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第37話 リディの決意
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「リディ……?」
「『旦那様』。今までありがとう。貧民街から拾って貰ったことは感謝しているわ。だけど、あたしの人生はあたしで決める。あなたから受けた『恩』は返すから、あたしを止めないで」
食事中だが。リディか切り出した。オルヴァリオと話して決意が固まったのだ。
「何を言っているんだ。お前はコースターの人間だぞ。それに、あの大量のコレクションはどうする」
「要らないわ」
「は!?」
ハクラーは驚きの声を上げた。あれがあるから、リディを屋敷に繋ぎ止めていると思っていたからだ。だから、自由を許していた。結婚までの、あと2年間を。
「——全て、献上します。ハクラー子爵。それで『清算』します。この10年間を。約10億を。……あたしのコレクション全て売ればお釣りが来るわ」
「なっ! 許さんぞそんなこと! 私が今まで、どれだけお前に費やしてきたと」
「だからそれを、清算するのよ! 変態オヤジ!」
「!!」
もう、彼女は決意していた。もう遅い。
年頃の女性が、中年男性の思い通りになる筈が無い。例えいくら手塩を掛けていたとしても。いくら——貢いでいたとしても。
「本当に感謝しているわ。あなたが居なければあたしはどっかで野垂れ死んでた。だけど。それとこれは別。命を救われたからと言って、その相手と結婚なんて。しかも親子の歳の差よ? いくらあたしが『誰か』に似てるとしても。あたしはその『誰か』じゃない!」
「!」
ハクラーは。開いた口が塞がらない。反論すらできない。あまりの衝撃に。まさかリディが、反抗するなど、と。
「『あたし』を愛するならまだ分かるけどね。あなた、『死んだ妻』しか見てないのよ。あたしは誰かの代わりじゃない。あたしは『あたし』なの!」
リディは、義理堅い女だ。そして恩を忘れない。仇では返さない。例え下衆が相手でも。ただ黙って逃げ出せば良いのに。
コレクターである彼女が、その人生を懸けて集めた『宝』を手切れ金にすると言うのだ。
「武器だけじゃないわ。お酒も。書物も。あたしがこの10年でコレクトした全てよ。それであなたの心は満たされないかもしれないけど。あたしの、あなたへできる最大の『恩返し』がそれだから」
「…………リ、ディ」
「ご馳走さまでした。さようなら、お兄様。さようなら……『お父様』」
言い放ち。
リディは席を立った。ハクラーは声を掛けられない。ショックで固まってしまっている。
「…………リディ」
ハッシュもだ。その顔から余裕は消え去っていた。
「ご馳走さまでした。大変美味でした。子爵」
「ご馳走さまでした。じゃ俺達もこれで。急いで今日の宿、探さなきゃな」
『ご馳走さまでした。良いお水でした』
こんなひと幕を見て。もうこの屋敷には居られない。クリューとオルヴァリオ、サスリカも続いて部屋を出る。止める者は居なかった。
「おいリディ。待てって」
「……あー。すっきりした。ありがとねオルヴァリオ。お陰で何の気兼ねもなくこの屋敷を去れるわ」
先へ行くリディに追い付く。彼女は来る時には無かった、大きな革の鞄を背負っていた。
「それは?」
「あたしの私物。あとどうしてもあげられないお気に入りのコレクション。残ったものでも充分お釣りが来るわよ。大丈夫」
「なるほど。しかし、エフィリスの約束はどうする」
「さっきもう伝書バト飛ばしたわ。拠点を変えるって」
「どこにするんだ?」
「乗り気はしないけど。明日、取り敢えずハンターズギルドへ行きましょう。あんた達も一応登録しときましょっか?」
「ふむ。ハンターズギルド?」
「……やっぱ知らないのね」
「クリューと一緒にするな。俺は知ってる」
「はいはい。説明しなきゃいけないことには変わりないわ」
屋敷を出たリディの表情は晴れ晴れとしていた。オルヴァリオは、それで満足した。
「『旦那様』。今までありがとう。貧民街から拾って貰ったことは感謝しているわ。だけど、あたしの人生はあたしで決める。あなたから受けた『恩』は返すから、あたしを止めないで」
食事中だが。リディか切り出した。オルヴァリオと話して決意が固まったのだ。
「何を言っているんだ。お前はコースターの人間だぞ。それに、あの大量のコレクションはどうする」
「要らないわ」
「は!?」
ハクラーは驚きの声を上げた。あれがあるから、リディを屋敷に繋ぎ止めていると思っていたからだ。だから、自由を許していた。結婚までの、あと2年間を。
「——全て、献上します。ハクラー子爵。それで『清算』します。この10年間を。約10億を。……あたしのコレクション全て売ればお釣りが来るわ」
「なっ! 許さんぞそんなこと! 私が今まで、どれだけお前に費やしてきたと」
「だからそれを、清算するのよ! 変態オヤジ!」
「!!」
もう、彼女は決意していた。もう遅い。
年頃の女性が、中年男性の思い通りになる筈が無い。例えいくら手塩を掛けていたとしても。いくら——貢いでいたとしても。
「本当に感謝しているわ。あなたが居なければあたしはどっかで野垂れ死んでた。だけど。それとこれは別。命を救われたからと言って、その相手と結婚なんて。しかも親子の歳の差よ? いくらあたしが『誰か』に似てるとしても。あたしはその『誰か』じゃない!」
「!」
ハクラーは。開いた口が塞がらない。反論すらできない。あまりの衝撃に。まさかリディが、反抗するなど、と。
「『あたし』を愛するならまだ分かるけどね。あなた、『死んだ妻』しか見てないのよ。あたしは誰かの代わりじゃない。あたしは『あたし』なの!」
リディは、義理堅い女だ。そして恩を忘れない。仇では返さない。例え下衆が相手でも。ただ黙って逃げ出せば良いのに。
コレクターである彼女が、その人生を懸けて集めた『宝』を手切れ金にすると言うのだ。
「武器だけじゃないわ。お酒も。書物も。あたしがこの10年でコレクトした全てよ。それであなたの心は満たされないかもしれないけど。あたしの、あなたへできる最大の『恩返し』がそれだから」
「…………リ、ディ」
「ご馳走さまでした。さようなら、お兄様。さようなら……『お父様』」
言い放ち。
リディは席を立った。ハクラーは声を掛けられない。ショックで固まってしまっている。
「…………リディ」
ハッシュもだ。その顔から余裕は消え去っていた。
「ご馳走さまでした。大変美味でした。子爵」
「ご馳走さまでした。じゃ俺達もこれで。急いで今日の宿、探さなきゃな」
『ご馳走さまでした。良いお水でした』
こんなひと幕を見て。もうこの屋敷には居られない。クリューとオルヴァリオ、サスリカも続いて部屋を出る。止める者は居なかった。
「おいリディ。待てって」
「……あー。すっきりした。ありがとねオルヴァリオ。お陰で何の気兼ねもなくこの屋敷を去れるわ」
先へ行くリディに追い付く。彼女は来る時には無かった、大きな革の鞄を背負っていた。
「それは?」
「あたしの私物。あとどうしてもあげられないお気に入りのコレクション。残ったものでも充分お釣りが来るわよ。大丈夫」
「なるほど。しかし、エフィリスの約束はどうする」
「さっきもう伝書バト飛ばしたわ。拠点を変えるって」
「どこにするんだ?」
「乗り気はしないけど。明日、取り敢えずハンターズギルドへ行きましょう。あんた達も一応登録しときましょっか?」
「ふむ。ハンターズギルド?」
「……やっぱ知らないのね」
「クリューと一緒にするな。俺は知ってる」
「はいはい。説明しなきゃいけないことには変わりないわ」
屋敷を出たリディの表情は晴れ晴れとしていた。オルヴァリオは、それで満足した。
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