GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第39話 合流

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「俺の方はまだ時間が掛かる。今のところ手掛かりはねえ」

 エフィリスは朝食を頼んでから、そう語った。皆に注目されている以上、直接的な単語は使えない。だがクリュー達にはそれで伝わる。

「で、拠点変更だって? どうしたよ」
「ちょっとね。家と縁を切ったの。でも大丈夫。後腐れなく切ってきたから、迷惑は掛けないわ」
「……まあ、知らねえけどよ。じゃあ今後の連絡はどうすんだ」
「そう言えばクリュー、何か伝手がありげだったけど」
「ああ」

 ネヴァン商会を追う。盗まれた『氷漬けの美女』——『グレイシア』を取り戻すためだ。だが、国や警察が長年追っていて尻尾も掴めない謎の犯罪組織。
 クリューは皆の視線を集めてから頷いた。

「俺の実家は商人だ。もしかしたら何か情報があるかもしれない。そんな犯罪組織、聞く限り商人にとって一番の天敵だろう」
「!」
「ほう。なるほどな。なんて会社だ?」
「スタルース商会」
「ラビアの商人か。分かった。可能性がある所ならどこでも行くべきだ」

 クリューの父は大商人だ。それは商品や金銭だけでなく、情報網も広く持つことを意味する。まずそこへ向かうことは、悪い選択肢ではないだろう。

「で、すまねえが俺はこれから猛獣退治に行かねえとならねえ」
「えっ?」

 食べ終わったエフィリスが、依頼書をテーブルに置いた。リディがそれを取って確認する。『上級』ハンター以上の制限がある危険な依頼だった。

「ギルドやってるとな。俺にも立場がある。俺はルクシルアの英雄だからな。これを蹴ると死人が出る。自由な筈のトレジャーハンターが縛られてるって滑稽な話だが」
「……『デッドリィドラゴン』」
「なんだそれは?」

 リディは記載されていた、討伐対象の猛獣の名を呟いた。まさか『これ』を依頼されるとは、といった表情で。
 分かりやすい危険な名前に、クリューが食い付いた。

「『デッドリィドラゴン』。まず、『ドラゴン』の時点で猛獣の頂点に君臨するほど危険なんだけど……。その中でも『相対すれば死に至る』とされる猛獣が『デッドリィ』クラス。要するにまあ、最強の生物ね。猛獣じゃなくて、怪獣ってやつ」
「ドラゴン! 良いなあ。トレジャーハンターのロマンだ」

 リディの説明に、オルヴァリオは興奮していた。反対にクリューは冷静に、その危険度を想像する。

「……そんなものを、狩るのか」
「ははっ。茶飯事だよ。俺は『グレイシア』を発見したから『特級』に上がったんじゃねえ。年間狩猟猛獣の11%以上が『怪獣』だから『特級』なんだ」
「!」

 エフィリスはリディから依頼書を取り、席を立った。

「ルクシルア西方の国境付近、ガルバ荒野だ。俺の庭さ。興味あるなら行くか?」
「……!」
「お前らギルドに登録してねえんだろ? 俺もお前らの実力を知りてえし。1週間ほどだ」
「……だが『氷漬けの美女』は」
「『解凍』はその人形しかできねえんだろ? 破壊される恐れもねえ。どうせ俺は、知り合いに調べて貰ってる最中だ」
「…………」

 特級ハンターからの、冒険の誘い。こんなことは通常ありえない。英雄エフィリスの冒険に付いてこれる者など居ないからだ。

「……どうする」

 クリューは考えた。彼としては一刻も早く『氷漬けの美女』を追いたい。だが現状、情報が無いのも事実だ。ラビアに帰って父親に聞いても、何も出てこない可能性もある。それに、父親に啖呵を切って出てきた手前、すぐに帰るということはできない。
 お互いの実力を知る。それは確かに大事かもしれない。エフィリスはクリュー達のことを、買い被っている可能性がある。それに、今後トレジャーハンターを続けるならばここで『英雄』と冒険することは良い経験になる。

「……正直、俺は行きてえ」
「オルヴァ」
「あたしも賛成。『怪獣』の素材は高く売れるから資金になるし、情報収集にも役立つと思うわ」

 オルヴァリオとリディが頷いた。

「サスリカは?」
『ワタシはますたーの仰る通りに』
「ふむ。では行くか。俺も『英雄』を見てみたい」
「決まりだな」

 エフィリスはにやりと笑った。
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