57 / 99
第57話 昔話
しおりを挟む
『シロナ様は、お姫様。カナタ様は王子様。おふたりは同盟国同士で幼馴染みでした』
その後。
古代文明の謎の技術を全く甘く見ていないネヴァンは、現時点で非協力的なサスリカを自由にはしない。彼女はあらゆる拘束具を付けられ、どこか地下の牢獄に収容される。
鉄格子を挟んで、オルヴァリオが立つ。聞きに来たのだ。
1万年前の話を。
『恐らく、カナタ様はシロナ様を妃に迎えたかったのだと思います。その頃はまだ世界は滅亡しておらず、ワタシも造られていませんが』
「それは、叶わなかったのか」
『ハイ。戦争が起きました。その戦争を終結させる為に、シロナ様は敵国の王子と結ばれたようです。ワタシの記録では』
「……ふむ。まあ仕方無い話だな」
『ワタシは、カナタ様ご本人とはお会いしたことはありません。ワタシが造られた時には既に、シロナ様はレオン様と結ばれ、そして共に亡くなっておりました』
「……レオンてのが、その敵国の王子か」
『ハイ。おふたりは愛し合っていたと、共通のご友人様であるアニマ様からお聞きしました。ですからワタシの知るカナタ様は、「ご立派な宇宙飛行士」でしかありませんでした』
「……宇宙、飛行士?」
『宇宙を飛ぶ船の操縦士です。今よりもっと、文明は進んでいたのです』
「なる、ほど」
カタカタ、キューンと音が鳴る。サスリカの身体に宿る、古い記録を呼び起こしているのだ。
『世界が崩壊しても人類が長らえるように、大勢を乗せて別の惑星へ移住する計画がありました。「Project:ALPHA」と言います。それに貢献した偉大な飛行士のひとりとして、名を残したのがカナタ・ギドーです』
「……凄いな。古代人は」
『その古代人の血を、我が物にしようとしているのが、ネヴァン商会なのでしょう』
解かすつもりなのだ。あれをトレジャーだと思うのなら破壊行為はできない筈。ネヴァンもクリューと同じく、『氷漬けの美女』をひとりの女性として見ている。
『恐らくあてがわれるのは、オルヴァリオ様』
「…………!」
カナタ・ギドーの生まれ変わりを自称している者の、子孫。それだけで、察することができる。カナタの宿願を果たす。文明の復興は、表向きの目的でしかないのだろう。
「おいおい、クリューに殺されるぞ」
『ハイ。ワタシも認めません。何よりあの「グレイシア」は、シロナ様ではありませんから』
「? そうなのか?」
『あれはクローンです。滅亡後に。シロナ様達の死亡後に、アニマ様が自律AIのレイシーを使って計画したものです。ワタシの記憶は途中で途絶えていますので、まさか完成されているとは思いませんでしたが』
「……?? すまん分からん単語が」
『つまり、古代文明では人間の複製ができたのです。あれは複製された人間。シロナ様の容姿を持っていますが、別人です。滅亡する世界を嘆き、未来へ遺伝子を残そうとしたアニマ様の命と涙の雫』
「…………ふむ」
人間の複製。遺伝子。オルヴァリオからすればちんぷんかんぷんだった。
「それで、実際解かせるのか?」
『ハイ。あれは実は氷ではなく、機械です。常に冷気を放つ透明な機械と、それを維持する装置があります。装置を触り、解除する命令を出せばますたーの目的は果たされる筈です』
「なるほど。じゃあクリューが来る前に俺達がそれをやる訳にはいかないな」
『ハイ』
「…………」
オルヴァリオは、サスリカと話していて少し気まずくなった。
「怒っているか」
『ハイ』
「!」
サスリカは無表情で即答した。オルヴァリオは動揺してしまった。
『貴方様はますたーのご友人様ですが、ますたーの意向と違う行動をしています。ワタシに感情があるならば、貴方様を快く思わないでしょう』
「…………だよな」
自分が何をしているか。オルヴァリオは自分で理解している。サスリカに背を向けて、その場を去った。
その後。
古代文明の謎の技術を全く甘く見ていないネヴァンは、現時点で非協力的なサスリカを自由にはしない。彼女はあらゆる拘束具を付けられ、どこか地下の牢獄に収容される。
鉄格子を挟んで、オルヴァリオが立つ。聞きに来たのだ。
1万年前の話を。
『恐らく、カナタ様はシロナ様を妃に迎えたかったのだと思います。その頃はまだ世界は滅亡しておらず、ワタシも造られていませんが』
「それは、叶わなかったのか」
『ハイ。戦争が起きました。その戦争を終結させる為に、シロナ様は敵国の王子と結ばれたようです。ワタシの記録では』
「……ふむ。まあ仕方無い話だな」
『ワタシは、カナタ様ご本人とはお会いしたことはありません。ワタシが造られた時には既に、シロナ様はレオン様と結ばれ、そして共に亡くなっておりました』
「……レオンてのが、その敵国の王子か」
『ハイ。おふたりは愛し合っていたと、共通のご友人様であるアニマ様からお聞きしました。ですからワタシの知るカナタ様は、「ご立派な宇宙飛行士」でしかありませんでした』
「……宇宙、飛行士?」
『宇宙を飛ぶ船の操縦士です。今よりもっと、文明は進んでいたのです』
「なる、ほど」
カタカタ、キューンと音が鳴る。サスリカの身体に宿る、古い記録を呼び起こしているのだ。
『世界が崩壊しても人類が長らえるように、大勢を乗せて別の惑星へ移住する計画がありました。「Project:ALPHA」と言います。それに貢献した偉大な飛行士のひとりとして、名を残したのがカナタ・ギドーです』
「……凄いな。古代人は」
『その古代人の血を、我が物にしようとしているのが、ネヴァン商会なのでしょう』
解かすつもりなのだ。あれをトレジャーだと思うのなら破壊行為はできない筈。ネヴァンもクリューと同じく、『氷漬けの美女』をひとりの女性として見ている。
『恐らくあてがわれるのは、オルヴァリオ様』
「…………!」
カナタ・ギドーの生まれ変わりを自称している者の、子孫。それだけで、察することができる。カナタの宿願を果たす。文明の復興は、表向きの目的でしかないのだろう。
「おいおい、クリューに殺されるぞ」
『ハイ。ワタシも認めません。何よりあの「グレイシア」は、シロナ様ではありませんから』
「? そうなのか?」
『あれはクローンです。滅亡後に。シロナ様達の死亡後に、アニマ様が自律AIのレイシーを使って計画したものです。ワタシの記憶は途中で途絶えていますので、まさか完成されているとは思いませんでしたが』
「……?? すまん分からん単語が」
『つまり、古代文明では人間の複製ができたのです。あれは複製された人間。シロナ様の容姿を持っていますが、別人です。滅亡する世界を嘆き、未来へ遺伝子を残そうとしたアニマ様の命と涙の雫』
「…………ふむ」
人間の複製。遺伝子。オルヴァリオからすればちんぷんかんぷんだった。
「それで、実際解かせるのか?」
『ハイ。あれは実は氷ではなく、機械です。常に冷気を放つ透明な機械と、それを維持する装置があります。装置を触り、解除する命令を出せばますたーの目的は果たされる筈です』
「なるほど。じゃあクリューが来る前に俺達がそれをやる訳にはいかないな」
『ハイ』
「…………」
オルヴァリオは、サスリカと話していて少し気まずくなった。
「怒っているか」
『ハイ』
「!」
サスリカは無表情で即答した。オルヴァリオは動揺してしまった。
『貴方様はますたーのご友人様ですが、ますたーの意向と違う行動をしています。ワタシに感情があるならば、貴方様を快く思わないでしょう』
「…………だよな」
自分が何をしているか。オルヴァリオは自分で理解している。サスリカに背を向けて、その場を去った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
氷結の夜明けの果て (R16)
ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン)
よくある異世界転生?
使い古されたテンプレート?
――そうかもしれない。
だが、これはダークファンタジーだ。
恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも――
まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。
穏やかな始まり。ほのかな優しさ。
だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。
その時が来れば、闇は牙を剥く。
あらすじ
失われた魂――影に見つめられながら。
だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか?
異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。
生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。
――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。
冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、
彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。
だが、栄光へと近づく一歩ごとに、
痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。
光の道を歩んでいるかのように見えて――
その背後で、影は静かに育ち続けていた。
――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。
🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。
🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。
🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。
ヴェイルは進む。
その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。
それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる