GLACIER(グレイシア)

弓チョコ

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第44話 古代文明

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「ふぅ。まあ、こんなもんだな。よくやったマル」
「……えへへ。……うん」

 いつの間にか、エフィリスが崖を登り切っていた。マルが嬉しそうに頭を撫でられている。
 そこへ、クリュー達と、サスリカの手助けで登ってきたオルヴァリオも合流する。

「よぉ。お疲れさん。怪獣つってもやりゃあ簡単だったろ?」

 ドラゴンと正面からやり合ったエフィリスは、なんと無傷だった。

「……あたし達要らなかったじゃない」
「ははっ。最初はそんなもんだ。良い経験になったろ?」

 白い歯を見せて笑うエフィリスと逆に、リディは肩を落としていた。恐らく彼女にはプライドがあったのだろう。トップ層には届かずとも、一定の成果は上げられると。
 だが結果的に、クリューやオルヴァリオと同じく『役に立たなかった』。彼女は目に見えて落胆していた。

「よし。狩りは終わりだ。今日は焼肉して、明日帰ろう。回収はギルド職員がやる。……つってもお前らはメンバーじゃねえから報酬も何も無いがな」
「付いてきただけで何もしていない。元より報酬なんて要らないさ。良い勉強をさせてもらった。……肉を、食うのか?」

 誘き寄せて罠に嵌め、狙撃して狩る。言葉にすればそれだけだが、これは完全に『特級』の仕事だった。ドラゴンに殺されずに誘導できる戦闘力と、暴れるドラゴンの眼球を精確に狙撃する技術。少なくともそのふたつが無ければ達成できない依頼だった。クリューのチームでは全く不可能だ。

「ああ。俺達の特権だ。仕留めた『特級』怪獣の美食。世界で最初に味わえるんだぜ。サーガ、焼肉の準備だ」
「既に下に」
「流石。仕事が早い。じゃ降りるぞ」

 崖の崩れた所を避けつつ、全員で降りる。間近で見るドラゴンはやはり巨大で、死んでなおプレッシャーを放っている。クリューは生唾を飲み込んだ。

「ギルドの依頼だと獲物はギルドに所有権あるんじゃないの?」

 リディが、質問した。エフィリスは笑って答える。

「こんな大量の肉、半分も食えねえよ。どうせ殆ど腐るんだ。ギルドにやるのは鱗とか角とかその辺」
「……そっか。まあそうね。勿体無いけど」
『…………』

 この時代。
 サスリカは。『あれ』が無いのかと。思った。バルセスで目覚めてからここまで、なるべく『口出し』はしないようにしていた。まずは、この時代のことを学ぼうと。この時代を知ろうと。
 そして。

『……「保存方法」は無いのですか?』
「!」

 遂に訊いた。

「あん? まあ干し肉にする手もあるが不味いし……全部は処理する前にいくつか腐るぜ。『ドラゴンの解体』ってな、完全にできる奴は居ねえし」
『ただの「大きな爬虫類」とするなら、できない理由は「人手」でしょうか』
「お? ……まあ、そうだな。そもそもドラゴンなんざほいほい討伐されねえんだよ。今回は『俺が』特級だったからだ」

 その会話の途中で。サスリカはサーガを引き留めた。討伐の報告をしようと街へ向かう所だったのだ。

『紙とペンはありますか?』
「? ……ありますが」
『ではこれと、人手を集めてきてくださいませんか』
「??」

 サスリカが紙に書いたのは、工具と材料のリストだった。

「なんだこれは……?」
『近くに湖と、川もありますから。「冷蔵」しましょう。人間は生きていますから、食糧は出来るだけ保存しましょう』
「……!?」

 サスリカが今、マスターの許可無く勝手に行っていることは。マスターの許可が不要な行動である。彼女はそれに該当する行動がプログラムされていた。
 つまり、『生命維持が必要』な事柄に対しての提言。加えて、街が破壊され、仕事と食糧を同時に失った人間が多数居るという状況を鑑みて。

『エフィリス様。鱗を剥がして解体をしなければ』
「おん? お、おう……。そうだが、この巨大だぞ。血抜きも無理だ」
『——では、ますたーとオルヴァリオ様もナイフを手に。ワタシの指示通りにお願いいたします』

 『古代文明』が、1万年の時を経て目覚めたのだ。
 『こんなもの』ではない。こんな、原始的なものでは。
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