」
「道なき道……」
どうにか体勢を立て直し、ローヴィに跨がると、先輩は既に手綱を引いていました。
その腕からは、鮮血が見えました。
「先輩っ!怪我をっ!」
「レットはそういう奴だ。遠慮を知らないし容赦も無い。振り返るな、飛べローヴィ!」
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